特集 機械と繊維の新しい関係
複合材料における繊維の役割
繊維強化複合材料(1)
材料、特に工業材料は現在さまざまな最先端分野で技術発展のキーテクノロジーとなっており、また材料の複合化技術は、工業材料に対する要求に応えるために必要不可欠なものとなっている。このことは、これまでの工業材料の歴史的変遷から明らかであると言える。木材、石材、金属材料から高分子、セラミックまで工業材料はそれぞれの時代のニーズに応え、その結果、産業が発展し、我々の社会が形成されてきた。その中で特に近半世紀注目されている材料のひとつに複合材料(Composite Materials)が挙げられる。
複合材料とは、「二種類以上の素材、成分などを一体化させることにより、それぞれの単体のみでは持ち合わせなかった特性を実現した材料」と定義されている。複数の材料の組み合わせにより、それぞれの構成材料の有する特性を併せ持つことが可能であるという事実は古くから知られている。例えば、わらを混ぜた粘土からできた土壁の古代住居や錬金術による合金などがそれらの例である。また、1888年に英国のDunlopによって発明された空気入りタイヤは、いまではゴム中にナノサイズのカーボンブラック(ナノ粒子)やシリカファイバーを分散させて力学的特性のみならず、車の制動性能を改善し、さらにコードを入れて強化したものとなっている(図1)。近年ガラス繊維やクルミの殻を練り込んで引っかき効果を持たせたスタッドレスタイヤが開発されている。これは粒子または繊維がゴムに混入されて、母材がゴムというやわらかい複合材料構造の代表例と言える。
図1 タイヤの構造
キーワード:機械と繊維の新しい関係
機構模型
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
機関車模型
年代未詳/ボールドウィン社製/フィラデルフィア(米)/真鍮、鉄、木製台座/
H250, W610, D180(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
「Baldwin Locomotive Works Philadelphia, USA Compound Locomotive Cylinder and Valve Gear S.M.Vauclains Patents 4o6o11, 4o6o12, 471836」の金属プレート付。このような模型が近代化の進められた機械学教育に用いられた。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きの機構模型を含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機器が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]