特集 超音速で飛ぶ世界
水素航空機向けコア技術開発
はじめに
航空機におけるCO2削減の動向
地球温暖化の影響による気候変動を抑制するために世界中の国々で脱炭素の動きが強まりつつあり、アメリカ、ヨーロッパ各国、および日本は2050年までにカーボンニュートラルの達成を目標に掲げている。
航空機においても国際的なCO2削減の指針は以前から存在していたが、各国政府が脱炭素に対する目標を示し始めたことで、CO2削減の一手段としての水素航空機の議論がより具体化してきた。
航空機における環境規制をめぐっては、国際民間航空機関(ICAO)が2013年に「燃料効率を年2%ずつ改善」、「2020年以降、CO2総排出量を増加させない」とするグローバル削減目標を採択した。
また、2016年には「国際民間航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム(CORSIA)」を策定し、CO2削減の手段として、新技術の導入、運航方式の改善に加え、持続可能航空燃料(SAF)の活用が提案された。
図1にそれぞれの技術を適用した際の航空機のCO2削減シナリオ(1)を示す。
こうした国際事情を背景に、フランス政府では2020年6月にCO2削減を前提とする150億ユーロの資金提供を航空宇宙産業に実施する旨を発表。これを受けてエアバス社は同年9月、2035年までに水素航空機を実用化する長期計画を策定し、ZEROeプロジェクトとして水素ターボファン、水素ターボプロップ、さらにこれらのエンジンに燃料電池を組み合わせたハイブリッド推進システムなどによる、80人乗りから200人乗りまでのさまざまな形状の航空機開発をスタートした。
日本においても、2020年12月に策定された「グリーン成長戦略」に航空機産業分野の脱炭素策として水素航空機に関する技術開発が計画に盛り込まれた。
当社ではこうした国際的な社会情勢に対応すべく、水素航空機実現に必要なコア技術開発の検討を実施し、「グリーン成長戦略」推進のために設置されたグリーンイノベーション基金事業(GI基金事業)で「水素航空機コア技術開発」(図2)に取り組むことになった。
図1 航空機のCO2排出量削減削シナリオ
図2 水素航空機コア技術開発の概要
図3 CO2フリー水素チェーン
CO2フリー水素サプライチェーン
川崎重工業の水素関連技術の開発について
日本における将来エネルギーとしての水素の利活用の拡大を睨み当社では水素の製造、液化、輸送・貯蔵、利用をいったいとした「CO2フリー水素チェーン(図3)」の実現に向けた技術開発を推進している。
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