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2022/8 Vol.125

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Myメカライフ

異分野との交流が成長を促す

私がトライボロジーの分野に携わるようになったのは、東京理科大学の学部4年生時、後に師匠となる佐々木信也先生の研究室に配属されたのがきっかけとなります。機械工学科に所属しながら、高校時代いちばん好きな科目は化学ということで、摩擦表面と潤滑油の化学反応の調査に取り組ませていただきました。いざ研究を始めると、朝早くから夜遅くまで平日休日関係なく研究室に居て実験したのは非常に楽しい思い出です。今では、体力的にそのような生活は無理ですが、若い時にしかできない経験や自分の体力の限界を知れたのは大きかったです。

その後、その勢いのまま佐々木先生の研究室で博士課程に進学しましたが、順風満帆とは行きませんでした。D1からD2の途中まで研究成果があまり出すことができず、このままでは学位取得は無理なのではないかと非常に悩みました。この原因としては、誰しもが陥る研究の難しさかもしれませんが、論文の内容にこだわりを持ちすぎて、この内容では投稿できないとハードルを上げ過ぎたと思います。こだわりは重要ですが、ある程度の妥協も重要かと思います。では、なぜこのような状況を打開することができたのかと振り返ると、師匠の佐々木先生に異分野の方々を紹介していただき、密な議論させていただいたのが大きな転換点でした。紹介された先生方の分野は電気工学、物理学、表面科学、電気化学など多岐にわたっており、違う視点からのアドバイスを頂くことで、研究の質が非常に向上しました。また、化学系の先生からは、「論文は溜め込むのではなく、どんどん出したほうが良いよ。新しいことがわかったらまた論文にしなさい。」と言われたことが頭に残っています。その後は、枷が外れたかのように現在に至るまでハイペースで論文を執筆できています。

ハイペースで論文を執筆するにあたり、大きな障壁としては、研究のネタ探しです。ここで研究のネタ探しとして最適なのは異分野との交流だと思っています。前述の通り、異分野の先生との交流で研究の質が向上しましたが、それ以外にも意外なところで自身の摩擦に関する研究が入り込む余地が有ることに気が付きました。実際に、本受賞研究の題目である「イオン液体の摩擦界面構造の分析および潤滑特性の能動的制御の研究」に関しては、他分野の学会での講演や聴講で思いついたものです。例えば、潤滑油は摩擦表面に吸着膜などを形成することで摩擦を低減しますが、これは固液界面での現象であり、固体表面における界面構造を活発に議論している日本表面真空学会や日本化学会などの発表から着想を得たものです。もし、学生さんなどがこの記事を読んでいたら、是非、自分の分野に近い学会などで積極的に発表していただければと思います。思いもよらぬ出会いや成長が有るかと思います。

今まで異分野に関する話をしてきましたが、私が機械工学の専門であることには変わりはなく、今後は、摩擦係数を能動的に制御するような機械システムの構築を目指していきたいと考えております。また、工学という分野ですので、学術ベースの話だけでなく、社会実装へ向けた取り組みも全力で注力したいです。

末筆ではございますが、今回名誉ある日本機械学会奨励賞(研究)に選考していただいた日本機械学会の関係者様、学生時代から指導していただいた佐々木信也先生、宮武正明先生を始めとしたすべての方々に厚く御礼申し上げます。

図 周波数変調原子間力顕微鏡により測定した負電荷を帯びた表面に形成されるイオン液体潤滑膜


<正員>

川田 将平

◎関西大学 システム理工学部 助教

◎専門:トライボロジー、表面科学、電気化学

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