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2021/11 Vol.124

機構模型

工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)

機関車模型

年代未詳/ボールドウィン社製/フィラデルフィア(米)/真鍮、鉄、木製台座/

H250, W610, D180(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵

「Baldwin Locomotive Works Philadelphia, USA Compound Locomotive Cylinder and Valve Gear S.M.Vauclains Patents 4o6o11, 4o6o12, 471836」の金属プレート付。このような模型が近代化の進められた機械学教育に用いられた。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きの機構模型を含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機器が現存する。

上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵

[東京大学総合研究博物館]

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特集 機械と繊維の新しい関係

スパイダーシルク

矢澤 健二郎(信州大学)

スパイダーシルクはタンパク質でできている

軽くて強く、低細胞毒性、生体適合性、生分解性を有する

2015年9月の国連サミットにおいて制定されたSDGs (持続可能な開発目標)によって、従前の化石燃料に依存した「ものづくり」からの脱却の気運が高まっている。繊維の分野においても、化学繊維に代替するタンパク質性繊維が注目されている。カイコが紡ぎ出すシルクは、衣類への利用だけでなく、縫合糸としての実用化もなされている。さらに、近年では、クモ、ハチ、ミノムシ、貝などが作り出すシルクについても構造および力学物性の知見が蓄積されている。特にクモが作り出す絹糸であるスパイダーシルクは、炭素繊維や芳香族ポリアミド系の高強度繊維と比較して強度では劣るものの、延伸性に優れるため、糸を破断するためのエネルギーに相当するタフネスに関しては、高強度繊維を凌駕する(表1)。スパイダーシルクの高タフネス性によって、高速で飛来する昆虫が跳ね返ることなく、クモの巣網に捕捉されることが可能になる。

表1 スパイダーシルクと高強度繊維の力学物性(1)

タンパク質性繊維であるスパイダーシルクの構成成分はアミノ酸である。天然のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸は大小さまざまな側鎖を有するが、スパイダーシルクにはグリシンとアラニンが非常に多く含まれていることが特徴として知られている。アミノ酸は、炭素数が2であるため、アミノ酸が縮合したポリアミドに相当するタンパク質は、ナイロン2と言い換えることができる。工業的に合成されるナイロンは、融点を有するため溶融可能であり、成形加工が容易である一方で、ナイロン2に相当するスパイダーシルクは、分子鎖間に存在する水素結合の密度が高く、融解(分子鎖間の水素結合が切断)前に加熱によって熱分解(分子鎖内の共有結合が切断)する。そのためスパイダーシルクは、成形加工が困難であることを考慮すると、自然界で果たしてクモは、どのようにシルクタンパク質溶液を糸の形に成形加工しているのだろうか。

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