特集 水素・燃料電池の基礎、研究開発、展望~機械工学からのアプローチ~
機械工学が担う燃料電池自動車~システム技術、要素技術、解析技術~
はじめに
カーボンニュートラルに向けて
CO2排出による地球温暖化や化石燃料の枯渇という危機感から、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが拡大している。トヨタ自動車は2050年もしくはそれより前にカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げている。水素は使用時にCO2が発生せず、さまざまな素材から作ることができ、貯蔵・輸送が比較的容易なため、カーボンニュートラル社会実現の柱として重要度が高まっている。
トヨタは、水素をエネルギーとする燃料電池自動車(FCEV)の開発を1992年にスタートし、2014年に第1世代のトヨタフューエルセルシステム(TFCS)を搭載した初代MIRAI(図1)を市販した。6年間で累計11000台を世界のお客様に購入頂くことができた。
2020年に商品化した第2世代TFCSを搭載した新型MIRAI(図2)では航続距離の向上、燃料電池の更なる性能向上、低コスト化に加え、第1世代TFCSの3000台/年という量的な限界を大幅に向上させる生産革新を行った(1)。
また、トヨタではFCEVの普及だけでなくFC製品の普及による水素活用の促進を目指し、FCのシステムサプライヤーとしての取り組みを強化している。長年にわたるFCEV開発で培ってきた技術、「MIRAI」で使用され世界のさまざまな使用環境の中で蓄積してきた知見・ノウハウを活かしてトラック、大型輸送車両、鉄道、バス、タクシー、航空機、船舶、フォークリフトなど多様な用途に活用可能なFCモジュール(FCスタックとFCシステム部品をワンパッケージ)の開発にも取り組んでいる。
本稿では第2世代MIRAIのFCシステム開発の取り組みについて紹介する。
図1 初代MIRAI(第1世代TFCS)
図2 新型MIRAI(第2世代TFCS)
表紙
機構模型
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
回転斜板
年代未詳/フォイト社製/ベルリン(独)/真鍮、鉄、ガラス、木製台座/
H220, W320, D145(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
ハンドルに「GUSTAV VOIGT BERLIN. S. W.」の刻字あり。工科大学もしくは工学部の備品番号「工キ學ニ四九八」の木札付。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きのものを含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機構模型が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]