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2023/7 Vol.126

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特集 宇宙産業の成長と展望

イノベーション創出に向けたJAXA「J-SPARC」の取組み

伊達木 香子(宇宙航空研究開発機構)

はじめに

宇宙開発利用に関わる状況

国立研究開発法人である宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙開発事業団、宇宙科学研究所および航空技術研究所の機関の統合により2003年に設立され、政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的実施機関として宇宙・航空分野の基礎研究から開発・利用に至る研究開発を行っている。設立以降の時期は、経済社会情勢の変化や技術の進展を受けて、宇宙開発利用に対する社会環境は変革期にあり、政府の新たな政策や法整備が進められている時期と重なる。2008年の「宇宙基本法」の制定以降、2016年には宇宙2法(「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」及び「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律」)、2017年には宇宙産業ビジョン(宇宙政策委員会)、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」の改正、2021年には「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」など、政府の施策において日本の産業・経済の成長に宇宙の利用が進められているところである。

日本の宇宙開発の歴史は60年を超えると言えるが、これまで宇宙開発といえば国が主導する巨大プロジェクトであったところ、2000年代に入って以降、宇宙活動の世界的な活発化が進み、民間が主導する宇宙の開発・利用も拡大してきた。米国での民間企業の躍進が、宇宙開発に必須となる打上げ価格の低減や高頻度化を可能にし、それが技術の成熟や高度化とも相乗効果となりペイロード側の小型化や価格低減などの好サイクルを生み出していると考えられる。民間企業のなかでもNew Spaceと呼ばれる宇宙ベンチャー企業やこれまで宇宙分野に進出していなかった企業は、小型衛星や小型ロケット、宇宙デブリの除去や、衛星データを利用したソリューション提供などへの参入を進め、宇宙ビジネスが次々と生まれている。既に宇宙システムが経済・社会のなかに組み込まれて利用されるなか、宇宙技術を地上の課題解決やビジネスにつなげるべく、宇宙に拡がり、宇宙を使い、宇宙を楽しむ、経済社会活動を拡大し、我が国の国際競争力の強化、経済社会の健全な発展及び国民生活の向上への寄与にむけ、宇宙への期待が高まっている。

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