特集 複雑な流れ現象 -機械工学の視点から-
速度分布計測を基にした複雑流体のレオロジー物性評価と流れの予測
はじめに~新たな実験流体力学に向けて~
混相流体のレオロジー物性評価
日進月歩、高度化する数値計算技術の裏側で、流体理工学の実験研究を生業とする自分が何をすべきか考えてきた。これまで取り組んできた単相流体の乱流遷移問題は、一時の熱狂的な時期は過ぎ去り、誤解を恐れずに言えば、収束に向かいつつあるように感じる。一方で、気泡流や懸濁液などの混相流体の流動については、入出力関係をブラックボックス的な経験式で表す古くからの研究スタイルを脱し、今まさに流体科学として、実験、理論、数値計算の多方面から充実した研究が行われている。流れの遷移研究へも拡張され、数値計算による容易なアクセスを許容しない、複雑流体の複雑流動は実験研究のフロンティアとなっている。
本研究開発のきっかけとなったのは、気泡を用いた摩擦抵抗低減技術(1)における、気泡流のレオロジー的取扱である。乱流境界層中で非定常なせん断を受ける気泡群の応答をレオロジー物性の変化として表す。懸濁液の実効粘度については、アインシュタインのコロイド分散体に関する研究(2)から100年の歴史を持ち、気泡群への拡張(3)や変形の考慮(4)~(6)、多分散系(7)や非定常せん断の影響(8)など、発展を続けてきた。その一方で、提案された構成則の検証やモデル定数の決定など、不均質な流体に対する実験評価方法の欠如が現在、研究をさらに先へ進める上でのボトルネックとなっている。
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