特集 学会横断テーマ「機械・インフラの保守・保全、信頼性強化」
学会横断テーマの企画活動を振り返って
筆者は材料損傷、劣化を検出するための非破壊検査と安全工学を研究領域としており、2018年度の産業・化学機械と安全部門の部門長を務めていた。これらのことから、当時の副会長の長岡技術科学大学の井原郁夫教授から2019年度の年次大会の理事会企画「機械・インフラの保守・保全、信頼性強化」の企画チームにお誘いいただいた。筆者が所属する産業・化学機械と安全部門は日本機械学会の他部門に比べ、大変小さい部門であり、常に他部門との連携が求められていた。したがって、産業・化学機械と安全部門にとっても大変ありがたく思うとともに、日本機械学会に微力ながら最大限貢献したいという思いで活動をしてきた。この4年間で企画した内容の詳細は他の記事に譲るとして、ここでは、企画概要とそれらに対して筆者が得た感想について述べる。
2019年度年次大会理事会企画OS「機械・インフラの健全性評価」のパネルディスカッションでは、年次大会会場の秋田大学の大教室が満員となり、今後の活動とその効果に大きな期待が持てる内容となった。しかしながら、その後、世界中および我が国に新型コロナウイルス感染症が蔓延して、その後の効果的な活動が難しい状態になったことは大変残念であった。2021年度の年次大会ではWeb開催で「機械・インフラの保守・保全、信頼性強化~DX社会は機械学会に何を望む?~」というテーマでパネルディスカッションを行い、Webでのパネルディスカッションという難しい状況であったが、2022年度の活動方針に関して一定の成果が得られた。
2022年度の年次大会では、学会内での部門連携の取組みについての議論をいっそう深化させるとともに、他学会連携についての検討も考慮して、学会横断テーマの開催趣旨について賛同が得られた8部門の部門長と土木学会から講演者を招き、それぞれの部門の特徴とシーズとニーズ、土木学会の連携活動についてご講演いただいた。8部門の部門長と土木学会の講演者から大変魅力的なご講演をいただいたが、各講演については他の記事に詳細が掲載されるため、ここでも産業・化学機械と安全部門の講演概要と筆者の感想について述べる。
産業・化学機械と安全部門では、新井裕之部門長にご講演いただき、筆者も現地で参加した。その後のパネルディスカッションでは、我々の活動分野、活動内容、シーズなどに複数の部門長からご興味をもっていただき、産業・化学機械と安全部門にとって、大変良い機会となった。さらに、8部門の活動分野と内容、シーズとニーズについて議論を行い、8部門の部門長からは概ね今回の企画と実施について好意的な評価が得られたと考えている。
この横断テーマの実施中は部門の行事が並行して実施されており、現地での聴講者が少ないことは大変残念であった。次回、同様な行事を実施することがあれば、開催趣旨にご賛同して頂ける部門の合同行事として位置づける必要があると感じた。さらに、個人的には、土木学会所属の名古屋大学の中村光教授にご講演いただいた、土木学会と日本建築学会の協働の取組みは内容も協働関係を構築する仕組みも大変興味深いもので、日本機械学会が見習う必要があると感じた。
以上のように、テーマリーダーの井原郁夫教授の卓越したリーダーシップのお陰で、2019年度から2022年度まで学会横断テーマに関する活動を実施し、一定の成果が得られた。また、3回のパネルディスカッションでは東京工業大学の井上裕嗣教授にモデレーターを務めていただき、Web、対面開催ともに見事に纏めていただいた。しかしながら、同時に伝統があり、かつ巨大組織である日本機械学会の部門連携は容易でないことも強く感じた。今後もこのような活動が必要であることは多くの方々にご賛同いただけると思う。最後に、本企画チームの一員として貴重な機会をいただけたことに感謝申し上げる。
<正員>
笠井 尚哉
◎横浜国立大学大学院環境情報研究院 准教授
◎専門:材料損傷評価、非破壊検査、安全工学