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2022/12 Vol.125

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特集 学会横断テーマ「未来を担う技術人材の育成」

学会横断テーマ「未来を担う技術人材の育成」活動報告

山本 誠(東京理科大学)

はじめに

日本機械学会では、2016年(第94期)に創立120周年に向けて「新生『日本機械学会』の10年ビジョン」(1)を策定し、このビジョンの実現のため、2020年度(第98期)に下記の4つの「学会横断テーマ」を設定した(2)

・少子高齢化社会を支える革新技術の提案

・持続可能社会の実現に向けた技術開発と社会実装

・機械・インフラの保守・保全と信頼性強化

・未来を担う技術人材の育成

第4のテーマ「未来を担う技術人材の育成」は、本会としてどのような人材を育成すべきなのかを明確にして、そのために何をすべきかのグランドデザインを描き、それに向けたアクションを検討することを目的として設定された。2019年度に会員部会が特別員を対象に実施したアンケート調査の結果、法人会員の8割が「基礎講座の必要性を感じている」という回答があり、人材育成に関して課題を抱えていることが明らかとなったことも一因となっている。筆者は「未来を担う技術人材の育成」のテーマリーダーを仰せつかり、人材育成・活躍支援委員会の委員およびオブザーバーとともに、これまでの3年間でさまざまな人材育成に向けた施策を企画・実現してきた。

本特集は、人材育成(教育)の変貌、これまでの人材育成・活躍支援委員会の活動、年次大会で毎年企画している人材育成ワークショップおよび日本技術士会との共催セミナーの講師を務めていただいた6名の有識者からの講演内容のご寄稿、関東支部シニア会に企画・運営していただいている「エンジニア塾」の紹介から構成されている。

社会情勢の変化とともに人材育成も進化が求められている。本特集が会員諸氏のキャリア形成、新たな人材育成方法の開発などの参考となれば幸甚である。

人材育成の変貌

人材育成の歴史的変遷

日本の近代的な教育は、1872年(明治5年)に学制が公布され、小学校から大学校に至る教育制度の確立が行われたことに始まる。より良い(政府にとって?)日本人を育成して国力を増進するため、外国からの知識を覚え込ませる知識偏重型の「読み・書き・そろばん教育」が行われた。このタイプの教育は、18世紀から19世紀初頭(江戸時代)に産業革命・大量生産・大量消費を支える人材育成を目的としてプロイセン(現在のポーランドからリトアニア付近)で確立されたため、「プロイセン型教育」と呼ばれている。

一方、第2次世界大戦以前は、帝国大学や陸海軍を中心として、人格育成(ノブレス・オブリージュ)を含むエリート教育が行われた。しかし、大戦後は米国から導入されたリベラルアーツ教育の影響と大学進学率の上昇・大学の大衆化によってエリート教育の影は薄くなった。

大正時代に自由主義的な教育が流行したが定着することはなく、1990年代に始まった「ゆとり教育」も失敗に終わり、最近まで知識偏重プロイセン型教育が続いてきたことは周知の通りであろう。

明治維新から高度経済成長期までの欧米に追い付くことが最重要課題であった時代には、知識偏重プロイセン型の大人数教育は社会・国家が求める人材を効率的に育成できたものと考えられる。

21世紀の社会変化

しかし、21世紀に入って社会は大きく変化している。Society5.0(3)、IoT、デジタル・ツイン、デジタル・トランスフォーメーション(DX)といった用語の氾濫に見られるように、現代はデジタル技術を活用した情報化社会となっており、今後、この動向はさらに勢いを増すことが予想されている。PCやスマートフォンといった電子機器を生まれたときから利用している子供たちに、電子機器のなかった時代の教育方法を押し付けるのは理不尽と多くの人(特に、子供たち)は考えるではないであろうか。

2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択され、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す」という国際目標「SDGs」(4)への積極的な対応も国として迫られている。SDGsは、17のゴール(大目標)、169のターゲット(個別目標)から構成されている。また、2020年10月に当時の菅義偉首相が「2050年を目途に、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という脱炭素社会への所信表明を行った。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量「実質ゼロ」を目指す「脱炭素社会」の実現も分野横断的に国全体で取り組まなければならない喫緊の課題である。

いずれの課題も国際的かつ分野横断的な対応が必要となっており、従来型の専門分野に閉じこもった知識偏重型教育により育成された人材だけでは対応が困難であろうことは想像に難くない。

また、岸田文雄首相は2022年9月に、ニューヨーク証券取引所(NYSE)において講演し、日本企業にジョブ型の職務給中心の給与体系への移行を促す指針を2023年春までに官民で策定することを明らかにした(5)。専門的なスキルを給与に反映しやすくして労働移動を円滑にし、日本全体の生産性向上や賃上げにつなげる狙いがあるとのことである。これまでの年功序列型雇用から欧米型のジョブ型雇用への移行は、労働者や企業にとって極めて大きな変化であり、労働者のキャリア形成や企業の人材育成に大きな変革をもたらすことが予想されている。

さらに、2018年6月の「働き方改革法案」の成立、2019年4月の「働き方改革関連法」の施行、2021年4月の70歳就業法(改正高年齢者雇用安定法)の施行、週休3日制の導入促進など、労働環境に関する改革が次々に進められており、労働環境の変化に伴う人材育成の変化も必要と考えられる。この辺りの状況は機械工学年鑑2022「2. 人材育成・工学教育」で解説してあるので、興味のある読者は参照していただきたい(7)

以上のような21世紀になって顕著となってきた社会や労働環境の変化の中、機械技術者はどのような能力・スキルを身に付け、どのように活躍の場を求めて行くべきなのだろうか。従来型の知識偏重教育に基づく人材育成では対応が困難かつ非効率なことは明白であるが…。

人材育成の基本

上述のように社会や労働環境が大きく変化している現状ではあるが、人材育成において押さえておくべき基本は普遍的であるように思われる。本章では、筆者の独断ではあるが、人材育成の基本事項について紹介しておく。

学習の3要素

文部科学省は、教育の質向上のため、10年ごとに学習指導要領の改訂を行っている。2017・2018・2019年(平成29・30・31年)改訂学習指導要領「生きる力」(6)では、学習の3要素として以下を示している。

(1)学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養

(2)生きて働く知識・技能の習得の涵養

(3)未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力、何ができるようになるか等の育成

従来の教育では(2)の知識・技能に重点が置かれていたが、(1)の学びに向かう力・人間性を筆頭に、(3)思考力・判断力・表現力を加え、バランスの良い人格形成という視点で学習を捉えていることが明らかである。

図1に学習観の変化を示す。知己集約型プロイセン教育では知識・技能を覚えさせることが重視され、思考力等や主体性等については生徒・学生の個人的努力に任されていたが(エリート教育を除く)、新たな学習指導要領では3要素がバランス良く配慮されており、教育の中でこれらの能力が涵養されるように配慮されている。

人生における成功には、知能指数(Intelligence Quotient、IQ)ではなく、心の知能指数(Emotional intelligence Quotient、EQ)の方が重要と言われるが、主体性を身に付けることは人生をより幸せに生きる鍵になるのではないだろうか。今回の学習指導要領の改訂において主体性・人間性が強調されたことは、将来の人材育成にとって希望を与えているように感じられる。

ちなみに、全米教育協会が発行する米国の公立学校向けガイド「An Educator’s Guide to the “Four Cs”」(教育者向けの4Cガイド)では、21世紀型スキルとしてCommunication(コミュニケーション)、Critical thinking(クリティカル・シンキング)、Collaboration(コラボレーション)、Creativity(創造性)の4Cに関する能力を重視した教育が重要であると謳っている。21世紀は、世界的に見ても、従来型の読み・書き・そろばん教育から4C能力を有した人材育成への転換が求められる時代になったと言えよう。

(a) 知識集約型プロイセン教育の学習観

(b) 学習指導要領「生きる力」の学習観

1 学習観の変化

内化・外化・内化の重要性

教育学において、「内化」とは、読む・聞くなどを通して知識を習得し、学習後のふり返りなどを通して理解を深めること、「外化」とは、書く・話す・発表するなどの活動を通して、知識の理解や頭の中で思考したことを表現(可視化)することを意味する。

図2は、米国国立訓練研究所が提唱する学習の定着率をイメージ化したもので、ラーニング・ピラミッドと呼ばれている。パーセンテージはまったく根拠がないそうだが(9)、この学習定着率の順番には直感的にあるいは教育経験上うなずけるものがある。ラーニング・ピラミッドの下部三つはアクティブ・ラーニングと呼ばれ、外化を重視した教育手法となっていることが興味深い。

2018年度年次大会「教育維新?~大学教育はどこへ向かうのか?~」において講師を務めていただいた森朋子先生(現・桐蔭横浜大学)は、次のような主張をされている(10)。アクティブ・ラーニング型授業の多くは、十分に思考する間もなく外化が求められ、形だけの外化になっており、内化を十分にとった外化が重要である。また、外化をおこなって「分かったつもり」になった知識をふり返りなどで確認し、「完全に分かった」にする外化から内化のプロセスも大切である。したがって、教育には内化・外化・内化の学習サイクルが重要であり、このサイクルを組み込んだ反転授業が望ましい。

講義での学生の反応が良く、理解できているなと感じた内容を期末テストで確認してみると、まったく分かっていなかったというようなことは、大学教員なら何度も経験しているのではないだろうか。学習者の深い理解に内化・外化・内化のプロセスが必要なことが重要であると言えよう。

2 ラーニング・ピラミッド

主体性を引き出す方法

心の知能指数EQを高めるためには、生徒・学生・若者の主体性を引き出すことが肝要である。聞く気のない学習者にいくら高尚な内容を教えても、吸収する意欲を持たない以上は何の効果もないであろう。主体性を発揮させるために、ほめて育てる教育、叱って育てる教育、叱った後にほめる教育、何も教えない教育(放任主義)(ちなみに、筆者の博士課程時代は完全な放任主義であった)など、さまざまな教育論が提案されているが、真理は下記の論語の一文に凝縮されているのではないだろうか。

子曰く、これを知る者はこれを好む者に如しかず。

これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。

何かを学び始めた頃は、慣れないこともあって苦痛が多いのが普通であろう。しかし、内化・外化・内化を繰り返すことにより徐々に理解が進んでくると、その学びが好きになってくる。さらに理解が進むと、学ぶことが楽しみとなり、他者から強制されなくても、自ら学ぶようになる。このような「楽しむ」段階になれば、主体性が完全に身に着いた状態と言える。学習者にいかに楽しむようになってもらうか、そこが人材育成の鍵であると言えよう。恐らく、教育にとっての永遠のテーマであろうが…。

活動報告

本章では、学会横断テーマが設定されて以来3年間で企画・実施した活動について順不同で紹介する。

講習会の見える化・パッケージ化・出前講習会

本会では、部門・支部の主催で年間400件を越える講習会・セミナーが毎年開催されている。しかし、開催が部門や支部に任されていたため、いつ・どこで・どのようなレベルの講習会が開催されるのか、その全体像を把握することができなかった。そこで、部門・支部のご協力のもと、開催予定の講習会を基礎と応用に分類し、まとめて閲覧できる「対象レベル別、分野別 講習会リスト(基礎編)」「対象レベル別、分野別 講習会リスト(応用編)」というホームページを開設した(11)(12)図3に基礎編トップページのスクリーンショットを示しておく。

基礎編は4力学、設計技術、生産技術、e-learning、応用編は計算力学、計測技術、設計技術、生産技術という小分類を設け、受講を希望する技術者が講習会を選択しやすいように配慮してある。また、リストアップされた講習会は開催案内のページにリンクが張られており、講習会タイトルをクリックするだけで講習会の詳細を直ぐに見ることができる。

現在、基礎編に30件、応用編に31件の講習会がリストアップされており、リストを充実させていく予定である。また、このリストを使って、企業における出前講習会のニーズを郵送アンケートにより調査中である。ニーズが明確になれば、出前講習会の講師を紹介する事業につなげたいと考えている。

さらに、経営企画委員会・技術者継続教育検討 WGにおいて、講習会のパッケージ化が検討されており、人材育成・活躍支援委員会と情報共有を進めながら、各部門が目標とする人材となるために、どのような講習会を受講すべきなのかを例示していく予定となっている。

講習会への参加を希望される方や企業の人材育成部署の方は、本会ホームページの「イベント・事業」からこのリストを閲覧できるので、是非参考にしていただきたい。

3 対象別・分野別 講習会リスト

年次大会での啓発活動

人材育成・活躍支援員会では、毎年開催される年次大会において、人材育成などに関する啓発を行うため、人材育成・活躍支援に関する特別企画(ワークショップ)を実施している。

過去3年間のテーマおよび講師を以下に列記する。

2020年度:SDGsが目指す社会と新たな教育

(1)「SDGsの達成に向けた教育の役割」 橋本賢二(人事院)

(2)「SDGs時代のグローバルリーダーの育成」 藤本雅則(金沢工業大学)

(3)「SDGsを達成するためのオンライン授業」 渡辺雄貴(東京理科大学)

(4)「SDGs時代の学生に必要なキャリアオーナーシップ」 小倉直樹(ベネッセアイキャリア)

2021年度:アフターコロナにおける大学教育の質保証

(1)「教育システムの質保証(1): JABBE」 三田清文〔日本技術者教育認定機構(JABEE)〕

(2)「教育システムの質保証(2):大学基準協会」 松坂顕範 (大学基準協会)

(3)「卒業生の質保証(1):ルーブリック&ポートフォリオによるアセスメント」 山田貴博(横浜国立大学)

(4)「卒業生の質保証(2):テスト問題バンクによるアセスメント」 深堀聰子(九州大学)

2022年度:DX時代に求められる機械技術者像

(1)「我が国の大学における技術者教育の経緯と課題」 小澤守(関西大学)

(2)「これからのエンジニアに求められる専門職としてのコンピテンシー」 岸本喜久雄(日本工学会)

(3)「東京理科大学におけるデジタルツイン人材の育成に向けた試み」 松尾裕一(東京理科大学)

(4)「DX時代の今こそ見直そう、機械屋の価値」、有坂寿洋(日立アカデミー)

毎回、9:00から12:00の時間枠に収まらない熱い議論が行われ、参加者から概ね好評を博している。ただし、毎回の参加者が50名程度と少ないため、来年度のワークショップではより多くの方々に参加していただけるよう魅力的な企画を検討している。

また、2022年度は、技術士会との共催により「ジョブ型社会における働き方~機械系技術者のキャリア形成~」と題するセミナーをハイブリッド形式で開催した。

講演テーマおよび講師を以下に列記する。

(1)「ジョブ型社会への変化、今後の働き方、求められる人材」 橋本賢二(人事院)

(2)「技術者に求められるスキルの証明~継続研鑽および機械系技術者の視点から~」 小林政徳(小林政徳技術士事務所)

(3)「計算力学技術者の社会的地位向上と質保証-めざせ「CAE技術者認定」!」 店橋護(東京工業大学)

(4)「技術士に相応しいコンピテンシーの向上について-めざせ「技術士」!」 飯島晃良(日本大学)

(5)「CAE技術者にとっての技術士資格-計算力学技術者および技術士の活躍事例紹介」 園田義晴(トヨタ自動車)

ジョブ型(ジョブディスクリプション型)雇用への転換を図る企業が拡大するなど、技術者の働き方が大きく変わっていくことが予想されている現状を踏まえ、技術者としてのコンピテンシー、スキルの向上とその継続研鑽(CPD)がいっそう重要になると考えられている。本セミナーでは、「ジョブ型社会における働き方」をテーマに、ジョブ型社会と技術者資格(特に機械系の)を中心に、機械技術者のキャリア形成について活発な議論が行われた。

来年度以降も同様のセミナーを開催する予定であるので、多くの会員に参加いただけることを期待している。

なお、ご講演いただいた一部の講師から講演内容をご寄稿いただいているので、後述される原稿をご一読いただけると幸いである。

社会への提言・メッセージ発信

本会では、「日本機械学会提言の取扱い規定」に基づき、人類社会の発展と安寧および福祉の向上に資すること、ならびならびに国の科学政策・事故への事前警鐘や事故対策・法令規則の制定などに対して日本機械学会としての見解を社会に発信することができる。2002年から現在までの20年間に、6つの提言が出され、ホームページの「学会案内」の「提言」に掲載されている(13)。2021年に「2050年温室効果ガス排出実質ゼロを達成するための提言」が発信されたが、7年ぶりの提言であり、本会の存在意義を高め、社会貢献するためには、より活発な提言の発信が求められている。

人材育成・活躍支援委員会においても、人材育成に関する提言の発信をひとつの目標としている。これまでの検討において、提言テーマとして、小中学生の理科(特にもの作り)離れ、高校生・大学生に対する工学系キャリア情報の不足、高大・大社接続教育、若手・女性技術者・研究者のキャリア支援、機械技術者の学び直し教育、シニアの初中等教育への貢献、若手企業人の学会離れなど計22の課題を抽出した。

この検討結果を提言に結びつける第一段階として、「産業界の皆様へ『学会に参加しませんか』」という若手企業人に学会の魅力を伝え、学会離れを防止するとともに新規入会を促すメッセージをホームページに掲載した(14)

今後、社会に向けた提言の検討を継続し、より多くの提言に結びつけることを考えている。

インターンシップの学会枠設置

現在、多くのインターンシップがOne-day Internshipなど単なる会社説明会になってしまっている。この状況を改善し、長期インターンシップの活性化とともに、学生員・特別員のメリットを向上するため、学会がインターンシップ受け入れ希望の特別員企業を募り、学生にインターンシップ内容などを紹介する制度を2021年度に企画し、2022年度から実施に向けた活動を行っている。対象となるのは、畠山賞や卒業研究発表会で優秀講演賞を受賞した優秀な大学院生としている。

現在、特別員企業からインターンシップに関する情報を集めている段階であり、冬季開催のインターンシップに向けて学生への紹介を行っていく予定である。

子供たちの関心を引くキャリアパスの作成

技術がブラックボックス化し、子供たちが機械に触れることがほとんどなくなっており、理科離れの一因となっている。

中学生・高校生に向けて、進路を選択する際の指標となり、機械工学のイメージがつかみやすくなるキャリアマップを作成し、学会ホームページ「機械系に進む中高生を応援!!」の中の「機械系キャリアパス」に掲載した(15)

図4にキャリアパスの一例を示す。

4 機械系のキャリアマップ(部分)

また、若手の会およびLadies’Association of JSME(LAJ)のご支援を得て、19名の若手会員から中学生・高校生への一言メッセージを集め、「機械系の仕事の魅力」としてホームページに掲載した(16)

現在、これらのホームページを有効活用し、機械系のキャリア・イメージを小中高校生に周知するための方策について検討中である。

小中高校生向けイベント企画

小中学生の理科・もの作り離れを防ぐため、またジュニア会友へのサービス向上の一環として、年間を通して「もの作り」に触れる機会(年数回)を継続的に提供すべく、関東支部シニア会のご協力のもと、「エンジニア塾」を2021年度から開催している。エンジニア塾に関しては、実施責任者の中山良一先生にご寄稿いただいたので、後述される原稿を参照していただきたい。

技術相談プロセスの整備

本会では、経済産業省からの支援を受けて、企業などからの技術相談をこれまで実施してきたが、周知が十分でなく、有効に利用してもらえなかった。

このため、より多くの技術者や企業に利用していただけるよう、部門・支部・シニア会などにご協力いただいて技術相談のプロセスを見直し、体制の整備を行った。本会ホームページの「技術相談」(18)に申込み方法を記載してあるので、技術課題を抱えている方は遠慮なく相談していただきたい。

テスト問題バンクの普及

機械系大学卒業人材の質保証(アセスメント)のため、国立教育政策研究所の主導により進められている「テスト問題バンク」(17)の普及および有効活用方法について検討している。

このテストは、材料力学、流体力学といった分野ごとの専門知識を個別に問うのではなく、機械工学系学科において学修したさまざまな内容を総合的・複合的に応用できるか否かを問う形式となっており、卒業生の真の実力を見極めることができるように構成されていることが特徴となっている。テスト問題バンクの詳細については、深堀聡子先生にご寄稿いただいているので、後述の原稿を参照いただきたい。

2023年3月には、「これから時代を担うエンジニアの育成に必要なこと(仮題)」を開催予定であり、テスト問題バンクの取り組みだけでなく、国際的な工学教育の動向、チューニング(欧州高等教育圏を実質化させるためのプロジェクト)の現状、初期専門能力開発(Initial Professional Development、IPD)などに関して情報交換し、総合的に議論することを目指している。ご興味のある方は、本セミナーにご参加いただければと思う。

おわりに

以上、簡単に現時点での活動・検討状況を報告したが、読者の人材育成の一助となれば幸いである。学会横断テーマとしては一旦終了となるが、人材育成・活躍支援委員会として問題意識を引継ぎ、人材育成に関連した活動を継続・発展させていく予定である。なお、いずれの活動も会員諸氏のご支援が必要であり、人材育成・活躍支援委員会を通じて、今後いっそうのご協力をお願いする次第である。今後とも、何卒、よろしくお願い申し上げる。

最後に、本学会横断テーマの遂行に尽力いただいた人材育成・活躍支援委員会のメンバーを列記し、心より感謝の意を表する。

委員:川島豪(神奈川工科大学)、岸本喜久雄(東京工業大学)、小林正生(IHI)、小西義昭(KoPEL 小西技術ラボ)、齊藤修(IHI)、笹谷英顕(ささけん技術事務所)、城野政弘(大阪大学)、鈴木宏昌(東京都立産業技術高等専門学校)、中山良一(工学院大学)、長谷川浩志(芝浦工業大学)、本阿弥眞治(東京理科大学)、横野泰之(東京大学)、オブザーバー:村上 俊明


参考文献

(1) 大島まり, 新生「日本機械学会」の10年ビジョン, 日本機械学会,https://www.jsme.or.jp/kaisi/1178-04/ (参照日2022年9月30日)

(2) 川田宏之,「学会横断テーマ」への期待,日本機械学会, https://www.jsme.or.jp/kaisi/1225-01/(参照日2022年9月30日)

(3) Society 5.0, 内閣府https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html (参照日2022年9月30日)

(4) SDGsとは?17の目標ごとの説明, 事実と数字, 国際連合広報センター, https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/31737/(参照日2022年9月30日)

(5) ジョブ型へ移行指針, 官民で来春までに策定 岸田首相, 日本経済新聞, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2328K0T20C22A9000000/(参照日2022年9月30日)

(6) 学習指導要領・生きる力, 文部科学省, https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm(参照日2022年9月30日)

(7) 2.人材育成・工学教育, 機械工学年鑑2022, 日本機械学会, https://www.jsme.or.jp/kikainenkan2022/chap02/(参照日2022年9月30日)

(8) An Educator’s Guide to the “Four Cs”, Future Focused Learning, https://blog.futurefocusedlearning.net/an-educators-guide-to-the-four-cs(参照日2022年9月30日)

(9) Tales of the Undead…Learning Theories: The Learning Pyramid, ACRLoghttps://acrlog.org/2014/01/13/tales-of-the-undead-learning-theories-the-learning-pyramid/(参照日2022年9月30日)

(10)森朋子, 溝上慎一, アクティブラーニング型授業としての反転授業 理論編, (2017), 全185ページ

(11)対象レベル別, 分野別 講習会リスト(基礎編), 日本機械学会https://www.jsme.or.jp/event_project/basic/ (参照日2022年9月30日)

(12)対象レベル別, 分野別 講習会リスト(応用編), 日本機械学会https://www.jsme.or.jp/event_project/advanced/ (参照日2022年9月30日)

(13)提言, 日本機械学会https://www.jsme.or.jp/about/about-jsme/proposal/ (参照日2022年9月30日)

(14)産業界の皆様へ『学会に参加しませんか』, 日本機械学会https://www.jsme.or.jp/human-resources-support/message (参照日2022年9月30日)

(15)機械系キャリアパス, 日本機械学会https://www.jsme.or.jp/career-mech/careerpath/(参照日2022年9月30日)

(16)機械系の仕事の魅力, 日本機械学会https://www.jsme.or.jp/career-mech/rolemodel/ (参照日2022年9月30日)

(17)Tuning テスト問題バンクについて, Tuning テスト問題バンクhttps://www.me-testbank.org/ (参照日2022年9月30日)

(18)技術相談, 日本機械学会https://www.jsme.or.jp/human-resources-support/consultation (参照日2022年9月30日)


<フェロー>

山本 誠

◎東京理科大学 工学部 機械工学科 教授

◎専門:数値流体工学

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