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2022/5 Vol.125

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特集 技術革新をもたらす複合材料技術

CFRP製高圧水素タンクの設計革新にむけて

横関 智弘(東京大学)

研究背景

車載用水素タンクの現状と課題

燃料電池車の普及のためには効率的な水素貯蔵システムとその安全性を保証する技術の開発が必要である。低価格下や航続距離の確保のため、車載用水素タンクの軽量化が求められており、炭素繊維複合材料(CFRP)の利用が必須である。70MPaを超える高圧水素を貯蔵するシステムとして、樹脂ライナとフィラメントワインディング(FW)成形CFRPからなるタンク(TypeIV)が現状の有望なソリューションである。しかしながら、水素タンクの耐久性について、実使用を踏まえた残存強度・寿命の予測が困難なことから、安全性の担保のために、わずかな損傷であっても交換・廃却を必要とする状況であり、このためのコストのみならず、環境的にもCFRPタンクの設計や運用方法の改善が求められている。

CFRPは炭素繊維と樹脂から構成され、材料の不均質性や異方性を有することから、損傷・破壊モードが複雑であり、製造中の初期不整・初期欠陥により強度特性も大きく影響を受けることが知られている。FW製CFRPタンクは製造時の欠陥・不整(ボイド、繊維うねり、繊維含有率のばらつき)も多く、製造品質の管理のための指標が明示されていない点や、CFRP水素タンクの強度・寿命予測ができないことがネックとなり、水素タンクの徹底的な軽量化や安全性を保証する技術が構築されていない。製造したタンクの安全性を確保するため、膨大な時間と費用をかけて容器に実働負荷類似の負荷を与えるシリーズ試験を実施している。製造したタンク品質のばらつきやそれに伴う破壊メカニズムを追求しきれていないことが原因で、十分な軽量化を達成しておらず、また、安全性の定量的な評価まで至っていないことが、CFRP水素タンクの強靭化・低コスト化を阻む要因となっている。さらに、開発コストの低減や開発加速のためには、実運用を想定した安全性評価を、シミュレーションによる仮想試験にて代替・援用することが求められており、CFRPタンクの仮想試験技術の開発も急務である。

研究開発のアプローチ

CFRP水素タンクの安全設計にむけて

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