Myメカライフ
エンジン研究を通じての想い
自動車エンジンの燃焼技術の一つである副室式ジェット点火システムの開発について、奨励賞を頂きました。
本研究は、運転領域が限定されるハイブリッド車向けエンジンにおける熱効率の向上を目的として、既存エンジンに後付け搭載可能な小型副室の設計および性能実証を行ったものです。本稿では、私のこれまでの研究歴や仕事への想い、めざす研究者像をご紹介させていただきます。
私は小さい頃から乗り物が好きで、交通に関する職業に就きたいと考えていました。幼少期のトミカやプラレール、学生時代に新幹線や飛行機の写真撮影に通った東京駅や羽田空港、乗り物に触れ合う機会を与えてくれた家族には、今も感謝しています。
就職活動においては、モビリティに携わりたいという思い、また大学で学んだ機械分野の知識を活かし、技術で社会に貢献したいという意志から、日立製作所へ入社しました。
入社後は、主に自動車パワートレインに関する研究開発(電動可変バルブタイミング、インジェクタ、点火コイル、および燃焼センシング技術)に従事しています。コンポーネント熱設計における機械工学、燃料噴射における流体力学、点火放電における電気工学、エンジン燃焼における化学反応など、多岐にわたる分野の勉強、議論を繰り返してきました。先輩方のサポートに支えられ、2022年で10年目の研究者生活を迎えています。
また、自動車大国ドイツで3年間の駐在生活も経験しました。実際に現地で暮らすことで、自動車の利用形態(エンジン運転領域、環境条件)や、人々の日常生活における自動車への思い入れを、肌で感じることができました。社会にモビリティを提供する仕事に就く者として、貴重な学びの機会を得ることができました。
これまで私を支えて下さった方々に、この場を借りて、感謝の意を申し上げます。
日々の研究活動においては、いつも先人の知恵の偉大さを感じています。現代のような通信環境が無くとも、物理現象に真摯に向き合い、仮説、実験、分析、考察、提案のプロセスを着実に実行してきた熱い志は、研究者として引き継いでいきたいと考えています。
また、先代の研究者達が思い描き、実現した技術の恩恵を受けて現代社会に生きる者として、現在からは想像できないような将来を作り出せるよう、開拓者精神を持って研究に臨みたいと思います。
昨今の社会動向として、脱炭素化に向けた活動が活発化しています。温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)の排出削減技術がニュースで紹介されることも増え、環境意識の高まりを実感します。
一方で、非メタン未燃炭化水素(NMHC)、粒子状物質(PM/PN)などの、大気汚染防止の観点で考慮されるべき指標が、一般の方の目に見える形で取り上げられることが、少ないようにも感じます。
エンジン研究に携わっている者の役割として、地球温暖化以外の環境影響まで広く俯瞰し、生活の質(QoL)向上に向けた最適なエネルギ利用のあり方を提案していくことが必要であると、私は考えています。
日常生活において、自分の知らない技術の恩恵を受けて暮らしている、と気づくことが多々あります。一人の人間がすべての技術に精通することは難しいと思いますが、自分の専門分野に関しては、世界を支える存在になりたいと思っています。
そのために、研究者として下記を心掛けていきたいと考えています。
(1)社会動向にアンテナを張り、発明の母であるニーズを確実に捉える。
(2)その時代の最新技術を常に学び、研究に適用することで、自分の技術力を高める。
(3)学びを仲間と共有し、技術を磨き上げる。
今日の自分の行動は、将来に向けた千里の道の第一歩目。今後も前向きに、研究に従事していきます。
図 副室火炎ジェット点火システム
<正員>
米谷 直樹
◎(株)日立製作所 研究開発グループ 研究員
◎専門:機械工学、燃焼解析
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