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2023/6 Vol.126

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特集 複雑な流れ現象 -機械工学の視点から-

微生物遊泳と壁の協奏現象:個と集団の制御

西口 大貴(東京大学)

微生物の遊泳挙動

低レイノルズ数に現れる困難と微生物の遊泳の面白さ

顕微鏡下で懸命に泳ぎ回る微生物の姿は、古くから多くの人々を魅了してきた(少なくとも筆者は大好きである)。例えば、モデル生物として使われる大腸菌や枯草菌などの典型的なバクテリアの場合、体長は約2~5 µm、直径は1 µm弱、遊泳速度は20 µm/s程度であり、レイノルズ数は10-5程度に相当する。このような低レイノルズ数の世界で生きるバクテリアなどの微生物の挙動は、線形のStokes方程式により記述できる(1)

低レイノルズ数の線形な世界に、数理や工学の観点から面白いことがあるのか疑問に思う読者もいるかもしれない。しかし、このような線形の流体方程式に支配される世界においても、たとえ単純であっても解けない状況や、バクテリアのアクティビティに由来する追加の非線形性によりカオス的な挙動が現れることがある。そのため、微生物の遊泳挙動は見た目に面白いだけではなく、理論的にも興味深い構造をはらんでいる。

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