特集 学会横断テーマ「機械・インフラの保守・保全、信頼性強化」
インフラDXに向けての学会連携
コンソーシアムから期待する学会連携
「自動化・無人化、スマート化、ロボット、エネルギーハーベスティング、データサイエンス」、これらはインフラに関わる国家プロジェクトの最近のキーワードである。筆者が土木工学を始めた頃には想像できない総合的な分野、もはや専門分野とは言いがたい土木工学の現実がある。幸運にも、2020年度から筆者所属機関の公式組織として「インフラ先端技術コンソーシアム(1)」を発足でき、現在66機関、17法人の68名個人会員、33名の個人会員の賛同を得て、二期目の活動を実施している。コンソーシアムでは、橋梁、トンネル、ダムなど土木構造物に特異な先端技術を検討する分科会に加え、革新的な材料・センシング・データ解析技術についても検討する、先端MSD分科会を設けて活動を行ってきた。さらに、2022年度後半からは、先端MSDを拡張した先端DX分科会(図1)を組織し、新素材、i-Construction、センシング、デジタル化、データサイエンスなどに注力して活動している。このように土木分野に加えて機械、電気、材料など多岐にわたる異分野を巻き込んだコンソーシアムでは、分野を跨ぐ共通語に始まり、分野毎の秘密保持、知財権の考え方などさまざまな文化の違いを経験、克復してきた経緯がある。今後、コンソーシアム発の事業、協会、規格などが提案される予定であるが、一方で、これらの基盤を成す共通プラットフォームは現状ない。例えば、機械学会と土木学会、非破壊検査協会等が連携して取り組む事項に、学協会を横断した共通言語、規格の構築を挙げて頂きたい。さらに、各分野で得意とするサブジェクトを並べた融合的な学問体系構築、リスキリングを含めた教育など、異種学会連携には多くを期待したい。
図1 京都大学インフラ先端技術コンソーシアム
参考文献
(1) インフラ先端技術コンソーシアム, 京都大学大学院工学研究科,
https://citi.kuciv.kyoto-u.ac.jp(参照日2022年11月28日).
塩谷 智基
◎京都大学大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 特定教授
◎専門:維持管理工学、地盤・岩盤工学、材料工学、非破壊評価学