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2024/2 Vol.127

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特集 木材利用に関する展望

「建築用木材」から「木材的建築」を目指して

大庭 拓也〔(株)日建設計 Nikken Wood Lab〕

「建築用木材」から「木材的建築」を目指して

木材利用促進が進む中で、森林資源の循環の在り方とは

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、中大規模建築の木質化は炭素を都市に固定し、森林における吸収・除去の循環を促す点で、社会的責任は非常に大きい。昨今では、持続可能で豊かな社会の実現を目指すESG投資への関心の高まりなどもあり、都市における木材利用促進はますます進みつつある。

一方で、中大規模建築の木質化においては、防耐火性能、構造耐力の確保など、木材に対して特殊な表面処理や加工技術が必要となり、その開発はいまだ発展途上である。また、規模や用途によっては森林認証材やJAS規格材の活用が求められることがあり、利用できる木材やその産地が限定されることがある。さらに、工期と木材のリードタイムの不一致は森林の循環や工事コストに大きな影響を及ぼす。中大規模建築においては「木材を使えば良い」ではなく、森林資源の循環の在り方を踏まえた総合的な検討が必要不可欠となる。

「建築用木材」から「木材的建築」へ

木質・木造建築が百花繚乱の時代を迎えるいま、従来の鉄筋コンクリート造や鉄骨造をそのまま木質・木造化してしまうことが必ずしも正義というわけにはいかず、エネルギーやコスト、機能面において、問題やリスクを生むことにもなり兼ねない。中大規模建築における木材活用においては、建築計画がまずそこにあり、それに必要な材料を生産者側に準備してもらうというごく当たり前のスタンス、つまり「建築用木材」がいつでもどこでも調達できるという思考をもう少し拡張し、日本において、もしくはその敷地において、どのような木材が手に入り、どのように活用することが適切かといった「木材的建築」の思考が大事ではないかと考える。その思考の拡張こそが、森林・木材産業のサプライチェーンをより強固にし、そのトレーサビリティの価値が最大化され、鉄筋コンクリートや鉄骨造では到底実現することができない、木質・木造ならではの価値や豊かさが得られるのではないかと考えている。

本稿では、そのような観点より設計やデザインに従事した4つのプロジェクトと今後の展望について論じたいと思う。

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