特集 機械と繊維の新しい関係
繊維機械のはなし
はじめに
会員歴40年にして初めて機械学会誌に寄稿
「喜成君は大学院進学が決まったのだから日本機械学会に入会したら?」学部4年生の時に「係の先生」に勧められるまま、本学会に加えていただき、設計製図、材料力学、機構運動学などを担当しつつも、論文集には責任著者として1度も投稿したことのない「お客さん会員」に学会誌特集記事執筆の機会をいただいた。本特集のお世話をいただいた先生方に御礼申し上げる。
我が国産業構造の変化により、糸を作り、布を作り、衣服を縫製する繊維工業は世界中の製造量の中で数%まで縮小してしまったが、それらの繊維製品を製造する繊維機械の技術開発はそれぞれの機械で欧州2〜4社、日本で1〜2社が最先端を走り、これに中国やインドが「数の力」で激しく追い上げている競争状態である。一方海外ではtextileは大学での研究分野としてアーヘン工科大学でもノースカロライナ州立大学でもアタリマエの研究分野であるが、我が国ではfiber scienceあるいはpolymer scienceを研究する研究者は一定数いるものの、textileを体系的に教育できる大学は信州大学(一部、福井大学、京都工芸繊維大学でも・・・)のみとなった。本稿では我が国の大学では絶滅危惧種textile machineryの動向について紹介する。
繊維機械ってナニ?
川の流れのように・・・
綿の実や羊の体毛がワイシャツやスーツになるまでにはとても長い工程があり、さまざまな機械が使われ、その企業規模が大きく異なる。ただ、①繊維を作り、②繊維から糸を作り、③糸から布を作り、④その布地に加工や染色を施し、⑤裁断・縫製して衣料になる・・・というモノの流れはよく「川の流れ」に例えられる。自工程より前の工程を川上、自工程より後の工程を川下と呼ぶ。③布作りに携わる立場であれば、自工程は川中、繊維や糸を作る工程が川上、仕上工程や縫製が川下になる。図1にtextileの工程を簡単に示す(1)。アパレルと呼ばれる⑤縫製関係者の立場では、図1はすべて川上で、川下は流通(デパート、量販店や専門店)になるらしい。
キーワード:機械と繊維の新しい関係
機構模型
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
機関車模型
年代未詳/ボールドウィン社製/フィラデルフィア(米)/真鍮、鉄、木製台座/
H250, W610, D180(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
「Baldwin Locomotive Works Philadelphia, USA Compound Locomotive Cylinder and Valve Gear S.M.Vauclains Patents 4o6o11, 4o6o12, 471836」の金属プレート付。このような模型が近代化の進められた機械学教育に用いられた。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きの機構模型を含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機器が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]