会長挨拶
会長退任のご挨拶
2021年度(第99期)会長 佐田 豊
あっという間の一年でしたが、若輩の小職を献身的に支援して下さった学会事務局の皆様、また加藤筆頭副会長を初めとする副会長や理事会メンバーの絶大なるご理解とご協力に衷心より感謝いたします。
21年度(99期)は、2020年初より世界的に感染拡大が繰り返された新型コロナウイルスの疫学的解明とワクチンの開発・接種の進む中で、パンデミック抑制と社会・経済活動の両立に挑み続けた年となりました。本会は、前期末の時点で、1年を通じて集会行事や会合を原則、Web会議システムを利用したオンライン開催とすることを小職自ら提案、決定しました。感染抑制だけでなく、この機会にアフターコロナを見据えてITを活用した学会運営の経験知を蓄積したいという狙いを持っての決断でした。行事などの企画にはご苦労もあったと思いますが、平年並みの講演会、講習会などを実施することができ、対面開催時より参加者が多い行事もあるなど、多くの実りを得たと思っています。各行事を企画・実行いただいた皆様に深く感謝いたします。一方で、集会行事での知り合いとの何気ない会話など、会員同士を結び付けることが本会の大きな価値であることも再確認されました。21年度の経験を踏まえ、今期はウィズコロナ下の新しい学会活動が構築されることを多いに期待しています。
さて21年度は「社会変化に柔軟に適応し、社会に期待される学会へ」を目指して、次の3点を方針に掲げて取り組みました。
1)コロナ後を見据えた学会のあるべき姿の追求
2)新部門制における分野連携の強化と更なる学会としての価値向上
3)10年ビジョン実現に向けた財政の健全化
自分のような者を会長へ選出された会員皆様の狙いは、本会と企業との関係の強化、企業や企業所属技術者向けのサービスの向上にあると信じ、1)については、部門や支部の講演会を含む教育コンテンツを基礎・応用ごとに体系化、特別員や企業所属の技術者向けの情報の充実を図りました。期末には、地域や場所にとらわれず意見交換を行う『JSMEサロン』を新設、第一回は佐々木前会長と小職とで「企業と学会の対話」をテーマに討論を行いました。2)については、試行2年目の新部門制の下で部門連携を更に進め、学会横断の取り組みとして「少子高齢化社会を支える革新技術の提案」、「持続可能社会の実現に向けた技術開発と社会実装」などの4つのテーマに取り組みました。3)は、20年度は新型コロナウイルス影響もあり黒字決算となったものの、その前は2期連続で赤字決算であり、現在の学会規模に合った費用構造の改善が急務となっていました。6月には本部事務所を信濃町から飯田橋へ移転して家賃支出を抑制するなど、固定費の削減に取り組みました。その他、オンラインでの行事・会合開催による会議費削減の効果もあり、21年度は黒字で着地することができました。新事務所は少し駅から離れましたが、モダンなオフィスですので機会があればお立ち寄りください。
一方で、残念ながら会員数の減少に歯止めをかけることはできず、責任を痛感しています。減少の主因である企業所属会員、特別員向けのサービスの充実に取り組みましたが、新型コロナウイルスの影響もあり短期的な施策を打ち切れなかった、また若手の学会離れに対して有効な施策を打てなかったと反省しています。ここは加藤会長をはじめとする今期の学会関係者の方々に委ねたいと思います。
パンデミックを経験し、社会の潮流は大きく変わり始めています。化石燃料や天然資源を消費し社会の利便性を高めるような一方向的な製造業は持続可能ではないことが明らかになりつつあります。カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現など、社会や産業の大きな転換期にシンセシス、アナリシスの両面の技術を包含する機械工学が活躍できることは沢山あると考えています。会員の皆様のお力を得て、本会が社会変化に柔軟に対応し、機械工学の変化と産業転換を牽引していくことで社会から期待される学会へと発展していくことを心より祈念しております。
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