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2022/11 Vol.125

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特集 超音速で飛ぶ世界

低騒音な機体形状における大気乱流の影響

鵜飼 孝博(大阪工業大学)

はじめに

ソニックブームと大気乱流

ソニックブーム現象とは、超音速飛行機から生じた衝撃波・膨張波( ≈ 圧力波)が大気中を長距離にわたって伝播し、地上で轟音(本稿では“ソニックブーム騒音”または単に“騒音”と表す)が発生する現象である(図1)。このソニックブーム騒音の大きさは、圧力波が通過する大気状態(温度・湿度・風)によって変化する。とりわけ、地表面付近に発達する大気境界層内の乱れた風(乱流)は、圧力波に多大な影響を及ぼし、その結果、ソニックブーム騒音が不規則に増減する。大気乱流が要因であるこの不規則な増減を制御するのは困難であり(今のところ制御不可能)、超音速旅客機開発に少なからず影響を及ぼすだろうと筆者は考えている。本稿では、大気乱流とソニックブーム騒音の関係について概説し、次世代超音速旅客機に及ぼす大気乱流の影響に関する研究事例を紹介する。

図1 大気中の衝撃波の伝播

圧力波形と騒音

最大過剰圧と立ち上がり時間が騒音レベルに関係

騒音の大きさは、地上で観測される圧力波形と深い関係があるため、まず圧力波形の特徴について述べる。図2にソニックブーム現象で得られる地上における一般的な圧力波形の模式図を示す。これはN字型波形とも呼ばれている。騒音の大きさは、圧力の最大値(最大過剰圧)および、それに要する時間(立ち上がり時間)が関係している。例えば、大きい最大過剰圧かつ短い立ち上がり時間の圧力波形は、騒音が大きくなる。

図2 ソニックブーム現象で生じた地上における圧力波形の例

低騒音な圧力波形

機体形状の工夫による圧力波形の形成

低騒音な次世代超音速旅客機に対する、大気乱流の影響を概説する前に、次世代超音速旅客機の圧力波形に関して簡単に述べる。

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