特集 機械と繊維の新しい関係
布をあつかう -たたむロボットへ-
はじめに
日本機械学会の「機械遺産」に第16号として登録されているのは、豊田佐吉の発明である無停止杼換式豊田自動織機(G型)である。この織機には50件以上の発明が含まれているという。重要なものはふたつあり、ひとつは、緯糸を入れるシャットル(杼)の自動交換である。もうひとつは、糸切れを検知しての自動停止である。これらの自動化(自働化)により、この織機は生産性を1桁以上向上させるのみでなく、品質も大幅に向上させた。G型織機は当時最先端のロボットといえる。この例だけによらず、現代の機械工学の発展は産業革命に端を発した繊維機械の研究・開発によるところが大きいと考える。
繊維製品は、糸を紡いで1次元の要素を作り、織って布を作って2次元化したあと、裁断・縫製によって立体化して使用される。あるいは編むなどして立体的な造形を行う。繊維製品は繰り返し使用されるため洗濯・乾燥が必要であり、たたんで保管されることが多い。繊維製品は使い終わったあとは焼却処理されることがほとんどでリサイクルが課題である。
紡織・裁断工程については自動化が進んでいたが、縫製作業については従来自動化されておらず、人手で行われることが多かった。これをターゲットとして1982年から9年間、通産省の大型プロジェクトとして「自動縫製システム」の研究開発が行われた。ほぼ同時期に「極限作業用ロボット」の研究開発も大型プロジェクトとして実施されていた。別のプロジェクトとしてスタートした自動縫製とロボット研究が融合する形で、2006年から2010年には、NEDO「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」の一部として、布ハンドリング研究が行われた。現在でも縫製作業は人手で行われる部分が多いため、繊維製品の産地は安価な労働力を求めて移動している。
製品となったあとは、洗濯、乾燥、たたみの作業がある。洗濯・乾燥については自動化が進んでいたが、取り残されていた、たたみの自動化が近年研究されている。
繊維を扱うロボットハンド
キーワード:機械と繊維の新しい関係
機構模型
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
機関車模型
年代未詳/ボールドウィン社製/フィラデルフィア(米)/真鍮、鉄、木製台座/
H250, W610, D180(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
「Baldwin Locomotive Works Philadelphia, USA Compound Locomotive Cylinder and Valve Gear S.M.Vauclains Patents 4o6o11, 4o6o12, 471836」の金属プレート付。このような模型が近代化の進められた機械学教育に用いられた。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きの機構模型を含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機器が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]