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2021/10 Vol.124

表紙

機構模型

工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)

回転斜板

年代未詳/フォイト社製/ベルリン(独)/真鍮、鉄、ガラス、木製台座/

H220, W320, D145(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵

ハンドルに「GUSTAV VOIGT BERLIN. S. W.」の刻字あり。工科大学もしくは工学部の備品番号「工キ學ニ四九八」の木札付。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きのものを含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機構模型が現存する。

上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵

[東京大学総合研究博物館]

バックナンバー

特集 水素・燃料電池の基礎、研究開発、展望~機械工学からのアプローチ~

Power to Gasにおける固体高分子型水電解の役割および現状課題と今後の展望

泉屋宏一・吉田哲也〔日立造船(株)〕

はじめに

我が国は2016年の地球温暖化対策計画でCO2排出量削減目標を2030年までに26%、2050年までに80%としてきたが、2020年には2050年削減目標を100%、2021年には2030年削減目標を46%に大幅に変更している。これを実現するために「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(1)、その支援策として「グリーンイノベーション基金」(2)が設けられ、これまで以上の速度で、各種制度の見直し、技術開発の促進および早期社会実装などを進めて行くことが求められている。

脱炭素化社会の実現の鍵を握るのは再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化であるが、変動する再エネを安定的に利用するためには、電力の需給バランスを保つ必要があり、例えばIEC (International Electrotechnical Commission)は、電力貯蔵白書で、電力貯蔵技術が重要と報告している(3)図1は、各種貯蔵技術(二次電池、フライホイール、揚水、キャパシタなど)について出力と貯蔵容量でその適正範囲を記しているが、大規模出力(1 MW以上)、大容量(1 MWh以上)、日~月単位の貯蔵は、水素やSNG(Synthetic Natural Gas)といったガス体に変換しての貯蔵が適していることが理解できる。

さらに、我が国の一次エネルギー消費の約60%は熱需要であることからも、再エネを燃料としてガス体に変換することへの期待は大きく、水素は直接、もしくはメタン燃料やアンモニア燃料に変換して利用することが提案されている。この再エネをガス体に変換して貯蔵利用することがPower to Gasと定義されるが、その起点はグリーン水素であり、それゆえこれを作り得る水電解は非常に重要な技術である。水電解にはアルカリ水電解(AEC: Alkaline-type Electrolysis Cell) 、固体高分子型水電解(PEEC: Polymer Electrolyte-type Electrolysis Cell)、固体酸化物型水電解(SOEC: Solid Oxide-type Electrolysis Cell)があるが、SOECは鋭意開発が進められるも、いまだ実用化段階ではないため、再エネからの水電解装置の社会実装はAECとPEECに絞られている。PEECはAECに比べて、電流密度を大きくできるためコンパクトであり、かつ負荷変動範囲が広いという特長を有する。

本稿では、再エネからの水素変換におけるPEECの役割および現状課題、およびPEECスタック開発における機械工学の活用事例を紹介する。

図1 各種電力貯蔵技術の比較(3)

(図中:BEV:電気自動車、CAES:圧縮空気、DLC:電気二重層キャパシタ、FES:フライホイール、NaS:ナトリウムー硫黄電池、LA:鉛電池、Li-ion:リチウムイオン電池、PHS:揚水発電、RFB:レッドクスフロー電池、H2:水素変換、SNG:合成天然ガス(メタン)変換)

PEECの役割

PEECの位置づけ

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