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2022/8 Vol.125

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小特集 食を支える機械の魅力

より多くの人々によりおいしい幸せを

黒瀬 昌孝〔梶原工業(株)〕

加熱撹拌機とは

味作りの工程を担う食品加工機械

梶原工業(株)(販売会社:(株)カジワラ)は、主に食品用加熱撹拌機の製造、販売を行い、撹拌翼で液体を混ぜるだけでなく、食材が焦げ付かないように加熱面のかき取りを行いながら混ぜる機械を得意としている図1

食品機械の展示会に行くと原料の計量や切断から充填・包装までさまざまな工程の機械があるが、その中で加熱撹拌機は、加熱しながら混ぜる機械であり、調理工程の中でもいわゆる煮込む、炒めるなど、味を作る工程を担っている。

加熱は食材の温度を上げて粉体を溶かしたり固形物を柔らかくするだけでなく、物質の化学変化によって香ばしさを出したり、甘さや口当たりに変化をつけるなどの効果がある。

化学用の撹拌機では均一な流体になるよう練りこむことが求められるが、食品用の撹拌機は大きさや比重が異なっている固形物を形状や風味を保ちつつ全体に均一に分散させる必要がある。固形物がつぶれて均一な流体となってしまうと味ものっぺりとしてしまう。おいしさには口に入れた時にさまざまな味や食感を感じることが求められるため、食材をいたわりながら全体的には均一に混ぜる(100人前を同時に調理した際に1人目と100人目は同じ味でありつつ、1人前の中では味や食感の変化がある状態)必要がある。

また加熱面のかき取りは、焦げ付きを防止するだけでなく、高粘度食材の加熱効率を上げたり、焦げる直前の温度で味や風味を引き出す効果もある。

図1 梶原工業製 加熱撹拌機の参考例

 

当社の技術

撹拌、加熱と数値管理

タイトルに掲げた「より多くの人々に、よりおいしい幸せを」は当社の基本理念であり、当社は大量調理では味が落ちると言われていた時代から、どうすればおいしい食品を量産できるのかを追求してきた。シェフや職人または食品製造の方々の経験に科学の視点を加えて機械化に繋げ、今日の冷凍食品やレトルト食品、コンビニエンスストアのお弁当など加工食品がおいしくなってきていると言われる一翼を担っている。

当社の加熱撹拌機は和菓子のあんこを練るところから始まっているが、あんこは加熱しながら全体をゆっくりと混ぜ、焦げ付かないように鍋の加熱面をまんべんなくかき取らなければならない。当社以前の機械はかき取り羽根を回転させた時に中心部に死点ができてしまい、そこが焦げ付いていた。当社では羽根を自転公転させることで死点を無くし、焦げ付かないようにした図2)。

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