特集 鉄鋼業におけるモノづくり
「鉄鋼業におけるモノづくり」特集によせて
本誌において鉄鋼特集が組まれたことは大変時宜を得たものと喜んでいます。
鉄鋼材料は機械工学を支えてきた基本材料であり、機械工学は、鉄鋼業の基幹産業としての発展を支えた基盤技術です。また、機械工学が各種産業の共通工学であるのに対して、鉄鋼業はいくつもの産業分野を包含した総合製造業の代表でもあり、長年に亘って極めて強い相互依存を持って、日本のものづくり産業を支えてきました。実際、鉄鋼業界では、非常に多くの機械工学出身の技術者が活躍されています。
古から続く鉄鋼と機械の相互関係については、過去の機械学会誌においても、「鉄鋼材料と機械工学」特集号(1975年)で、20世紀における鉄鋼材料と機械工学の相互補完の強さについて取り纏められていました。また、「創立100周年記念」特集号(1997年)では、「日本の鉄鋼業を世界一にした製造技術」と題して、機械工学の貢献が示されました。
しかしながら、前回の特集号から数十年経ち、産業を取り巻く環境も大きく変化してきました。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)の流れは、産業構造自体を大きく変化させつつあり、そこでの製鉄技術と機械工学の新たな関係をこの機会に改めて関心を持って頂くために本特集を企画しました。
DXについては、日本鉄鋼業は最も早くからデジタル化を進めてきた産業の一つであり、さらに近年のDXの流れから、ICT、IoT、AI利用も進めてきていますが、鉄鋼業に限らず、ものづくり産業におけるDXと機械工学は特に密接な関係にあり、既に直近の特集(1)でも多く議論されていますので、本誌では、近年特に大きな課題となっている鉄鋼業におけるGXを意識して執筆頂きました。
2020年10月26日、菅義偉総理は所信表明演説で日本政府として2050年にカーボンニュートラルを目指すことを宣言、2021年4月22日には、2030年の温室効果ガス削減目標について2013年比46%削減を目指すことを表明されたことは、それまでも徐々に高まっていたGXへの流れを大きく加速させることとなりました。非常に難易度の高い目標であり、ものづくり産業においても正にトランスフォーメーションが求められています。その中でも鉄鋼業は、国内では1.8億トン/年(約15%)のCO2を排出しており、日本のカーボンニュートラル実現のためには鉄鋼業におけるカーボンニュートラル実現が不可避の課題になります。
キーワード:鉄鋼業におけるモノづくり