特集 複雑な流れ現象 -機械工学の視点から-
界面とイオンの関与する複雑輸送現象
はじめに
界面系の流体力学と物理化学
「バルクは神が創ったが界面は悪魔が創った」と言い残したのは物理学者のパウリであった。バルクでは密度などの熱力学量が均一な状態にあるがゆえ理論的取り扱いが簡便であるが、界面ではそれらが不均一であることが大前提であり、それゆえ理論的な扱いが極度に難しくなる。一方、身の回りにはさまざまな界面が溢れており、そこでは滑り、潤滑、摩擦、分子やイオンの吸着、相変化や化学反応といったさまざまな現象がダイナミックに起きている。このような界面系の機能性を生かしてコロイド系や電池といった多くの化学製品が生み出されており、応用研究や実験研究が非常に盛んな分野でもある。界面科学が多くの研究者を魅了しつづけ、今もなお研究のフロンティアであるのも頷けるであろう。
そのような界面系における流体力学と物理化学を専門とする筆者は、機械工学における諸問題についても分野の壁を越えて興味を持っている。本稿では、筆者がごく最近取り組んだ二つの話題(1)(2)について紹介させていただく。
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