やさしい流体力学
第2回 静止流体の力学(1)
2.1 静止流体中の圧力
流体中には,第1回で扱った粘性応力の他に,圧力が作用している.第2回と第3回では流体中に作用する圧力の性質を理解するため,静止した流体を考える.流体が静止している場合には,粘性応力は働かないので圧力のみを考えればよい.圧力の性質として,以下の3つがある.
1. 流体中に面を取ると,圧力はその面に垂直に作用する
2. ある点の圧力の大きさは向きによらない.
3. 流体中のある点での圧力の大きさは,その点の上方にある流体の重量によって決まる.
これらの圧力の性質について理解するために,図2-1の左側に示すような水中のある位置に静止している球体を考えよう.球体の表面には流体の圧力が作用している.球体の表面のある場所に働く圧力は,表面に垂直方向である.球体がある大きさを持つとき,球体表面の位置によって上方にある流体の重量が異なるため,圧力の大きさは水深によって変わる.ここで,球体をどんどん小さくしてゆくことを考えよう.図2-1の右側に示すように球体の上面と下面の水面からの深さの差が無視できる程度に球体が小さくなれば(すなわち,球を「点」とみなせるようになれば),球体表面の各点に働く圧力の大きさはどこでも等しくなるはずなので,ある点の圧力の大きさは向きによらないことがわかる.
図2-1 水中にある球体に働く圧力
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