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2023/5 Vol.126

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ムーンショット目標3:2050年AIとロボットの研究

一人に一台一生寄り添うスマートロボットAIREC(アイレック:AI-driven Robot for Embrace and Care)

菅野重樹(早稲田大学)

はじめに

本研究開発プロジェクトでは、ムーンショット目標3の人・ロボット共生社会を実現するために、AI・ロボット・社会実装のチームにより、接客や家事はもとより、人材不足が迫る福祉・医療などの実世界の現場で、多様な高難易度の物理作業で人間をサポートし、さらに自らの身体から生まれる情動を持って人間と豊かな情緒コミュニケーションを行う、一人一台の汎用型スマートロボットAIREC (AI-driven Robot for Embrace and Care)の実現を2050年までの目標と設定している(図1)

このプロジェクトで設定している重要課題は、「ロボティクスの革新」、「AIの革新」、そして「社会ニーズ把握と実用化戦略」から構成される(図2)。特に、AIを「ソフトウェア」から「ソフトウェア+ハードウェア」として変革することに意義があり、プロジェクトではこれを「身体知(Embodied Intelligence)」と呼んでいる。環境とインタラクションする物理的な身体があるからこそ、AIは発展するとの考えである。このアプローチは、実体を重視する機械、ロボットなどの研究においては優位性があると言える。

具体的には、(1) AIとの統合を考慮した「体液(バックドライバブル油圧型アクチュエータ、自己修復材、冷却剤など)」の循環機構、すなわちこれまでのDry構造にWetの要素を加えたロボット身体の実現、(2) 深層予測学習による多様な物理作業の実現、またwet機構による身体調整から創発される「情動」によるコミュニケーション知能の革新、(3) 福祉・医療現場へのAIREC導入のための設計技術課題抽出および国際標準化とリスクマネジメントの策定、(4) ELSIや国際的視点から総合的にスマートロボットが受容可能な論理と社会性の導出とそれに基づくAIRECの設計・動作の生成・制御方法の確立を行う。

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