日本機械学会サイト

目次に戻る

2024/2 Vol.127

バックナンバー

特集 木材利用に関する展望

我が国における木造建築の防耐火技術

花井 厚周〔(株)竹中工務店〕

日本の木造関連防火既定

木造建築を取り巻く日本特有な条件と変遷

かつて日本の建築物はほとんどが木造建物だった。

日本は数多くの大きな地震の発生する地域であり、また、台風が多く発生する位置にあることから、日本の都市部の木造建物は台風や、関東大震災のような大地震、そして大地震後の大規模な火災などの天災により大きな被害を受けてきた(図1)。さらに、第二次世界大戦の戦火により日本の都市部の木造建物の多くが消失した。

図1 関東大震災後の火災被害(上野山から見た浅草方面)

このような背景から、火事にならないまちづくりを目指した建築基準法が1950年に作られた。これにより日本の都市部の多くは防火地域に指定され、小規模な建物以外は、世界でほかに類を見ない日本特有な耐火建築物が求められることとなった。その結果、後述するが、2000年に建築基準法が改正され、木造でも耐火建築物として認められるようになるまでの50年間、日本では小規模な住宅以外の木造建築を作ることができなくなった。

日本以外の海外の国では、火災時に建築物に求める耐火性能は、建物規模、用途などにより定められた時間以内に建物内部の人々が安全に避難できれば、建物が倒壊や崩壊をすることを許容するものである。具体的な検証方法は、構造部材の部分的な焼失は許容し、所定の火災により焼失されていない残存断面で建物を支えられることを確認するものである。

世界に類を見ない日本特有な耐火建築物とは柱・梁・壁・床などの主要構造部を耐火構造にした建築物を指す。すなわち、日本の耐火建築物は通常の火災が終了するまでの間、建物の倒壊や崩壊を許容しないことを求められる。

柱・梁・壁・床・屋根・階段といった主要構造部は建物の最上階から数えた階数により求められる耐火性能が異なっている(表1)

耐火構造の具体的な検証方法は、これらの主要構造部が要求される火災終了時間以降も部分的な焼失を生じず、建物を支え続けられることを確認する手法となる。

表1 主要構造部の耐火要求性能

会員ログイン

続きを読むには会員ログインが必要です。機械学会会員の方はこちらからログインしてください。

入会のご案内

パスワードをお忘れの方はこちら

キーワード: