特集 木材利用に関する展望
三菱地所グループの木造木質化への挑戦~川上の製材事業への参入/MEC Industry 事業を通じて~
はじめに
中大規模木造建築については、今後の持続可能な社会における環境配慮型の建築手法として注目されている。このことは、建築的な側面を中心に本特集における他の執筆者に多くのページを割いてご説明いただいているので、本稿では簡単に触れる程度としたい。
当社グループにとって、コアビジネスであるデベロップメントを持続的に展開していくにあたり、環境に対する負荷を抑えた取組みを進めることは、非常に重要であり、環境配慮型の中大規模木造建築の普及に深い関りを持つことの重要性を認識している。
また、デベロップメントに際して「木」を使うことは、環境配慮面からの目的ではあるが、同時にこのテーマをグループの収益に直結したビジネスとして事業展開を図ることも目的としている。今回ご紹介する木造木質化の取組み、とりわけMEC Industry社(以下、MI社)設立もその一つといえる。
MI社の取組みは、デベロッパーの事業領域(川下)から遡り、施工⇒木材加工⇒製材といった川上の事業領域までを一気通貫(垂直統合)するビジネスモデルであり、デベロッパーが製材や建材のメーカー機能を持つものである。
デベロッパーにおける既存の事業領域を超えるもので、その難度は高いと認識しているが、木造建築普及における一つの有効な手法となりうるものと自負している。
これまでの製材業界におけるビジネスモデルである「住宅」向けの供給を主とし、多品種少量生産のオーダーメイド型であったものを、そうではない形、すなわち少品種大量生産型にすることができないかという目線で取組みを進めている。
具体的には、エンジニアリングウッドの一つであるCLT(Cross Laminated Timber)や2×4材を一次商品として製造し、それらを用いた最終商品(建築物)までを一気通貫型で工場生産(プレファブリック)するビジネスモデルの実現を目指している。
本稿のサマリーは上述の通りであるが、今回は機械学会誌への寄稿という機会なので、機械についても少々触れることにしたい。本学会員のなかでもこの分野に関与されている方は比較的限定されているのではないかと推察している。メーカービジネスに関して門外漢である当社グループの取組みをご紹介することが、少しでも皆様の研究やビジネスのお役に立てることになれば、幸いである。
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