経済で読み解く機械産業
第7回 読み取り難い機械受注統計をどのように読むか
民間設備投資の先行指標として内閣府の機械受注統計調査がある。機械受注「船舶・電力を除く民需」が民間設備投資に対して6カ月程度の先行性があると考えられるが、受注統計であることから読み取り方は結構難しい。
受注品の読み取り方の難しさ
物の製作には受注してから生産、出荷、売上というプロセスがあるが、自動車、家電製品などの見込品(量産品)の場合はこれらの間には時間的な差はほとんどない。しかし火力発電用のボイラやタービンなどの1基が何百億円もする大型の受注品の場合は受注してから設計、工場での生産、出荷、そして売上まで2~3年の期間を要する。大型ではない受注品についても設計があり、売上までにはかなりの時間が掛かる。これが統計の読み方を難しくする。生産、売上、民間設備投資を見る場合、受注品と見込品の違いは重要で、その両者の違いにつき詳しく触れた文献は見当たらない。
まず受注と生産の関係をみると、経済産業省の「生産動態統計」(鉱工業指数のベースとなるデータ)は生産と言いながら基本的には完成ベースで把握しており、受注と生産の時間的な差が大きい。受注から完成までの期間が長い大きな製作物などは完成した時点で初めて生産と把握される。したがって、生産がかなり進行していても一部の大型製作物は生産指数の中に含まれていないので、生産の実態を正確には表していない。逆に完成した段階で生産として計上されるので生産指数がはね上がる。これが大型の受注品が多い「生産用機械」、「汎用機械」や「電気機械」の生産指数によくみられる。これを避けるため、水管ボイラ、一般用蒸気タービン、非標準変圧器のうち一定規模(容量)以上の大きな長期生産物、そして鋼船(鋼船は全船)については生産の実態を把握するため進捗量を月ごとに企業から「月間進ちょく量」で報告を受け生産指数に織り込んでいる。
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