やさしい制御工学
第7回 離散時間表現と z 変換:デジタル制御系への実装
1 離散時間システム
デジタル制御系においては、コンピュータがある時間間隔ごと(たとえば数百~数千分の1秒ごと)にセンサ情報を取得し、それをもとに演算を行い、その結果をアクチュエータへの指令値として送信する。このようなシステムを離散時間システムと呼び、その時間間隔をステップ時間あるいはサンプリング周期などとよぶ。連続時間システムにおける時刻は実数(通常は非負の実数$t$)で表す。それに対して離散時間システムにおける時刻は整数(通常は非負の整数$k=0,1,2,\cdots$)で表す。ステップ時間を$T$とすると、離散時間システムの時刻$k$と連続時間システムの時刻$t$は$t=kT$で対応付けられる。
制御工学の知識の多くは連続時間表現(微分方程式やラプラス変換)を用いて表現される。微分や積分は「短い時間間隔」を$0$に近づけたときの極限を用いて定義するが、離散時間システムでは無限に短い時間間隔を考えることができないため、微分や積分をそのまま使うことはできない。そのため、連続時間表現で記述される理論や手法を、適切な近似で離散時間表現に変換し、デジタル制御系に実装するためのアルゴリズムを構築する必要がある。アルゴリズムの多くは差分方程式の形で表現される。連続時間表現から差分方程式表現への変換のための強力なツールとして、$z$変換と呼ばれる手法がある。
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