特集 機械と繊維の新しい関係
アパレルとCAD技術
アパレルの設計方法(1)
立体裁断法(立体から平面へ)と平面作図法(平面から立体へ)
衣服(clothing, clothes, garment)は人間の身体の体幹部を覆うものをいい、アパレル(apparel)は大量生産による既製服を指し、衣服と同様の意味としても使われる。衣服は着用者の体を覆いながら、動作時に過度な圧力を加えないことが必須条件になる。さらに、着用者の姿を美しく魅力的に見せる必要もある。衣服製作過程にはさまざまな段階があるが、大きな流れとして、デザインおよび素材決定→人体計測→衣服パターン作成(パターンメーキング)→副資材決定→生地裁断→縫製→着用評価→修正→完成で分けられる。
衣服のデザインはデザイナーによって平面のデザイン画とメモなどで表現され、パターンメーカー(パタンナー)によって立体の形状として表現される。パターン(pattern)はその立体形状の設計図であり、縫製時に用いられる。パターン作成方法では立体裁断法と平面作図法がある。
立体裁断法(ドレーピング/draping)は、衣服のデザインに合わせて、布を着用者のサイズに合わせたボディ(人台、dress form)に直接当てて、衣服造形を作る方法である(図1)。この方法は新しい造形の衣服設計に適している。布で制作できた立体の衣服造形は、裁断および縫い合わせをする部分に印をつけておいて、平面に戻し、衣服のパターンを得る。平面に戻した印付けの布は紙に写されるか、または直接スキャナーによりデジタル情報化される。その情報は作業効率を求め、CAD(computer aided design)システムに入力され、CADによりパターン修正が行われる。
平面作図法(pattern draft)は、人体寸法と衣服形状、パターンの関係から、シンプルで基本的なパターン(原型/basic pattern)を図形学的に作成し、衣服デザインに合わせて平面のパターンを変形・作成する方法である(図2)。平面作図では最初からCADを用いて迅速にパターンを作成することもできる。平面作図法で作成されたパターンは生地とピン止めなどを用いて確認する過程が必要となる。どの方法を用いても試作、着せつけによるフィット性・デザイン性の確認が必要である。
作成されたパターンは既製服として生産するために、縫い代をつけ、工業用のパターンとして完成される。また、製作時に必要な芯地(衣服の外観の安定性を保つために表地に接着される薄い生地)および裏地などのパターンも表地用のパターンを変形させ作成する。衣服のパターンのパーツは数が多く、例えば、シャツ1着を作るために、表生地19パーツ、芯地8パーツのパターンが必要になる。各シーズンに製作するアイテム数を考えるとCADでデータ化することにより、設計情報の管理が簡易にでき、さらに他の工程への伝達も迅速になる。
図1 立体裁断の様子
図2 アパレルCADを用いたシャツパターン
グレーディング
マスターパターンから多様なサイズのパターンへの展開
キーワード:機械と繊維の新しい関係
機構模型
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
機関車模型
年代未詳/ボールドウィン社製/フィラデルフィア(米)/真鍮、鉄、木製台座/
H250, W610, D180(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
「Baldwin Locomotive Works Philadelphia, USA Compound Locomotive Cylinder and Valve Gear S.M.Vauclains Patents 4o6o11, 4o6o12, 471836」の金属プレート付。このような模型が近代化の進められた機械学教育に用いられた。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きの機構模型を含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機器が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]