技術のみちのり
無人走行車が工場の景色を変える
2022 年度学会賞(技術)
「車両遠隔制御無人搬送システム」
トヨタ自動車(株)
開発のきっかけ
自動車業界では「CASE」と呼ばれる新領域での技術革新が進められている。
トヨタ自動車(株)は、CASE領域の技術を最大限に活用して、車両工場で量産車を無人で走行させる「車両遠隔制御無人搬送システム 」(RCD;Remote Control Auto Driving System)を開発した(図1)。
開発のきっかけは、トヨタ自動車 元町工場から始まる。新型BEVの量産開始にあたり問題を抱えていた。車の電動化により重量が増え、車両組立工場から検査工場まで車両を搬送するコンベアが使えなくなるのだ。そこで作業者たちは車を運転して検査工場まで運搬し、歩いて組立工場に戻るという単調な作業を繰り返さなくてはならなかった。作業者は車一台を運搬したあとは、次の車を運搬するためにスタート地点に歩いて戻る必要がある。作業者1人の歩行距離は1日あたり15kmにもなるという。この事態に会社では、どうにかして運搬作業を自動化できないかと模索していた。
同じ頃、同社の澤野は、工場での車の搬送作業に疑問を感じていた。「電動車には電池やアクチュエーターが搭載されているのに、なぜそれらの機能を使わないのだろう」と。澤野は常々、車内部と外部の技術開発が融合すれば新しい形が見出せるのではないかと考えていた。それは、すなわち、車を外部から無線でコントロールし、無人走行させる技術だ。
2019年頃、澤野は車の搬送作業にこのアイデアを使うことを会社に提案し、開発に挑戦することに対して了解を得た。
図1 RCDによる車両無人搬送の様子
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