やさしい流体力学
第8回 次元解析と無次元数
8.1 次元解析と無次元数
身の回りの流れは枚挙にいとまがないが,それぞれの流れの現象の大きさや時間を我々はなんとなく生活の中で感じ取っている.
天気を左右する大気の流れと,空調を左右する部屋の中の空気の流れは明らかに違うし,さらに船,水泳選手,プランクトン周りの流れと全く違うことは,簡単にイメージできる.
我々は流れをどのような状態かを判断するために,長さと時間を無意識のうちに見積もっている.
ここでは「長さ」を空間スケール,「時間」を時間スケールと呼ぶ.
流体力学を含む力学分野において「長さ」「時間」「質量」は独立な基本量であり,それぞれの次元を
$$[長さ]={\sf L},~~[時間]={\sf T},~~[質量] ={\sf M} (8.1)$$
として表す.
一方,速度は移動距離を時間で割ったもの,加速度は速度を時間で割ったものであるから,長さの次元${\sf L}$と時間の次元${\sf T}$の
組み合わせで表現できて,
$$[速度]={\sf LT}^{-1},~~[加速度]={\sf LT}^{-2} (8.2)$$
となる.
%例えば長さは${\rm m}$(メートル),${\rm cm}$(センチメートル),${\rm km}$(キロメートル)などを日常生活で用いるが,一般的にはSI単位系を基本単位使うことが標準であり,長さは${\rm m}$(メートル),時間は${\rm s}$(秒),質量は${\rm kg}$(キログラム)で表される.
%流れを表すのに速さも大切な物理量であるが,速さは移動距離を時間で割ったものであるから,長さと時間の次元を組み合わせて$L/T$で表される.
これら次元に注目して現象を解析することを次元解析といい,以下ではバッキンガムの$\pi$定理に基づく次元解析を紹介しよう.
8.2 バッキンガムの$\pi$定理
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