日本機械学会サイト

目次に戻る

2024/1 Vol.127

表紙:本誌連載企画「絶滅危惧科目- 基盤技術維持のための再考-」のコンセプトに合わせてイラストレーター坂内拓氏とデザイン。本号は「蒸気エンジン」がモチーフ。

バックナンバー

特集 JSMEメンバーが考える2050年の社会像実現に向けた技術ロードマップ

社会像2.多様性と包摂性が確保された次世代コミュニティによる総合地域社会

林 憲孝〔(株)SUBARU〕・佐々木 卓実(北九州市立大学)・丸山 真一(群馬大学)・亀田 正治(東京農工大学)・板垣 貴喜(木更津工業高等専門学校)・荒尾 与史彦(早稲田大学)・筒井 壽博(弓削商船高等専門学校)・倉元 昭季(東京工業大学)・山崎美稀〔(株)日立ハイテク〕

はじめに

日本機械学会メンバーが実現させたい2050年の社会像の説明

日本機械学会は、2021年から2050年に向けてメンバーたちが描く三つの理想的な社会像についての議論を展開してきた。これらの社会像は『人間と自然、都市と地方、個人とコミュニティが長く共存される社会』、『多様性と包摂性が確保された次世代コミュニティによる総合地域社会』、および『リアルとバーチャルの調和に基づく個人価値尊重と社会サステナビリティの融合社会』をテーマとしている。この特集号では、これらの社会像を明確に分解し、各社会像の詳細な描写、それへの到達における課題、そして課題を克服するための技術的な方向性を提案する。2050年の理想の社会を掲げ、その実現の過程で必要となる技術や期待される変革を系統的に検討し、具体的なキーマイルストーンを設定することを目的としている。

特に、社会像2.『多様性と包摂性が確保された次世代コミュニティによる総合地域社会』のテーマに関しては、日本機械学会内の22部門のうち、該当テーマに関連する7部門の代表者で構成されたチームが綿密な議論を進めてきた。これらの部門は、交通・物流部門、機械力学・計測制御部門、流体工学部門、機素潤滑設計部門、機械材料・材料加工部門、技術と社会部門、スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス部門である。各専門領域の深い知見を積極的に取り入れ、新しい技術分野の創出を目指して議論が進行された。

この社会像2.『多様性包摂性が確保された次世代コミュニティによる総合地域社会』のテーマは、以下の三つの観点から検討されている。

観点①:この未来都市では、人々のつながりや価値観が尊重され、社会的な格差が縮小。都市の境界を越えて人々が繋がり、社会の均衡が生まれている。

観点②:この社会の中心には、革新的な技術が位置づけられている。人々の感情や感覚を共有するシステムや、遠隔での体験共有が一般的となっている。

観点③:革新的な技術は、生活の質の向上はもちろん、医療や創造性の領域でも大きな進展をもたらしている。個人の経験や価値が尊重され、協力的な社会の実現に貢献している。

これらの視点からみると、多様性と包摂性が確保された次世代の地域社会は、私たちの生活や社会に対して大きなインパクトを持つ可能性があると言える。そして、人々のつながりや価値観の尊重、そして革新的な技術の活用を通じて、新しい次世代のコミュニティが形成され、より豊かな社会の実現を期待したいと考えている。

2050年社会像実現のための課題の抽出 

2050年社会像と社会像実現の課題との関係性構築

観点①での社会像実現に関する課題は、キーワードやワークショップを通じて抽出された。初めに抽出された課題は、範囲や規模などの基準が一貫していなかったため、課題の大きさが異なる。そのため、図1に示すように、アンケート調査を行い、主要な課題と関連課題を明確にし、主要な課題を中心に統合した。この結果、社会像実現における包括的な課題として「共生的なつながりとリソースの共有に基づく社会の構築」が明らかになった。この包括的な課題を解決する技術を特定する過程で、課題は再分解され、表1に示すように、4つに分解された課題と、それぞれの課題の詳細な定義が示された。観点②での実現に関する課題も観点①と同様に、キーワードやワークショップを通じて抽出された。そして、図2に示すように、アンケート調査を行い、主要な課題と関連課題を明確にした。その結果、「高度情報化・クラウド社会を支える人間と機械の協働」が包括的な課題として特定された。次に、この課題を技術的に分解すると、表2に示す二つの具体的な課題が明らかになった。

図1 主課題と関連課題

表1 課題「共生的なつながりとリソースの共有に基づく社会の構築」の分解

図2 主課題と関連課題

表2 課題「高度情報化・クラウド社会を支える人間と機械の協働」の分解

観点③でも、①②と同様に、キーワードやワークショップを通じて課題が抽出された。また、図3に示すように、アンケート調査により主要な課題と関連課題を明確にした。その結果、「革新的な技術による医療と創造性の効率化の実現」が包括的な課題として特定された。そして、この課題を技術的に分解すると、表3に示す三つの具体的な課題が明らかになった。最終的に、『多様性と包摂性が確保された次世代コミュニティによる総合地域社会』のテーマに関して、三つの社会像に分けて課題を抽出した。それぞれの社会像における包括的な課題は、「共生的なつながりとリソースの共有に基づく社会の構築」、「高度情報化・クラウド社会を支える人間と機械の協働」、「革新的な技術による医療と創造性の効率化の実現」が得られた。次章では、これらの課題に対して日本機械学会がどのような技術で取り組むことができるか、それぞれの部門の専門分野を融合させた新しい技術分野の提案を行う。なお、本稿は当該分野に関するすべての技術を網羅的に示すことを目的としているのではなく、日本機械学会が2050年に目指す社会像の在り方およびそこまでに到達するためのロードマップを提示することが主目的となっていることを冒頭に申し添える。

図3 主課題と関連課題

表3 課題「革新的な技術による医療と創造性の効率化の実現」の分解

課題1.共生的なつながりとリソースの共有に基づく社会の構築(図4)

図4 課題1「共生的なつながりとリソースの共有に基づく社会の構築」のための技術ロードマップ
(図中のアイコンは Open AIのイメージ生成ソフトDALL・E3 により生成)

多様性と共有の促進

社会全体の調和を実現するためには、人々のつながりの多様性と価値観の共有を進めることが求められる。異なる背景や文化を持つ人々との交流を深め、相互理解や共感を増進する空間の創出が不可欠である。この問題解決のための技術として機械学会が取り組むべき分野には、「データ分析とAIを活用した個人のニーズや関心の理解」、「バーチャルリアリティ技術の発展と普及」、「スマートシティや都市インフラの最適化」、「教育用プラットフォームや知識共有のツール」などが挙げられる。ここでは、「データ分析とAIを活用した個人の要望や興味の把握」にスポットを当て、その技術の背景、必要性、手法、目的、そして時系列に沿った進捗やマイルストーンの予測を行う(図4)

データ分析とAIを活用した個人のニーズや関心の理解

データ分析とAIの活用による個人の要望や興味の理解は、ビジネスの成功を目指す上での不可欠な要素として認識されている。この手法を取り入れることで、企業や組織は顧客との絆を深化させ、持続可能な価値を創出することができる。

消費者は独特の要望や興味を持っており、それに応じたサービスや製品の提供が顧客満足度の向上に繋がる。正確な要望や興味の把握により、効率的にリソースを提供することが可能となる。市場の動向に迅速に対応し、変わりゆく消費者の要求を予測することで、競合他社に先駆ける取組みが可能となる。

データ分析とAIを活用した要望や興味の理解を実現するためには、IoTデバイス、モバイルアプリ、ウェブ閲覧、SNSなどからのデータをまず収集することから始める。続いて、統計的手法や機械学習アルゴリズムを用いて、収集データからの有益な情報やパターンを洗い出すためのデータ分析を行う。これらの情報をもとにAIを使用して、個人の将来の要望や興味の予測を行うモデルを作成する。作成された予測モデルを利用して、実際のデータとの照合を行い、モデルの精度を上げるためのフィードバックループを構築する。

これらのデータ収集、データ分析、予測モデリング、フィードバックループのシステム全体を構築することで、パーソナライズされたサービスの提供や、リアルタイムでの要望変動に迅速に対応する仕組みが可能となる。そして、消費者の要望や興味を理解し、長期的な関係を築き上げることができる。また、まだ明確には認識されていない要望や興味を先取りすることで、新しいビジネスのチャンスを見つけ出すことも可能となる。

2023年現在、さまざまなデータの収集や統合、オープンソースのAIモデルを利用した初歩的な分析ツールの実装が進行中である。分析の基盤となるデータの確保やデータの相互関係の明確化、そしてオープンソースのAIモデルの選定とトレーニングに関する研究開発が全世界的に進められている。

2025年を展望すると、個人のニーズや関心を対象としたリアルタイムトラッキングシステムの開発と、プライバシーを強化したデータ共有プラットフォームの導入が予定されている(1)。個人の行動や動向をリアルタイムで捉え、その情報を元にしたサービスや提案が可能となることを目指し、研究開発が進行中であると考えられる(2)。これには、リアルタイムデータ収集システムの設計と実装、即時データ解析のためのアルゴリズム開発、システムのテストと最適化が含まれる(3)。一方、プライバシー保護に注力したデータ共有プラットフォームの開発は、ユーザの信頼獲得と個人情報の安全確保を主な目的として進行していると予測される(4)~(6)。また、データの匿名化や暗号化技術の適用、ユーザフィードバックに基づくプラットフォームの改善、信頼関係の確立に向けたコミュニケーション戦略の策定が行われていると考えられる。

2030年を展望すると、予測アルゴリズムの精度向上と、多様性を促進するAI推奨システムの拡大が見込まれる(5)(7)(8)。予測アルゴリズムの更なる進化は、増加するデータ量と技術の革新を活用し、予測の正確さを向上させることを目的として研究開発が行われる(9)。既存アルゴリズムの見直し、新技術の導入、モデルの再トレーニングと精度検証が進行中であると予測される。また、AI推奨システムの拡充に関しては、個別のニーズや関心に基づいた多様な提案が可能となるよう研究開発が進行中であると予想される(10)(11)。推奨アルゴリズムの改良、ユーザエクスペリエンスの最適化、ターゲット市場での展開が主な焦点となっていると考えられる。

2050年を展望すると、個人の本質的なニーズや関心を完全に把握し、社会全体での共生的な関係構築が期待される。このビジョンに沿って、個人の深層心理や価値観を深く理解し、持続可能な共生社会を形成するための研究開発が進展していると推測される。この目標を達成するには、新しい技術や手法の開発、社会全体のニーズの洗練された分析、および共生的コミュニティの形成とその拡張に焦点を当てた研究が重要なテーマとして前進していくことが予想される。

地方格差と貧富の格差の低減

社会の均衡を実現するためには、地方格差や貧富の格差を低減し、経済的な機会均等の追求や、地域間の連携・協力を促進による地方の発展や貧困の軽減を図ることが必要である。この課題を解決するために必要な技術の中で、日本機械学会が取り組める技術として、「グリーンテクノロジーの研究開発と普及」、「スマート農業やスマート漁業、地域産業の振興を支援する技術の開発」、「デジタルインフラの整備と普及促進」、「誰もがアクセス可能な移動サービス」などが考えられる。本稿では特に、「スマート農業やスマート漁業、地域産業の振興を支援する技術の開発」に焦点を当てて技術の概要、必要性、方法、目標、年代ごとの進捗やマイルストーン(図4)を予測する。

スマート農業やスマート漁業、地域産業の振興を支援する技術の開発

スマート農業や漁業において、センサテクノロジーを活用し、土壌の湿度、温度、養分、pHや海水の温度、潮流などのデータをリアルタイムで収集し、それらの情報に基づく最適な水や肥料の供給、また適切な漁場の探索が行われる。ドローンや衛星観測技術を利用して、大規模な農地の監視や作物の健康状態、害虫の侵入を速やかに検出し、また沖合の大規模養殖の安定を図ることが可能になると考えられる。AIや機械学習、自動化技術の導入により、トラクターや収穫機などの農機具の自動運転が実現し、作業効率の向上や、短期・長期の漁場予測、養殖管理の高度化が進む。さらに、これらのデバイスや機械はインターネットを通じて連携し、IoT技術のもと、最適な農業や漁業運営のサポートが期待される(12)(13)

地域産業の振興に必要な技術として、デジタルマーケティングを通じて地域の特産品をオンラインで宣伝し、販売ルートを増やすことが考えられる。eコマースプラットフォームの導入で、地域産品のオンライン販売が推進され、新規市場や顧客にアクセスすることが可能となる。さらに、スマートロジスティクスを活用して供給チェーンを最適化し、製品を効率的に消費者に届けることも実現できる。グリーンテクノロジーやVR/AR技術、ウェアラブルセンサやアクチュエータを取り入れて、環境に優しい生産や地域の観光・体験型ビジネスの促進が期待される。

地域の経済成長を促し、地域間の経済格差を解消するためには、先進技術の導入が不可欠である。地域産業の競争力を上げ、新しい雇用を創出すること、そして地域住民に安定した収入を提供し、経済的な格差を縮小することが必要となる。環境を考慮した持続可能な農業・漁業技術の導入により、地域資源の効果的な利用と持続可能な社会基盤の構築も求められる。

最新の技術や研究を適用し、地方の農業、漁業、および地域産業に合わせたスマート技術の開発と導入が重要である。各地域の特徴や要望を詳細に分析し、カスタマイズされたソリューションを提供する方針が取られる。また、地域の関係者やステークホルダーとの協力を強化し、共同プロジェクトや取組みを積極的に進める。そして、教育や研修を通じて、地方の住民に新しい技術や知識を教え、技術移転を促進する。

スマート農業や漁業技術においては、土壌センサやICTブイ、ドローン、AI、グリーンテクノロジーを活用した病害管理や自動化農機具の導入、さらに適切な漁場予測や漁獲量管理・養殖システム管理が進められる。地域産業の振興に関しては、地域資源を利用して新しいビジネスモデルを開発するとともに、eコマースの導入や地域特産品のブランディングとマーケティング戦略の策定が進む。また、地域のエネルギー自給自足を目指して、再生可能エネルギーやエネルギー効率向上技術の開発が進行している。最終的に、地域の持続可能性を高めるための循環型社会への取組みや、廃棄物の削減を目指すリサイクル技術の導入が検討される。

2023年現在は、スマート農業を中心とした地域産業の振興に関する技術開発が進行中である。主な目的として、スマート農業や漁業の基盤技術の導入が予定されている。この背景から、土壌センサ、ドローン、ICTブイ、遠隔自動給餌システムなどの先進技術の実験的な適用が行われている。これらの技術は、農業や漁業の生産性向上や収穫量の最適化に寄与することが期待されている。さらに、地域産業の振興策も実施されつつあり、地域特有のリソースを活用した初期段階のビジネスモデルの開発が進行中である。その上で、特産品のブランド化やマーケティング戦略の立案が進められており、地域ブランドの構築と市場の拡大が目指されている。

2025年を展望すると、技術の成熟と広範な地域産業への展開が進行中であると推測される。具体的には、AIを用いた作物の病害管理や短期漁場予測が導入されることが予想される。これにより、病害や害虫のリスクの軽減や適切な操業計画の策定が実現され、生産性の向上が見込まれる。また、eコマースの導入により地域産業のオンライン販売が加速され、市場の拡大が期待される。さらに、再生可能エネルギーの試験導入が進められ、地域エネルギーの自給自足の初動が始動すると考えられる。

2030年を展望すると、スマート農業や漁業の技術が実用段階に達し、地域産業の高度化が進行中であると予測される。この期間中に、自動化技術の拡大導入や長期漁場予測、大規模養殖プラントの安定化などが実現すると考えられる。特産品のブランド戦略やマーケティングの高度化も進行中で、地域ブランドの強化と市場の拡大が目指される。循環型社会に向けた動きとして、廃棄物の削減を促進する技術の実用化が進むと見られる。

2050年を展望すると、地域の経済と技術の自立、そして持続可能性が主要な課題として位置づけられる。地域産業は総じて高度化し、各地域の特色が強調されると予想される。エネルギーにおいては、完全な自給自足が実現し、エネルギー利用の効率が高まることが期待される。全地域での循環型社会の実現を目指し、ゼロ廃棄物社会への取組みが進行中であると予測される。

選択的なつながりと心理的な絆の実現

現代の社会では、人間の感覚や心理的なつながりを基盤とした選択的な協力関係の形成が求められている。これは、個人の趣味や興味を踏まえて、自発的につながる信頼関係や共同作業の実現を意味する。この課題を克服するための日本機械学会が取り組める技術として、「センサ技術とヒューマンインタフェースの進化」や「AIを活用した創造性を高めるツールやデザイン支援システムの展開」である。特に「創造性を促進するAIツールやデザイン支援システムの開発」の技術に焦点を合わせ、その概要、必要性、手法、目指すべき目標、および進展の年代別のマイルストーンの予測を行う(図4)

創造性を促進するAIツールやデザイン支援システムの開発

現代の社会において、テクノロジーは私たちの日常や業務に深く根付いている。特に、人々の創造的な思考やデザインの能力を引き出すツールは、心理的な絆や選択的な関係の構築に貢献している。AIやデザイン支援システムの活用により、個人は自らのアイデアやビジョンを容易に具体化でき、そうした活動が自発的な共創を促す方向へと進展すると期待される。

AIがアイデア実現のサポートを提供することで、心理的な絆がさらに強まる。これにより、自己表現がしやすくなり、他者とのコミュニケーションや共同作業が円滑に進むことが期待される。AIが個人の興味や好みを捉え、適切なツールやサポートを提示することで、選択的な関係の形成や深い協働の機会が増加する。AIの進化により、人々の趣味や興味を学び、それに基づいた創造的な提案やサポートが実現できるようになる。デザイン支援システムの発展とともに、ユーザのアイデアをリアルタイムで視覚化するツールや、共同作業をスムーズに行うプラットフォームが導入される見込みである。AIベースのクリエイティブツールは、アート、音楽、文書作成など、さまざまな分野でのアイデアの生成や提案の改善として役立つ。さらに、デザイン支援プラットフォームは、ユーザ間でのアイデアの共有やフィードバックの交換、共同作業をサポートするシステムとして機能する。また、AIは個人の過去の行動や興味を分析し、それを基に最も適切なコンテンツやツールを提案することで、個別の好みや興味に対応した内容の提供が可能となる。

2023年現在、AIとデザインを統合した初の取組みとして、クリエイターのサポートを目的とした基本ツールの提供が進行中である14)~(16。このステージでは、AIはシンプルなクリエイティブタスク、例えば初級のデザイン提案やアートワークの生成をサポートする段階にある。その後、チーム協力を強化する基本的なコラボレーションツールの実装が進められ、これにより、クリエイターやデザイナーはアイデアをリアルタイムで共有し、フィードバックや変更を容易に行えるようになると見込まれる。

2025年を展望すると、デザイン支援に関する高度なAIモデルの採用が拡大し、その機能もさらに進化・充実すると見込まれている。技術的な発展に伴い、より高度なクリエイティブプロセスの自動化が実現し、アーティストやデザイナーは複雑なタスクへの取組みが可能となる。ユーザフィードバックを基にしたツールの進化も進行中で、ユーザの要求に的確に応えるツールが登場することが期待される。特に注目されるのは、AIが複雑なクリエイティブタスクのサポートを一般的に行い、リアルタイムのコラボレーションプラットフォームが導入されること。これにより、クリエイター間の連携や共同作業がさらに円滑になると予測される。

2030年を展望すると、自律的なAIクリエイティブアシスタントが一般化し、デザインやアートワークのプロセスが新しい段階に進むと予想される。統合デザイン支援システムの実現により、さまざまなツールやリソースを一括で利用できるようになる。そして、AIが個人の好みや興味を的確に把握し、最適なデザイン提案を行うことが目標とされる。さらに、AIが独自のデザインやアイデアを生成する能力を獲得し、クリエイターやアーティストとの深い連携が実現されることが期待される。

2050年を展望すると、技術の進化がさらに加速し、超高度なAIクリエイティブアシスタントが主流となり、デザインプロセスがすべて仮想空間で進行するようになることが見込まれる。この技術革新の背後には、AIと人間との間の創造的な障壁を取り除くという大きな目的があると推測される。その結果、ユーザは最先端のクリエイティブツールを駆使して、自らのアイデアを制約なく具現化することが可能となると考えられる。この時代の顕著なマイルストーンとしては、AIが人間と同等、あるいはそれを上回るクリエイティブ能力を持つこと、そしてAIが真のクリエイティブパートナーとして位置づけられることが挙げられる。仮想環境でのデザインが主流となることで、クリエイターは物理的な制約から完全に解放され、究極のクリエイティブ自由を享受できると考えられる。この状況は、前例のないデザインやアイデアの誕生を促進するものと期待される。

財の提供と共有経済の推進

社会の均衡を実現するためには、個々の財の消費から提供への移行を奨励し、共有経済のメカニズムを強化することを提案する。人々の持つリソースやスキルを共有し、互いに助け合いながら社会的価値を生み出し、持続可能な社会を目指す。この問題を解決するための技術の中で、日本機械学会が関われる技術として「自動運転およびAI・VR・ARの進化」、「アクセスしやすい移動サービス」、「災害対応可能な交通・物流技術」などが考慮される。本稿では特に、「災害時の交通・物流技術」に焦点を絞り、技術の背景、必要性、手法、目標、および各年代の進行状況やマイルストーンの予測を行う(図4)

災害時に対応できる交通・物流技術

2050年までに、数多くの都市や地域が自然災害や環境変化の影響を受けると予想される。このような状況では、人々の生命と生計を守るため、そして日常の生活を維持するために、強固な都市計画とともに、災害時に迅速で柔軟に対応可能な交通・物流技術が重要である。

持続可能な社会を実現するために、危機的状況でも安定したサービスと必要なリソースを速やかに提供することは不可欠である。災害対応の交通・物流技術は、共有経済の核心部分としての役割を果たし、安全な環境で必要な物資や情報へのアクセスを保証する必要がある。

災害対応の物流を効率化・高速化するための先進技術の活用が求められる。ドローンや自動運転技術を使用することで、被害を受けた地域や困難な場所を避けつつ、空中や最適な地上ルートを利用して物資を迅速に届けることができる。位置情報ネットワークやAI技術の進展により、災害時の物資ニーズや人の動きを予測し、最も効果的な物流ルートや適切な避難場所・経路を迅速に決定し、自動化・情報提供することが可能となる。自動化された建設機械を使用して主要な経路の確保や物流・人流ネットワークの早期回復が期待される。また、リアルタイムのコミュニケーションツールを利用することで、被災地と物資供給地点との情報共有や調整を効率的に行い、救援活動を迅速かつ正確にサポートすることが可能である17)~(19

災害が発生した場合も、物資や情報の迅速な移動や人々の流れを確保する社会を目指す。具体的には、災害時の物資の需要と供給のギャップを最小限にし、最短時間で必要な場所に物資を届ける物流システムを構築すること、そして人々の移動を確保しながら適切なサービスや社会インフラを維持・回復する交通システムを構築することを目指す。また、我々の社会は人々のリソースやスキルを共有し、相互にサポートし合うことで、持続可能でレジリエントな社会の実現を追求することが期待される。

2023年現在において、災害時に対応できる交通・物流技術の進展が見られる。具体的には、ドローンを活用した初期配送の実験が実施され、自動運転車の商業化や遠隔操作による無人化施工重機の導入が初期段階を迎えている。また、AIを駆使した予測モデルが開発されており、これにより災害時の迅速な対応や物流ルートの最適化、人流の予測が進展している。この年には、商用ドローンを使用した救援物資の配送テストが成功し、AI技術を取り入れた初の災害時物資需要予測モデルや人流予測モデルの実装が期待されている。

2025年の展望として、自動運転車の技術が広く普及し、多くの場面や地域での利用が現実味を帯びてくると考えられる。この技術的な進化とともに、AIはリアルタイムの災害分析や物流・人流ルートの最適化を追求し、それを支える通信ネットワークの構築が進行すると予想される。目指すべき地点として、災害時の物資輸送・移動の時間短縮、物流の誤りの低減、帰宅困難者や孤立地域の最小化が挙げられる。この年の大きな成果として、完全に自動化された物資輸送ルートが実現し、さらにAI技術による物流ハブの最適化や個別の避難情報の提供が期待される。

2030年の展望として、物流技術の進展は加速度的に進むと予想される。大型ドローン、VTOL、無人化施工重機が商業の現場や大型の工事現場での利用が普及する見込みで、災害時においてこれらの技術が重要な役割を果たすこととなる。AI技術と広範囲のセンサネットワークの統合により、物流や災害対応の効率向上が期待される。目標としては、被災地への迅速な対応や継続的な物資供給、物流ミスの排除が掲げられる。この年の注目される達成点として、災害地での大型ドローンやVTOLによる迅速な物資輸送、自律的な施工重機の普及、そして自動化された災害対応センターの構築が予想される。

2050年の展望において、超高速トランスポートシステムが実現し、前例のない速さでの物資輸送が可能となると見込まれる。全天候型の物流インフラも実現し、天候に左右されない安定した物資輸送が期待される。AIと人の協力によるシナジーが高まり、災害時の効果的な対応が可能となる体制が築かれることが予想される。目標としては、どのような災害にも迅速に対応できるシステムの確立、物資供給のリアルタイム化、持続可能な物流・交通システムの実現が挙げられる。最も注目されるマイルストーンとして、全天候型の超高速トランスポートネットワークの完全実用化が挙げられる。AIを核とした災害対応システムが人間との連携を深めることにより、多様な災害状況に対しても十全な物流および交通の対応が実現可能と期待される。

課題2.高度情報化・クラウド社会を支える人間と機械の協働(図5)

図5 課題2「高度情報化・クラウド社会を支える人間と機械の協働」のための技術ロードマップ
(図中のアイコンは Open AIのイメージ生成ソフトDALL・E3 により生成)

フレキシブル/ウェアラブル情報機器の開発

高度な情報化・クラウド化社会に求められるのは、個別のニーズに応じた情報機器の開発である。テーラーメイド機構や環境適応機構を用いて、人々が情報を自由に取得・共有・利用する機器の開発も必要とされる。日本機械学会として取り組むべき技術の中で、「フレキシブル・ウェアラブル情報機器の開発」や「テレメディシンおよび遠隔診療技術の開発」などが挙げられる。本稿では、これらの技術に注目して、技術の概要、必要性、方法、目標、および各年代の進捗やマイルストーンについて詳述する(図5)

フレキシブル・ウェアラブル情報機器の開発

フレキシブル・ウェアラブル情報機器の開発は、個人のニーズに適した情報機器を供給することを目的としており、高度な情報化・クラウド社会への対応が求められる。柔軟に人々の生活スタイルに合わせた設計の機器は、情報へのアクセスをもっと自由に、効率的に、かつ個人的な方法で提供する。現在の社会は、各個人のライフスタイル、職業、健康状態な
どが多岐にわたる。このような多様なニーズに応えるため、カスタマイズ可能な情報機器が求められる。健康管理デバイスは、ユーザの健康状態や目標に応じて最適化20する必要がある。情報の取得や共有の容易さ、すなわちアクセシビリティによって情報の価値が大きく変わる。どの状況や場所であっても、情報に迅速かつ容易にアクセスする必要がある。情報の取得や共有のハードルを低くすることで、情報社会はさらに進展し、生活の質が向上する。また、新しい通信技術、例えば5Gや6G(21)~(23を活用することで、リアルタイムの大容量データ転送や低遅延通信が可能になり、新しいサービスが登場する。

我々の情報機器の開発アプローチでは、エンジニアリング、デザイン、人間工学、AIなどの多岐にわたる分野の専門家との密接な協力が不可欠である。各分野の専門家の知識や経験を統合することで、技術の最前線での開発とユーザのニーズを反映した製品の開発が可能となると考えられる。真に有用な製品やサービスは、エンドユーザのニーズや使用状況を深く理解することが必要である。ユーザ中心の設計思考での開発は、ユーザの実際の使用環境や要望を詳細に調査・分析し、その結果に基づく。さらに、情報機器の開発における継続的なイノベーションは、新しい技術や材料、アルゴリズムの導入を要求される24)~(26。我々は、新しい技術や材料の研究・開発を継続して、情報機器の進化を追求する。

この開発の目的は、各ユーザが独自の状況や好みに応じてカスタマイズ可能な情報機器を利用でき、情報の取得が最も効果的かつ効率的に行えるようにすることである。情報アクセスの普及も同じく重要で、現代社会において情報アクセスは基本的な権利とみなされている。このため、地域や状況に縛られることなく、すべての人々が必要な情報に自由にアクセスできる環境を提供することを目指すことである。さらに、環境への影響を考慮し、環境負荷の少ない開発・製造方法を選択し、リサイクルや再利用が可能な材料の使用を推進している。

2023年現在では、フレキシブルディスプレイの実用化、バッテリーの小型化と長寿命化 (27)(28、さらに初期段階のウェアラブルAIアシスタント29)~(31が注目の技術となっている。この年の主要な目標は、ウェアラブル情報機器の実用化と市場導入である。また、2023年の主要なマイルストーンとして、最初の商品のローンチと、初期ユーザからのフィードバックの収集が挙げられる。

2025年の展望として、高度なバイオセンサ32の導入、AIパーソナルアシスタントのさらなる進化、そしてエネルギーハーベスティング技術33)~(35が主要技術と見られる。この年の目標は、健康管理や生活支援を主体とするウェアラブル製品の広範囲な普及を促進することが予想される。さらに、ウェアラブルデバイス全体のエコシステムの形成や、ヘルスケア業界の主要な企業との連携が進展することが期待される。

2030年の展望では、技術のキーワードとして、量子ドットディスプレイ36、神経インターフェース37、セルフヒーリング材料38などが挙げられる。この時期の目的は、個別にカスタマイズされたウェアラブル情報機器の広範な普及や、ユーザの体との直接的なインタラクションを実現することである。また、神経インターフェースを利用したウェアラブル商品の市場への導入や、生命体と情報機器の完全な統合を持つ技術の実証が期待される。

2050年の展望として、分子レベルのコンピューティング技術や、体内に完全に組み込むことができるウェアラブルデバイス、そして進化したブレイン・マシン・インターフェース39)(40が主要な技術トレンドと予想される。この時代の目標は、人体と情報機器の完全な融合を実現し、情報機器が日常生活のさまざまな面でのサポートを提供することであると考えられる。先を見越すと、情報機器を人体に移植する技術が確立され、人と機械が一体化する新しいエコシステムが形成されることが期待される。

テレメディシンや遠隔診療の技術開発

テレメディシンおよび遠隔診療は、遠隔地からの医療サービス提供を可能とする技術であり、病院やクリニックに直接足を運ばずとも適切な医療を受けられる手段となっている。

高度情報化の時代やクラウドベースの社会においては、地理的・時間的制約が取り除かれ、質の高い医療サービスを平等に受けることが可能となる。特に、高齢化や過疎化が進行する地域や医療資源が限られている地域では、遠隔診療の重要性が増している41)(42

フレキシブルなウェアラブル情報機器を利用すれば、リアルタイムでの健康情報の収集や専門家とのコミュニケーション、高解像度のカメラやセンサを有するウェアラブルデバイスの活用により、診察の精度向上が期待される。究極の目的は、どこにいても、いつでも質の高い医療サービスを受けられる社会の実現である。ウェアラブル情報機器の普及とその進化により、医療へのアクセスが容易となり、それが生活の質の向上に寄与することが期待される。

2020年のコロナ禍を背景に、オンライン診療の整備が急ピッチで進み43、その普及の期待が高まっている。2023年には、高解像度のビデオ通信技術の進展44やウェアラブル医療センサの初期モデル45の登場、そしてAIを活用した診断サポート46)(47が開始されることで、遠隔地でも質の高い医療サービスが提供される基盤48が築かれると考えられる。

2025年の展望として、ウェアラブル医療センサ技術のさらなる進化や、病状のリアルタイムモニタリングのAIアルゴリズム、医療スタッフとの生体情報共有のためのクラウドサービスの普及が予想される。これにより、遠隔診療の精度がさらに向上し、医療アクセスの拡充が進むこととなる。

2030年の展望では、VR/AR技術の導入49や神経インターフェースの利用、さらには高度な自動診断AIの登場など、テレメディシンの大きな進化が期待される。この時代には、リアルタイムの病状モニタリングや予防医療の普及、全自動遠隔診療システムの商業化など、医療の大きな変革が予見される。

2050年の展望として、分子レベルでの健康モニタリング、完璧に統合されたブレイン・マシン・インターフェース、そして自動治療を提供するAIシステムの実現が予想される。この時代では、人と医療機器、そして医療専門家の完全な連携が実現し、継続的な健康管理と予防が可能となることが期待される。そして、人体に埋め込まれる医療センサが普及し、ブレイン・マシン・インターフェースを使用した遠隔手術も実現されると期待される。

人手不足への対応

人手不足は設計、保守、運用の各分野で進行しており、機械がこれらの業務を効率的に支援することが求められている。特に、自動化、ロボット技術、AIの活用が重要となっている。日本機械学会として取り組むべき技術の中で、「ロボットによる人間の機能補助・維持・回復」と「IoTや振動、AE、画像計測技術とAIの連携による状態監視技術の向上」が考慮される。この章では、これらの技術の概要、必要性、取組み方法、目標、および進捗と予想されるマイルストーンの予測を行う(図5)

ロボットによる人間機能の補助・維持・回復

ロボットによる人間の機能補助技術は、人の物理的、認知的制約を超えて、高度な業務の効率的遂行をサポートすることを目指している。近年、減少する労働力や業務の専門化が進行中の中で、新しい技術の導入により業務効率の向上と高品質なサービス提供が必要とされている。ロボット技術や最新のAI技術の組み込みにより、業務の自動化と効率化、そして質の向上が可能となる。最終的には、人とロボット、AIが協力して、質の高いサービスを提供する社会が形成されることを期待している。

2023年現在では、簡易的な補助ロボットの実用化が進行中で、日常の業務の効率化を目指している50。初期段階のAI技術やウェアラブル技術も同時に開発されており、基本的な健康モニタリングが実現されると予想される。この年の主なマイルストーンとして、初の補助ロボットの市場投入やウェアラブル健康モニタリングデバイスの普及が始まることが期待される。

2025年の展望として、医療分野でのロボット技術やAIの進化が進行中で、特に高齢者や障害を持つ人々の生活支援に注目が集まっている51。この時期、AIを活用した介護ロボットや医療支援ロボットの開発が進められ、それらの技術の導入が医療現場で進行中と考えられる52。この年代の主要なマイルストーンには、介護支援ロボットの普及の始まりや、AIとの連携を持つ医療サポートロボットの開発が挙げられる。

2030年の展望として、AR/VR技術の組み合わせによるリハビリテーション支援技術が注目され、リハビリテーションの質を一段と向上させることが期待されている。この時期の主要な目標は、身体機能の大幅な補助や代替を実現することである。マイルストーンとしては、脳とロボットの直接的なインターフェースの実現や、リアルタイムでの健康モニタリングと対応が可能になることが挙げられる。

2050年の展望として、機械、医療、情報技術の統合による先進的な補助技術の実現が予想される。完全なブレイン・マシン・インターフェースや高度なAI技術の導入により、人の身体機能の完全な補助・維持・回復が可能となることを目指している53。この年代の大きな目標は、人間の身体機能の完全な補助・維持・回復を実現し、ロボット技術とAIを駆使して完全に自動化された医療システムを構築することが期待される。マイルストーンとしては、人体に組み込むことができる医療ロボットの普及や、ブレイン・マシン・インターフェースを使用した高度な医療処置の実施が期待される。

IoT、振動・AE・画像計測技術の活用とAI技術の連動による状態監視技術の向上

状態監視技術は、設備や機械、システムの動作や健康状態をリアルタイムで監視することを目的とし、その進化により、故障や異常の事前検知や、予防的な保守・修理が実現可能となっている。IoTはこの技術進展の中核を担い、さまざまなデバイスや機器のインターネット接続を通じて、センサからのデータの収集・共有を容易に実施している。特に、振動計測は機械の健康状態評価における基盤技術であり、AE(Acoustic Emission)は物質の異常、例えばひび割れや変形の音響的検出に用いられる。また、画像計測技術を採用することで、物体の形状、表面状態、動作などを光学的に評価することが可能となる。これらのセンサデータは非常に大量であり、効果的な解析のためにAI技術の活用が不可欠である。AIは異常検知、故障予測、状態解析を迅速かつ高精度に実行する能力を持ち、これらの技術の組合わせにより、先進的な状態監視が可能になっている。

高度情報化・クラウド社会の進展は、大量データの収集、解析、応答が要求される一方で、特に設計、保守、運用の分野での人手不足はこれらのプロセスの迅速・効果的な実行を阻害している。これに対応するためのキーとなるのは、正確な状態監視と、タイムリーな情報の取得・分析技術である。IoT技術の採用により、多様な機器やシステムが相互にデータを収集・共有することが実現される。加えて、振動・AE・画像計測技術は機械やシステムの状態や動作を精密に捉える手段として有効であり、これらの技術の結合によって、異常や変化の迅速な検出が可能となる。そして、AI技術の協力を得ることで、これらのデータから有意義な情報や予測を引き出すことが期待される。

最終的な目標は、IoT、振動・AE・画像計測技術、そしてAI技術の無縫接な連携による先進的な状態監視技術の確立である。これを実現することで、設備の故障や異常を早期に特定し、迅速な対応措置を講じることができる。その結果として、人手不足の問題を緩和し、効率的かつ安全な運用の実現が期待される。

2023年現在において、技術的展望を考慮すると、IoTデバイスの導入が初めて行われ、基本的な振動やAE計測技術の採用が始まる54。この時期に、初歩的な画像解析とシンプルなAIモデルを用いたデータ解析が実施されることが期待される。これらの技術の導入の狙いは、設備の効率的な監視を実現し、機械や設備の障害を早期に検出し、迅速に対応することである。この年の達成目標として、初期監視システムの構築と運用開始、そして最初の故障予防の成果が挙げられる。

2025年の展望では、技術的な発展がさらに進むことが予見される。特に、先進的なウェアラブル型IoTデバイスが広まり、AE技術を活用した微細なひび割れの検出能力が向上するとされる。さらに、3D画像解析技術の採用と、中級AIモデルとの統合が進むことが期待される。この時代の目指す点は、故障予測の精度向上と、保守活動の効率化である。また、マイルストーンとして、全設備にIoTが取り入れられ、AIを活用した自動故障診断システムの実装が期待される55

2030年の展望では、IoTの通信技術がさらに進化し、振動、AE、画像計測技術の精度が向上すると考えられる。リアルタイム画像解析の実現や、AI連携と予測モデルの高度化が進むことが期待される。この時期の主な目標は、設備の全面的な健康診断と、完全な自動予防保守の実現であると考えられる。また、精密検出技術の実用化と、全設備のリアル
タイム監視がマイルストーンとして挙げられる。

2050年の展望として、IoTのネットワーク技術が最先端に到達し、振動、AE、画像計測技術がナノレベルでの計測を可能とすると予想される56。4D画像解析の導入と、AI技術が自律的段階に進化し、完全に連携することが期待される。この年の主要な目標は、設備のダウンタイムを完全に排除し、自動修復機能を設備に組み込むことである。そして、自己修復能力を持つ機械の実現と、完全自律運用を達成する設備がマイルストーンとして期待される57

課題3.革新的な技術による医療と創造性の効率化の実現(図6)

図6 課題3「革新的な技術による医療と創造性の効率化の実現」のための技術ロードマップ
(図中のアイコンは Open AIのイメージ生成ソフトDALL・E3 により生成)

パーソナライズされた健康管理と創造性の促進

個々の健康情報の収集と分析のための薄膜生体センサの活用は、高齢化社会や健康志向の社会の支援が必要とされる。さらに、音環境、医療、福祉などの分野で提供されるパーソナライズされた価値と空間は、個人の創造性の向上にも寄与する。この課題を解決する技術の中で機械学会が取り組むべきものとして、「パーソナライズされた移動体験」や「感情認識技術とエンパシックコミュニケーションの実現」が挙げられる。本章では、これらの技術の概要、必要性、方法、目標、そして年代別の進捗やマイルストーンの予測を行う(図6)

パーソナライズされた移動体験

2050年の医療界の進展により、各患者に特化した治療と予防が実現されている。この進展の鍵となるのは「パーソナライズされた健康管理」と「創造性の促進」だ。前者は個人の生活習慣や遺伝的特性を基にしたカスタマイズされた医療、後者は日常の中での創造的活動やアイデアの奨励として表れる。特に、「薄膜生体センサ」(58)や「ブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)」(59)の導入は、高齢化や健康志向社会の支援に役立ち、それぞれの健康情報の収集・分析を通じて、各人のニーズやリスクを基にした医療ケアや健康管理提案が可能になると期待される。

また、「パーソナライズされた移動体験」が新たなステップとして注目されている。ここでの「移動体験」とは、物理的な移動だけでなく、情報やサービスへのアクセス、さらにはリアルとバーチャルの統合サービスを意味する。人々の日常における移動や情報の取得は、健康や創造性に直接影響するため、これを最適化することが重要である。

高齢化や健康志向の社会では、多岐にわたる要因を考慮したサービス提供が求められる。それにより、最大の健康や創造性を引き出すことが可能となる。具体的には、「音環境、医療、福祉」の分野でのカスタマイズされた価値提供や空間提供が考慮される。音の環境は心の状態を作り出す上で重要で、医療や福祉でも、個々のニーズや特性に合わせたケアがその人の健康や幸福感、そして創造性を高めることが期待される。これらの取組みは、個人のQOLの向上を目指して進められている。

2023年現在、基本的な移動履歴収集技術の前面的な導入が期待されている。この技術は、ユーザの移動パターンを詳細に把握するためのアプリケーションやデバイスとして重要視される。初期段階のARナビゲーションシステム(60)の導入により、現実の風景にシンプルな情報をオーバーレイ表示することが可能となると考えられる。技術活用の目標として、移動パターンをデータベース化し、カスタマイズされた移動推薦を初めて提供することが挙げられる。この年における主要なマイルストーンとしては、パーソナライズされた移動アプリのリリースやARナビゲーションの実装および普及が予想される。

2025年の展望として、技術の進展がさらに進む中、AIが移動体験の最適化の中心となる見込みである。具体的には、ユーザの移動パターンを元に、AIによる最適ルート提案システムの実現が期待される。さらに、AR・VR技術が顕著に進化し、ユーザには詳細な情報のオーバーレイ(61)や、仮想空間での体験が提供される見込みである。これらの技術を利用した目標として、日常の移動をさらに最適化し、時間やエネルギーの削減が挙げられる。マイルストーンとしては、AIとAR・VR技術の完全統合、そしてパーソナライズされた移動体験の普及が進むことが予想される。

2030年の展望では、自動運転車のシームレスな連携が実現することが期待される(62)。この連携により、移動中の健康管理や運動量の計測など、パーソナライズされたヘルスケアの統合が可能となる見込みである。この年の主要な目標は、完全にパーソナライズされた移動体験の実現であり、ユーザのニーズや健康状態に応じた最適な移動方法の提供が目指される。マイルストーンとして、自動運転車の大規模普及や、健康や運動量を考慮した移動推薦システムの導入が期待される。

2050年の展望として、量子コンピューティングを用いた移動最適化(63)や、BCI(64)を活用した移動体験の直感的制御など、革新的な技術の出現が予想される。これらの技術は、ゼロ待機時間やゼロストレスの移動体験の実現を目指し、高いQoLをもたらすとされる。移動中の情報アクセスやコントロールが直感的に、あるいは単なる思考のみで可能となることが期待される。この時代の重要なマイルストーンとして、量子コンピューティングとBCIを完全に統合した移動体験や、人間の脳と移動システムとのシームレスな連携(65)の実現が予想される。

感情認識技術とエンパシックコミュニケーションの実現

感情認識技術は、人の表情(66)、声の調子(67)、生体情報などを基に、その人の感情を正確に捉えることを目指す技術である。この技術が進化することで、個々の感情や気持ちをより深く理解し、適切に反応することが期待される。一方、エンパシックコミュニケーション(68)は、他者の感情や視点を深く共感し、それを基にした豊かなコミュニケーションを追求する考え方である。

高齢化が進展し、健康に対する関心が高まる現代社会において、各人が抱えるさまざまなニーズや感情に応えることは不可欠である。感情認識技術とエンパシックコミュニケーションの融合は、個人の感情や要望を的確に掴み、それに基づく適切なケアやサポートの提供を可能にする。具体的には、薄膜生体センサを介して取得される健康情報や生活環境データ(69)を活用し、感情認識技術でその人の精神的状態を詳細に把握する。そして、エンパシックコミュニケーションを基に、個々のニーズに合わせた医療、福祉、生活環境の最適化などのパーソナライズされたサポートを実現する。

これらの技術の進展は、高齢者や健康に注目するすべての市民が、自らの感情や要望に即した質の高い生活やケアを享受できる社会の実現が期待される。さらに、このような環境は個人の創造性を刺激し、すべての人がそれぞれの最大限の可能性を引き出す社会の実現が期待される。

2023年現在、技術の進歩は注目すべきものとなり、基本的な表情認識アルゴリズムの開発が進行中であり、音声のトーンやリズムの分析も初期段階に導入される見込みである。この年の目指すところは、喜びや悲しみ、怒り、驚きといった基本的な感情を70%以上の正確さで認識することである。この目標達成を目指し、初の感情認識のプロトタイプが公開され、主要な技術会議やイベントでのデモンストレーション(70)が予定されている。

2025年の展望では、生体センサの導入と共に感情認識技術がさらに進化し、AIの力で感情の微細な変動を捉え、エンパシックコミュニケーションの基本的な方法が取り入れられる見込みである。この年の目標は、85%の正確さで感情の変動を捉え、エンドユーザとのエンパシックコミュニケーションを初めて実現することである。そして、多くの企業や研究機関との共同作業が始まり、実用段階への最初の製品のリリースが予定されている。

2030年の展望として、感情認識技術は深層学習の活用でさらなる進化(67)を遂げることが予見される。また、バーチャルリアリティやオーグメンテッドリアリティを駆使したエンパシックコミュニケーションも強化される見込みである。この年の主な目標は、95%の正確さで人間の感情を解析・予測し、エンパシックコミュニケーションを日常的に使用可能にすること。感情認識技術は一般の家庭での使用にも適応し、主要な産業におけるエンパシックコミュニケーション技術の導入と実用化が進むことが期待される。

2050年の展望では、先進的なBCIを使用した直感的な感情認識とコミュニケーション(71)が実現されると考えられる。そして、エンパシックコミュニケーションは高度に個別化されると予測される。この年の究極の目標は、人間と技術の間のコミュニケーションのギャップを完全に埋め、すべてのコミュニケーションがエンパシックで深い意味を持つものとなることである。この壮大な目標を達成するための重要なステップとして、BCIと感情認識技術の完全な統合が実現され、エンパシックコミュニケーションの理念が世界中で広がり、多くの人々に受け入れられることが期待されている。

医療用人工生体膜と力学刺激による再生医療

医療用人工生体膜の導入は、機能が低下した組織や臓器の再生を期待して行われる。さらに、力学刺激を活用し、人間の機能の再生・拡張を実現し、健康と創造性を同時に促進することが求められている。この目的を達成するための技術の中で、日本機械学会が取り組むべき分野として「身体特徴に合わせた機能の再生・訓練・サポート」が注目される。本稿では、この技術の背景、必要性、手法、目標、さらには時代ごとの進捗やマイルストーンの予測を行う(図6)

身体特徴にあわせた機能の再生・訓練・サポート

身体特徴に合わせた機能の再生・訓練・サポートに向けて、2050年までの革新的な技術展開と医療の効率化が進められると期待される。機能が低下した組織や臓器の再生において、医療用人工生体膜と力学刺激の重要性が増してくることが期待される。身体の訓練やサポートの分野では、身体能力の向上を目的とした適切な力学刺激の導入が必要とされている。これらの技術は、我々の身体の特性やニーズに応じて、機能の再生・訓練・サポートを行うものである。「身体特徴に合わせた機能の再生・訓練・サポート」の実現のためには、それぞれの人の身体的特徴や状態に合わせた最適な治療やサポートが必要である。現代の医療は一般的な方法を採用することが多いが、新しい取り組みでは、個別の患者の具体的な状況やニーズに応じたカスタマイズされた治療やトレーニングが求められる。これにより、人々の健康の向上だけでなく、創造性の増進も期待される。健康な身体は、プレゼンティーズムの軽減とともに、パフォーマンスの向上に貢献すると報告されている72

機能が低下した組織や臓器の再生において、医療用人工生体膜の利用は不可欠である。損傷した肝臓や腎臓の機能をサポートまたは代替するために、この技術の導入が検討されている。さらに、力学刺激を利用した治療もまた重要である。力学刺激により、筋肉や骨などの組織の機能の再生や拡張が可能となり、骨折や筋肉の損傷の際には、治療期間の短縮や効果的なリハビリテーションが期待される。

2023年現在、医療技術は臓器や組織の傷害部位に対する新しい時代を迎えている。個々の身体特性や健康状態に応じた最適な治療やリハビリテーションプランの必要性が増している73。その対応として、個別化された生体センサ技術や生体膜を模倣したバイオチップの研究と開発が進められている74。また、VRやARを取り入れたリハビリテーション支援機器も研究されている75

2025年の展望として、医療技術の進歩はさらに加速すると見込まれる。特に、医療用の人工生体膜技術が新しいフェーズに突入し、実用化に向けた実験が行われることが期待される。この技術の向上と同時に、AIを用いた力学刺激の最適化や個別化が進展し、機能の低下やダメージを受けた組織や臓器の再生が効果的に行われることが予想される。マイルストーンとして、医療用人工生体膜の初のクリニカルトライアルの完了や、AIを組み込んだリハビリテーションシステムの商業化が予想される。

2030年の展望では、生体との一体化を追求した高度な人工生体膜の実用化が進展すると考えられる。これにより、人工生体膜を活用した再生医療の導入が拡大し、その効果が確認されることが期待される。さらに、VRやARを使用したリハビリやトレーニングシステムの普及が進み、個々のニーズに応じたトレーニングのプランが策定されることが予想される。この時期の主要な成果として、多くの臓器や組織における人工生体膜の有効活用や、VR/ARを用いたリハビリの成果に関する大規模研究の公表が期待される。

2050年の展望としては、全身を対象とした高度な人工生体システムの研究が進められると予想される。この中で、脳-コンピュータインターフェースを活用した直感的なリハビリやトレーニングも実現されることが期待される。これらの革新的な技術導入により、人間と技術の境界はほぼなくなり、リハビリやトレーニングの効果や効率が大きく向上することが見込まれる。そして、この年には、人工生体システムを全身に適用する実験が成功し、脳-コンピュータインターフェースが新たなリハビリテーションやトレーニングの標準として確立され、一般的に認知されると期待される。

高性能人工心臓と創造的な治療アプローチ

高齢化社会および健康志向の社会において、身体情報の計測および高性能な人工臓器(如く高性能人工心臓)の開発と制御によって、疾患を持つ人々の生活品質の向上や革新的な治療法の実現が期待されている。この課題への対応として、日本機械学会が取り組むべき技術分野は、「高齢化社会/健康社会を支える薄膜生体センサ、医療用人工生体膜、高性能人工心臓」などが挙げられる。本章では、これらの技術に焦点を当て、技術の概要、必要性、方法、目標、そして年代別の進捗やマイルストーンの予測を行う(図6)

高齢化社会/健康社会を支える薄膜生体センサ、医療用人  工生体膜、高性能人工心臓

2050年には、先進的な医療技術の時代が到来することが予見されている。その中心技術として、体内埋め込み型のヘルスケアデバイスや高性能人工臓器を用いた治療法が挙げられる。このアプローチは、多くの疾患を持つ人々の生活品質を劇的に向上させ、創造的な活動にも参加しやすくすることを目的としている。

社会が高齢化する中で、心臓疾患やその他の健康問題を抱える高齢者の増加が見込まれる。全体の健康や生活の質の維持・向上は、社会の持続性や活力を確保するために不可欠である。そして、高齢者だけでなく、若者においても心臓疾患のリスクが存在し、彼らの能力や活力を引き出すためのサポートが必要である。

「薄膜生体センサ」、「医療用人工生体膜」、および「高性能人工心臓」の技術はこの問題の解決策として注目されている。「薄膜生体センサ」は、リアルタイムでの健康状態のモニタリングを可能にし、異常時の迅速な対応をサポートする。「医療用人工生体膜」は、機能不全の組織や臓器の再生を補助し、その性能を高める。「高性能人工心臓」は、自然な心臓と同等、またはそれを超える性能を持ち、継続的な血液の循環を確保し、患者の活動範囲を拡大することを目指している。

これらの技術の組合わせによって、疾患を持つすべての人々に、高い生活品質と創造的な活動の機会を提供することができると考えられる。そして、このビジョンは2050年に目指す健康な社会の理想として実現することが期待されている。

2023年現在は、薄膜生体センサ技術が初期段階に至り、リアルタイムで基本的な生体情報を取得する埋込型・装着型デバイスが多数開発されている76。この技術の進展により、常時の健康状態監視や早期の健康問題の迅速な検出が可能となると予想される。一方、補助人工心臓の臨床試用も進行中である77

2025年の展望では、医療用の人工生体膜に関する基礎研究が進行中であり、基本機能を備えた試作品の開発が始まると予想される。このセンサは、複数の指標を同時に測定する能力を有すると考えられる。同時期に、医療用の人工生体膜技術が実用化の方向へ進むことと、それを実際の医療現場で使用することが期待される。その主な目的は、疾患の早期発見と予防のための情報提供の充実である。また、マイルストーンとして、薄膜生体センサの量産と医療用人工生体膜の初の臨床応用が開始されると見込まれる。

2030年の展望では、薄膜生体センサ技術がさらに進化し、統合型システムの開発が予見される。これにより、他の医療デバイスや情報システムとの連携が強化される見込みである。医療用の人工生体膜も、大規模な臨床応用が進展すると考えられる。さらに、補助人工心臓の臨床データ蓄積と高性能人工心臓のプロトタイプ開発が進行していると予想される。この時期の主要な目標は、個人の健康管理を集約する統合プラットフォームの構築である。また、マイルストーンとして、薄膜生体センサの全国展開や高性能人工心臓の初の実験的応用が期待される。

2050年の展望では、完全統合型の薄膜生体センサシステムの完成が予想される。医療用の人工生体膜もさらに高機能化が進み、全面導入が期待される。高性能人工心臓の技術も実用段階に入り、普及が進行すると見込まれる。この時期の主要な目標は、高齢化社会を支援し、高度な医療ケアを実現することである。そして、マイルストーンとして、全国的な健康管理ネットワークの構築や高性能人工心臓の大規模な臨床応用、および成功事例の報告が期待される。

おわりに

「多様性と包摂性が確保された次世代コミュニティによる総合地域社会」の実現の技術ロードマップ

本稿では、多様性と包摂性が確保された次世代コミュニティによる総合地域を目指す社会の構築をテーマに掲げ、その実現に向けた議論を展開した。、このテーマに資する多様な部門の専門家による綿密な協議がワークショップ形式で行われ、2050年に向けて実現すべき理想的な社会像および必要な技術ロードマップが策定された。実現に向けての具体的方策を探るために、異なる分野の知見が統合され、新たな技術領域の創出が図られた。社会像に照らし合わせた望ましい将来を三つの主要カテゴリーに分類し、それに伴う包括的な課題をさらに深堀りして詳細化した。その上で、本会メンバーによる主導的な技術開発の方向性を特定し、12の技術領域にわたる具体的な議論を進行した。これらの技術項目に対し、2023年を起点として、2025年の短期目標から、2030年および2050年の中長期展望に至るまでの技術進化に関する見通しを描き、達成への目標とマイルストーンを具体化した。本取組みが、持続可能な社会を目指す一助となることを願っている。


参考文献

(1) データ戦略の推進状況 (digital.go.jp),デジタル庁,
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/b565c818-75f4-4990-9125-dd43af8362ba/afe23c36/20220906_meeting_data_strategy_outline_01.pdf(参照日2023年10月9日).

(2) 昨今の顧客体験から見る、小売業の課題と今後の展望 : 富士通 (fujitsu.com), 富士通,
https://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/retail/feature/articles/article-202203-03/(参照日2023年10月9日).

(3) 時系列ビッグデータのためのリアルタイムAI 技術(JST 新技術説明会), 日本科学技術振興機構,
https://shingi.jst.go.jp/pdf/2021/2021_mirai_10.pdf (参照日2023年10月9日).

(4) GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則), 個人情報保護委員会,
https://www.ppc.go.jp/enforcement/infoprovision/EU/(参照日2023年10月9日).

(5) California Consumer Privacy Act, State of California Department of Justice,
https://www.oag.ca.gov/privacy/ccpa(参照日2023年10月9日).

(6) 次世代のデータ共有を可能にするプライバシー強化技術,デロイト トーマツ グループ,
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/deloitte-analytics/articles/privacyenhancing-technologies.html (参照日2023年10月9日).

(7) AI 戦略2022 の概要, 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局,
https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/aistrategy2022_gaiyo.pdf(参照日2023年10月9日).

(8) AI Index Report 2023 – Artificial Intelligence Index, Stanford University,
https://aiindex.stanford.edu/report/(参照日2023年10月9日),
令和2 年情報通信白書, 総務省,
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd141100.html (参照日2023年10月9日).

(9) 大川 佳寛, 小林 健一, “ データ変化に対する教師なし適応技術に関する最新研究動向とその考察”, The 36th Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence, 2022.

(10) 「令和の日本型学校教育」の構築を目指して, 中央教育審議会,
https://www.mext.go.jp/content/20210428-mxt_kyoiku01-00014639_10.pdf (参照日2023年10月9日).

(11) 人工知能研究の新潮流~日本の勝ち筋~ , 国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センター,
https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2021/RR/CRDS-FY2021-RR-01.pdf(参照日2023年10月9日).

(12) スマート農業をめぐる情勢について, 農林水産省,
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/index-120.pdf(参照日2023年10月2日).

(13) スマート水産業の展開について, 水産庁,
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kenkyu/smart/attach/pdf/index- 9.pdf(参照日2023年10月2日).

(14) 内閣府HP, ムーンショット目標3: 2050 年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現(2020),
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/sub3.html (参照日2023年10月13日).

(15) Baldwin, E., “How Artificial Intelligence Will Shape Design by 2050”, Published on 28 Sep 2021, ArchDaily. https://www.archdaily.com/937523/howartificial-intelligence-will-shape-design-by-2050> ISSN 0719-8884 (参照日2023年10月13日).

(16) Sarker, I.H., “AI-Based Modeling: Techniques, Applications and Research Issues Towards Automation, Intelligent and Smart Systems”, SN Computer Science, 3, Article number:158 (2022).
https://doi.org/10.1007/s42979-022-01043-x

(17) 無人化施工の課題と今後の方向性について, 国土交通省,
https://www.mlit.go.jp/common/000987457.pdf(参照日2023年10月2日).

(18) 今後の災害・物流ネットワークについて, 国土交通省,
https://www.mlit.go.jp/common/001214462.pdf(参照日2023年10月2日).

(19) グリーン社会の実現に向けた国土交通分野における環境関連施策・プロジェクトについて(検討イメージ例:持続可能な交通・物流サービス関係), 国土交通省,
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001400953.pdf(参照日2023年10月2日).

(20) 段暁楠,河井伸子,山﨑由利亜,小野年弘,正木治恵,高齢者ケアにおけるセンサーとIoT機器の使用に関する文献検討- 日本語,英語,中国語のデータベースを用いて-,日本看護科学会誌, Vol. 43 (2023),pp. 28–37.

(21) Beyond 5G(6G)に向けた技術戦略の推進,総務省,
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/B5G_sokushin/index.html (参照日2023年10月10日).

(22) Beyond 5G 研究開発促進事業研究開発方針(令和4 年6 月),総務省,
https://www.soumu.go.jp/main_content/000827283.pdf

(23) 須山聡,5G の高度化と6G,日本機械学会誌,125 巻,1246 号(2022),pp. 10-13.

(24) 藤掛英夫,フレキシブルディスプレイの基礎,映像情報メディア学会誌,Vol. 67,No. 12(2013),pp. 1048-1053.

(25) 竹井邦晴,ウェアラブル・フレキシブル健康管理デバイス,応用物理,第84巻,第11号(2015),pp. 1002-1007.

(26) 吉田学,医療用ウェアラブルデバイスと印刷技術,日本印刷学会誌,第58巻,第2号(2021),pp. 52-56.

(27) 薄形フレキシブル電池(Air Patch Battery),マクセル(株),
https://biz.maxell.com/ja/primary_batteries/air_patch_battery.html (参照日2023年10月10日).

(28) フレキシブルエネルギーデバイスコンソーシアム,AIST(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)エネルギー・環境領域研究企画室,
https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/FDEC/index.html (参照日2023 年10 月10 日).

(29) NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構),人工知能技術適用によるスマート社会の実現紹介ハンドブック(2022 年度版),第2 章 健康、医療・介護分野,2024, Vol.127 / No.1262_Jan. 44 pp.36-58.

(30) 総務省 次世代人工知能推進戦略,「新たな情報通信技術戦略の在り方」第2 次中間答申(別冊2),第4 章 分野別の推進方策,第2 節 次世代人工知能分野の推進方策, III-2(1) 医療・ヘルスケア分野,pp.58-60.

(31) 総務省 次世代人工知能推進戦略,「新たな情報通信技術戦略の在り方」第2 次中間答申(別冊2),第4 章分野別の推進方策,第2 節 次世代人工知能分野の推進方策,IV-2(3) 次世代人工知能技術の研究開発ロードマップ,pp.102-105.

(32) 生物機能を利用したデバイス分野の技術戦略策定に向けて,NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)技術戦略研究センター,TSC Foresight,Vol.23(2017).

(33) 竹内敬冶,エネルギーハーベスティングで実現するSociety 5.0,計測と制御,58 巻,9 号(2019),pp. 703-706.

(34) 秋永広幸,エネルギーハーベスティング技術の新展開,応用物理,89 巻,6 号(2020),pp. 321-327.

(35) 竹内敬治,エネルギーハーベスティング技術の現状と将来,精密工学会誌,88 巻,11 号(2022),pp. 805-808.

(36) 次世代高効率ディスプレイ向けCd フリー量子ドットでRGB 画素のパターニングに成功,NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構),ニュースリリース2022年12月12日,
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101599.htm(l 参照日 2023年 10月 10日).

(37) 「埋込サイボーグ技術の社会実装に係る技術・社会的課題および社会システムに及ぼす影響に関する調査研究」調査研究報告書(令和3 年7 月),JST(国立研究開発法人 科学技術振興機構)ムーンショット型研究開発事業新たな目標検討のためのビジョン策定,埋込サイボーグ技術社会実装検討チーム.
https://doi.org/10.52926/JPMJMS20MI

(38) 新谷紀雄,自己修復材料の研究開発の現状と今後期待される展開,表面技術,Vol.65,No.10 (2014),pp.464-469.

(39) 科学技術の未来を展望する戦略ワークショップ「ブレイン・マシーン・インターフェース(BMI)」分野報告書,JST(国立研究開発法人 科学技術振興機構)研究開発戦略センター(2007)
https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2006/WR/CRDS-FY2006-WR-15.pdf

(40) 長谷川良平,ブレイン- マシン インターフェースの現状と将来,電子情報通信学会誌,Vol.91,No.12 (2008),pp.1066-1075.

(41) 高橋毅,多対多対応型モバイルテレメディシン遠隔医療システムの開発と実用化,ICT イノベーションフォーラム2013,戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)予稿集B-16.
https://www.soumu.go.jp/main_content/000256448.pdf

(42) 遠隔医療のさらなる活用について,厚生労働省(2022).
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000918554.pdf

(43) 行形 毅,コロナ禍における遠隔医療(オンライン診療)(< 特集>with コロナにおける新たな生活様式を支える技術),日本機械学会誌,125 巻,1244 号(2022),pp. 26-29.

(44) 増野淳,留場宏道,5G を活用した超高精細8K 映像伝送に関する実証試験,電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン,No.49 (2019),pp. 18-24.

(45) 田村俊世,ウェアラブルセンサ,非接触センサの医療応用,医機学,Vol. 90,No. 1 (2020),pp. 11-23.

(46) 竹村昌敏,今泉英明,次世代医療としての遠隔医療と人工知能,情報処理,Vol.59,No.7(2018),pp.592-595.

(47) 富士フィルム(株),医療AI,
https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/medical-ai(参照日2023年10月10日).

(48) オンライン診療その他の遠隔医療に関する事例集,厚生労働省 医政局総務課(令和5年8月).
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001140242.pdf

(49) 杉本真樹,XR (Extended reality: VR ・AR ・MR) とテレプレゼンスによる遠隔医療・手術ナビゲーション・ロボット支援手術,日本コンピュータ外科学会誌,22 巻,3 号(2020),pp.159-163.

(50) 理化学研究所プレスリリース,
https://www.riken.jp/press/2022/20220215_2/index.html(参照日2023年10月9日).

(51) 経済産業省資料,
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/003_03_00.

pdf(参照日2023年10月9日).

(52) 尾崎文夫, 高齢者生活支援ロボットの現状, 日老医誌, Vol. 57 (2020), pp.224-235.

(53) 平田雅之, 体内埋込型ブレイン・マシン・インターフェース, 神経治療, Vol. 33, No.3(2016), pp.399-404.

(54) NEDO ホームページ,
https://wakasapo.nedo.go.jp/seeds/seeds-0221/(参照日2023 年10 月9 日).

(55) 齋藤彰, AI の進化は故障解析に何をもたらすのか~その期待とリスク~ , REAJ 誌Vol. 40, No. 2 (2018), pp.64-71.

(56) 三和田靖彦,X 線CT による形状計測とボリュームモデリングの現状と課題, 精密工学会誌, Vol. 82, No. 6 (2016), pp.497-501.

(57) 新谷紀雄, 自己修復材料の研究開発の現状と期待される展開, 表面技術, Vol. 65, No.10(2014), pp.464-469.

(58) 武岡真司,鉄祐磨,山岸健人,有機材料(薄膜型生体デバイス),人工臓器,46-3(2017),pp.173-175.

(59) 田中聡久,東広志,非侵襲生体信号の処理と解析- Ⅱ – ブレイン・コンピューティング・インターフェイス,システム/ 制御/ 情報,62-4(2018),pp.159-165.

(60) 廣瀬智博,山崎理,伊藤宏平,高橋克彦,市原直彦,ARと画像認識を搭載したナビゲーションシステムの開発,PIONEER R&D,21-1(2012),pp.1-10.

(61) 柳澤琢磨, 靭矢修己, レーザープロジェクターによる拡張現実型ヘッドアップディスプレイ, 光学, 43-10(2014), pp.464-468.

(62) 究極のAR ディスプレイ 未来のウィンドウを拡げる光学技術,
http://ex-press.jp/wpcontent/uploads/2018/09/p14-17_ft_ar_vr_displays.pdf (参照日2023年10月1日).

(63) 増田健一,露峰祐衣,北田智之,八川剛志,羽賀剛,量子コンピューティングによる配送計画の最適化,住友電工テクニカルレビュー,202(2023),pp.91-94.

(64) Brent J. Lance, et.al.,Brain-computer interface technology inthe coming decades, Proceedings of the IEEE, Vol.100(2012),pp.1585-1599.

(65) 内閣府, 量子未来社会ビジョン(案),
https://www8.cao.go.jp/cstp/ryoshigijutsu/11kai/siryo2.pdf(参照日2023年10月17日).

(66) 沼田祟志, 朝康博, 対話エージェントにおけるVR, 知識と情報, 33-3(2021),pp.82-88.

(67) 安藤厚志,音声感情認識の技術動向- 深層学習に基づく手法とその最新研究-,日本音響学会誌,79-1(2023),pp.72-79.

(68) 片岡仁美,共感と医療について(エンパシースケールを中心に),日本内科学会雑誌,101-7(2010),pp.1103-1107.

(69) 四反田功,辻村静也,体液から発電可能な自己駆動型バイオセンサの開発とヘルスモニタリングへの応用,表面技術,74-1(2023),pp.38-42

(70) 阿久津聡, 勝村史昭, 徳永麻子, 後藤恵美, 木村誠,コロナ禍で加速したテレワーク時代の共感マネジメント ―コミュニケーションモデルの提案と実践手法の検討―, マーケティングジャーナル 41-1(2021),pp.54-67.

(71) 生駒響, 竹内勇剛, テレプレゼンスロボットの行動による遠隔地間での共同注意の生成, HAIシンポジウム2023,G-9.

(72) 平成27 年度健康寿命延伸産業創出推進事業健康経営に貢献するオフィス環境の調査事業『健康経営オフィスレポート』,経済産業省,
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf (参照日2023年9月30 日).

(73) NEC ヘルスケア・ライフサイエンス ホワイトペーパー,NEC,https://jpn.nec.com/safercities/healthcare/wp/dl/LifeScience.pdf ( 参照日2023 年9 月30 日).

(74) 再⽣医療・遺伝⼦治療の産業化に向けた経済産業省の取組について,経済産業省,https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/saisei_saibou_idensi/dai4/siryou1-2.pdf ( 参照日2023 年9 月30 日).

(75) 安田 和弘,岩田 浩康,没入型VR によるリハビリテーション支援:特性と臨床応用,日本ロボット学会誌,Vol.41, No.4 (2023), pp. 33-37.

(76) 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 研究開発戦略センター(CRDS),研究開発の俯瞰報告書 ナノテクノロジー・材料分野(2023 年) 2.2.3 バイオセンシング,pp.170-180.

(77) 志賀 卓弥,齋藤 浩二,補助人工心臓の現状と今後の展開,日本集中治療医学会雑誌,Vol.27 (2020), pp.177-183.


交通・物流部門

<正員>

林 憲孝

◎(株)SUBARU 技術本部 主査
◎専門:機械工学、自動車工学

 

機械力学・計測制御部門

<正員>

佐々木 卓実

◎北九州市立大学 国際環境工学部 准教授
◎専門:機械力学、振動工学、除振、ダンピング

 

<正員>

丸山 真一

◎群馬大学 理工学府 教授
◎専門:機械力学、機械振動、非線形振動、連続体振動

 

流体工学部門

<フェロー>

亀田 正治

◎東京農工大学 工学府 機械システム工学専攻 教授
◎専門:流体工学、混相流、高速流、流体計測

 

機素潤滑設計部門

<正員>

板垣 貴喜

◎ 木更津工業高等専門学校 機械工学科 教授
◎ 専門:機械要素の振動、騒音、トライボロジー

 

機械材料・材料加工部門

<正員>

荒尾 与史彦

◎早稲田大学 准教授
◎専門:複合材料、ナノ材料

 

技術と社会部門

<フェロー>

筒井 壽博

◎弓削商船高等専門学校 商船学科 教授
◎専門:流体機械工学、システムデザイン、技術教育

 

スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス部門

<正員>

倉元 昭季

◎東京工業大学 工学院 システム制御系 助教
◎専門:生体工学、人間工学、自動運転

 

技術ロードマップ委員会 委員長

<フェロー>

山崎 美稀

◎(株)日立ハイテク モノづくり・技術統括本部 主管技師
◎専門:環境配慮材料設計・システム設計、製品企画論、技術開発戦略策定

キーワード: