転ばぬ先の失敗学
第11回 ChatGPTは技術者の過失を裁けるか
ChatGPTは過去のデータを使って設計できるか?
ChatGPTは過去のデータを基に人間的な文章を作る。2022年11月に公開された後、世界中で衝撃的に試用されている。筆者らも機械設計で試用中。機械設計では、顧客欲求(ニーズ)、要求機能(仕様書)、設計解(ポンチ絵)、属性(寸法・材質・加工条件など)の順番で決めていくが、各工程でChatGPTに聞いてみた。例えば、対象をスマホにしたところ、要求機能と設計解は、「車をナビしたい」ので「GPSと地図」を採用するというように、実に正確に記述してくれた。この成果も、ChatGPTを作ったOpenAI社が、すでに世界中のスマホ設計に関する文章を学習し尽くしたからだろう。何でもインターネットから20エクサバイトと膨大な文章を搔き集めたらしい。
もちろん、属性も学習しているので、例えば、欲するアルゴリズムを入力すればPythonのプログラムを書いてくれる。学部2年生向けのソフトウェア演習では、学生がChatGPTに指導してもらって宿題の負荷を激減できた。しかし、材料力学演習を手伝ってもらおうと、必要強度から許容寸法を計算で求めさせると、公式は合っているが計算結果は嘘ばかり。そもそもChatGPTには論理思考や計算能力はない。提示する言葉を機械学習で確率的に求めているだけ。生成AIの特性を忘れてはならない。
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