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2023/11 Vol.126

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特集 機械状態監視資格認証事業20周年

機械状態監視における振動関連規格

榊田 均(元東芝)・藤原 浩幸(防衛大学校)

連規格について

振動を用いた状態監視は、定期的に測定した振動の変化に基づき機械の診断を行う技術である。そこで用いられる診断基準の多くがISO規格によって定められている。ここでは、振動を用いた状態監視技術者が知っておくべき、関連規格について紹介する(1)。国際規格は「TC108:機械振動、衝撃および状態監視」専門委員会の「SC2:機械・乗り物および構造物の振動・衝撃の測定と評価」分科委員会および「SC5:機械の状態監視および診断」分科委員会が中心となって議論され、日本国内でも専門委員会が組織されている。

ISO規格(1)

機械振動、衝撃および状態監視・診断関連のISO規格は多数あるが、ISO機械状態監視診断技術者(振動)の知識として必要な規格について概要を述べる。関連するISO規格をまとめたものが表1、2であり、大別すると以下のような分類となる。

(1)機械振動と衝撃」に関する用語

機械振動と衝撃に関する用語であり、振動と衝撃に関する一般的な用語を定義している。

(2)試験方法

振動や衝撃の測定に利用される加速度計の設置方法に関する注意事項の説明と規格が記載されている。

(3)回転機械のつりあわせ

回転機械のつりあわせに関する規格であり、用語集と剛性ロータの釣合い良さの基準が規定されている。

(4)機械振動の測定と評価

この規格では、機械振動の測定方法、測定位置、振動に対するシビアリティ(Severity)の考え方、それを用いた振動値の評価基準が定義されており、非常に重要な規格である。また、往復動回転機械に適用する場合の一般的な条件と手順も規定されている。

以前はISO7919シリーズを代表とする「非往復動機械の回転軸において測定された機械振動の評価基準」とISO10816シリーズを代表とする「非回転部にて測定された機械振動の評価基準」があった。ISO7919シリーズは、非往復動回転機械における回転軸における相対軸振動および絶対軸振動の測定とその評価基準に関する規格で、機械の種類毎の評価基準が存在した。また、ISO10816シリーズは、軸受箱での振動測定と評価基準に関する規格であり、やはり機械の種類毎の評価基準が存在する。しかし近年、規格の便利性を重視し同種の機械に関してはISO7919シリーズとISO10816シリーズを統合した新たなISO20816シリーズに移行しつつあり、混在しているので注意を要する。

(5)特定の装置と機械に関する振動

この規格は、機械を構成する特定の装置や往復動内燃機関などの特定の機械に関するものである。能動型磁気軸受を装備した回転機械の振動関係についてもここに含めた。ほかに種々の特定機械に関する規格があるが、これらの規格は機械振動と衝撃を担当しているTC108ではなく、他のテクニカルコミッティ(TC)が担当しているものもある。

(6)状態監視および診断

機械の状態監視および診断に関する規格である。この規格は振動以外の各種プロセス・データも対象としており「機械の状態監視および診断」の全般に関わる規格である。これらの規格は表2に別途まとめて示す。あわせて状態監視資格認証者として知っておくべきカテゴリレベルも示す。

表1 ISO「機械振動、衝撃および状態監視」関連規格

 

表2 機械状態監視診断技術者が知っておくべき規格(ISO18436-2 附属書B 表B.1より記載・一部修正)

IEC規格(1)

ISO規格と密接な関係にある規格としてIEC(International Electrotechnical Commission)規格がある。IEC規格は特にモータなどの電気機械に関する規格が多く、振動規格についてはISOと協調して規格の制定を行っている。IECの振動関連規格はその性格上、そのほとんどは電気機械・機器に対する環境振動試験(振動載荷試験)に関する規格である。振動およびその監視に関する規格としては表3に示す三つがある。また、前述のようにISOとIECは密接に連携をとっており、振動関連規格についてはISOに従うことが基本となっている。

表3 IECの振動関連規格 (発行年は最新版)

API規格(1)

ISOやIECとは少し趣の異なる規格がAPI(American Petroleum Institute)規格である。API規格は本来、米国の国内規格であり、石油・化学産業分野に適用される規格である。しかし、石油・化学業界では石油メジャーに代表される米国資本が世界的に大きなシェアを占めているため、この分野では実質的な世界規格・標準と認知されている。API規格の中で、振動およびその監視に関する規格を表4にまとめる。API規格は大別すると各種回転機械毎の振動規格と機械保護装置(状態監視装置)の規格に大別される。

表4 APIの振動関連規格 (発行年は最新版)


参考文献

(1)振動技術研究会,ISO基準に基づく機械設備の状態監視と診断(振動 カテゴリーⅡ)


<正員>

榊田 均

◎元東芝
◎専門:機械力学、回転機械

 

<フェロー>

藤原 浩幸

◎防衛大学校 機械工学科 教授
◎専門:機械力学、回転機械

キーワード: