特集 IT技術・自動運転技術が担う交通安全
飛行場管制システムのデジタル化
新しい飛行場管制のかたち
リモート・デジタルタワーの実現に向けて
航空管制システムとは航空機が安全かつ円滑に運航するために必要なシステムである。しかし、普通に生活していれば航空機を利用することはあっても、航空管制の存在をあまり意識することはないかもしれない。この「航空管制」という言葉を聞いて皆さんが思い浮かべるのは、どのようなものだろうか。いちばん身近なものとしてイメージするのはたぶん飛行場にある「管制塔」ではないかと思う。この管制塔では航空機の離着陸および空港内の航空機や車両の交通を安全かつ円滑に運航するための「飛行場管制業務」が行われている。近年、この飛行場にある管制塔を、ITやデジタル技術を使った「リモート・デジタルタワー(以下、RDT)」と呼ばれる新たな飛行場管制システムで置き換えるための研究や技術開発が行われている(1)(2)。
いままでの飛行場管制は、管制塔にいる管制官などのオペレータの目視による監視業務が行われてきた。これに代わり、新たなRDTシステムでは、従来の管制塔に代わり空港側には情報を取得するためのカメラや監視、気象などのセンサ機器が設置される。これら機器から得られる情報は、空港とは別に設置された運用センターの管制室をネットワークで繋ぎ配信され、管制室のディスプレイに表示することで従来と同様に飛行場管制業務を実施できるようにするものである。RDTシステムでは、デジタルな映像情報がオペレータの視覚を補助するための支援機能が組み合わされている。これらの機能により現在のタワー業務と比較しても、今まで以上に安全かつ効率的な運用が可能な仕組みの実現を目指している。本稿では、このRDTにおける支援機能とそれらを構成する仕組みや技術開発の取り組みについて紹介する。
リモート・デジタルタワー(RDT)とは
RDTの基本的な仕組み
キーワード:IT技術・自動運転技術が担う交通安全