特集 ベンチャー企業の実際
<機械系ベンチャー企業の紹介>マイクロマシン/MEMS 加工・試作・製造サービス
概要と特徴
メムス・コアは、東北大学の近郊、宮城県仙台市の北部の泉インダストリアルパーク内に位置している。MEMS開発のため、中古で購入した4インチ対応の製造装置、ケミトロニクスグループおよび協業装置メーカーが開発した製造装置、さらに、メムス・コアが新規に導入した製造装置を集約し、試作・製造ラインを整備している。
この試作・製造ラインの概要は、製造の装置一式、Si酸化・拡散装置、フォトリソグラフイ関連装置、各種薄膜の成膜装置、ウェットやドライエッチング装置、接合、ダイシング、ボンデイングなどの装置の他、MEMS特有の犠牲層エッチャや援水性コーティング装置、真空で一貫処理できる陽極接合装置、デバイス評価のための顕微鏡やSEMなどの評価装置などである。
これらの装置は、それぞれ単純なプロセスから特殊なプロセスまで対応し、現在、これらを駆使した柔軟な試作・開発を行っている。原理試作や開発レベルでの試作品を効率良く短期問に製作し、迅速に評価できることが特徴のひとつである。試作するデバイスにもよるが、マスク製作から数週間~2カ月程度で試作を終えることが可能である。当社のサービスを図1に示す。
図1 メムス・コアのサービス
また、当社は、大学発ベンチャーとして、東北大学の江刺正喜教授に協力を得ている。今まで東北大学に蓄えられたMEMS技術や、研究、開発が完了しているデバイスの中には、企業に技術移転されないまま残っている成果やノウハウが数多くある。これらを有効に活用し、少量使用のデバイスユーザにも、特徴ある製品を提供することを目標の一つにしている。
当社は、一貫の受託開発からMEMSのコンサルタント業務、部分的なプロセス受託、協同開発など、フレキシブルに対応できる事業形態を取っており、これらに対応して各種の相談を受けている。同工場の当社のクリーンルームは、4インチの製造ラインを順次6インチの製造が可能なラインの展開を進めており、さらには8インチも視野にいれて準備を進めている。最終的には4~8インチで、試作・開発の一貫したデバイス製造を目指したい。
メムス・コアの保有技術
シリコン深堀り加工(図2)
Si深堀り加工には、高性能DeepRIE装置を所有し、各種MEMSデバイスの精密構造体部品の製造に使用している。また、Si基板に高アスペクト構造の垂直貫通孔をDeepRIE装置で加工をし、貫通孔の側面にコンフォーマルに絶縁膜を形成し、Cu-Niなどの金属電極をめっきなどでコンフォーマルに形成したSi貫通配線技術(TSV)は、付加価値の高い「MEMSデバイス」を実現するために使われ、近年、特にウェハレベルパッケージ技術として応用されている。この全体の加工技術を所有している。
図2 深堀加工例
犠牲層ドライエッチング(図3)
従来のウェット法では不可能であった、極小ギャップを持つ微小構造体の形成を、犠牲層ドライエッチング技術で可能にした。可動部を持つ構造体にダメージを与えずに、シリコン酸化膜/多結晶シリコンなどの犠牲層をエッチングしている。また、構造体のスティッキングを防止する撥水性コーティングまでを連続して処理することも可能である。
図3 エッチング処理加工例
金粒子封止・接合サービス(図4)
サブミクロン金粒子焼結体(スポンジ状の構造)に50MPa程度の圧力を加えると、粒子同士が結合し空隙孔が消滅し、バルクの金状態となり高い結合強度が得られる。粒径0.05~0.5µm程度のサブミクロンサイズの金粒子は、150℃程度の熱をかけることで焼結が進行。純金の金粒子は、耐熱性、導電性に優れ、接合界面の表面凹凸の対応性も良く、接合封止素材として最適である。
図4 金電極、封じ加工例
テルスダイシング技術(図5右)
レーザーで内部加工し、ウェハを高品質に分割する新しいダイシング方法を提供している。発塵が出ない、抗折強度が強い、切りシロがゼロなどのメリットがある。
図5 左:従来技術 右:ステルスダイシング技術
今後の取組み
MEMSは、自動車産業、医療機器、コンシューマー機器、産業用センシングなど、多岐にわたる産業で需要が高まっており、特に、自動車の自動運転技術や車両センシング、医療デバイスのモニタリング技術など、新たなアプリケーションが開発されることで市場は成長している。
メムス・コアは取り揃えたMEMSプロセス設備/装置類を最大限に活かして事業を展開しているが、今後もさらに柔軟で小回りの効く体制を築きながら試作と開発を中心に迅速対応の運営を行い、市場に追従していく予定である。
また当社は今後も引き続きMEMSパークコンソーシアムや東北大学などと連携し、MEMSの関連企業と提携してMEMS事業を大きく育てる取り組みに注力しながら、地域の活性化と我が国の産業発展に微力ながら貢献できるようにしたい。
慶光院 利映
◎(株)メムス・コア
キーワード:特集 ベンチャー企業の実際