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2024/2 Vol.127

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特集 木材利用に関する展望

日本の森をモリアゲる!

長野 麻子〔(株)モリアゲ〕

森とともに生きていく

森の国日本

「世界中で豪雨による水害や土砂災害、山火事が頻発」「もはや地球沸騰時代」「第6の大量絶滅時代」…。こんな話はよく聞くが、冷静に考えてみると、その原因のほとんどは我々人間にある。肥大化しすぎた経済活動による資源の過剰使用、環境への過剰負荷。地球でしか暮らせないはずの人間が、自らの手で地球を壊す。まごうことなく、自壊プロセスなのだ。

人間はあくまでも、自然の一部。自然は人間がいなくても困らない。この「居候的謙虚さ」を念頭に、自然の回復スピードの範囲内で、日々の経済活動を循環させ、地球ひとつで暮らせるライフスタイルを再構築することが求められる。

日本人の生活は少し前まで、すべて木に彩られていた。生まれたら木桶の産湯をつかい、薪で料理して暖を取り、木樽で熟成した味噌・醤油・酒を木の箸と器で楽しむ。木の風呂に入り、木の家に住み、最期は木の棺桶で旅立つ。

これを経験知としていた先人は、森とうまく共存してきた。日本では、人の手が入っていない原生林はごくわずか。換言すれば、ほとんどの森は先人がその都度、手入れをしながら守ってきたのだ。

現代は、化石燃料、プラスチック、鉄、コンクリートが木を代替し、一見便利な生活のかげに、木の存在感は希薄化した。都市の生活では森を意識することも減り、手入れ不足の荒れた森が広がっている。

日本は国土の7割を森林が占め、OECD加盟国ではフィンランド、スウェーデンに次ぐ森林大国。地球や森のおかげで生命をつないでいる人間が、それら自然資本の価値を再認識し、手入れし、持続可能なものにする。居候が雨露しのげる母屋のありがたさを再認識し、雨漏りすれば修理を手伝う。当然のことだ。

第一歩として、人と森の接点を積極的に作っていくことで、日本の森をモリアゲていきたい。自然と共生する「森の国」を次世代につないでいくことが私たちの使命と考えている。

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