特集 物理化学ナノ製造プロセスの最前線
レーザ照射を援用した高能率CMP(Chemical Mechanical Polishing)
はじめに
半導体製造に不可欠なCMPとパワーデバイス材料
半導体デバイス製造において必要不可欠なプロセスとして、研磨プロセスの一種であるCMP(Chemical Mechanical Polishing)が適用される。CMPは、化学反応を援用して対象基板の表層を改質し、機械的研磨と組み合わせることで超精密平坦化を実現する技術であり、1990年ごろに半導体の製造技術に採用され始めて以来、半導体の微細化に多大なる貢献をしてきた。機械的作用と化学的作用の相乗効果により、高能率・高精度な加工が可能であり、加工変質層のない無擾乱鏡面を創成できることが特徴である(1)。
近年、省エネルギー化を目指して、SiC、GaN、ダイヤモンドなどの半導体材料によるLEDあるいはパワーデバイスの実用化研究開発が盛んに進められている。パワー半導体では、オン抵抗を下げ、電力変換回路の電力損失を大幅に削減することが可能となるため、例えば、日本では総電力消費の約50%がモータで消費されていることから、各種モータやエアコンなどでインバータ化やインバータの高効率化を推進すると、多大なる省エネ効果が期待できる。
当然のごとく、これら次世代デバイスの製造プロセスへのCMP技術適用拡大は不可避となっており、その高能率研磨は大きなトピックスとなっている。これらのパワーデバイス材料は、結晶欠陥の少ない結晶成長法が開発されてきてはいるものの、その有用な性能の裏返しとして、加工の長時間化がネックとなる。すなわち、非常に高硬度であるため、加工対象としてみた場合には典型的な超難加工材料となる。特に平坦化を行う研磨加工では高い加工能率が得られず、加工に長時間を要し、これが製造コストの削減・製品品質の維持への障壁となっている(2)。その高能率研磨のアプローチとして、強酸化剤を利用する方法、プラズマ加工を利用する方法、触媒エッチングを利用する方法、紫外線照射を援用する方法、溶融アルカリを利用する方法など、多岐にわたるアプローチが試みられており、精力的に研究が行われている。
ここでは、一つの試みとしてフェムト秒(femtosecond, fs)レーザ照射を援用し、これら難加工材基板への前処理を施すことで、CMPの高能率化を目指した事例を紹介する。
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