特集 水素・燃料電池の基礎、研究開発、展望~機械工学からのアプローチ~
形と性能~SOFCの微細観察から構造最適化~
はじめに
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell, SOFC)は、家庭用など比較的小規模の発電システムとしてすでに商品化され、さらにその適用範囲を広げるべく研究・開発が進められている。SOFCの研究はながく電解質や電極の材料開発を中心に展開されてきた。材料開発は今後も重要であり続けるが、いっぽうで機械的強度(材料)、熱管理(熱)、流量配分(流体)、負荷変動や起動停止時の動特性(制御)といった機械工学的な見地からの装置の理解は、安全かつ効率的なシステムの設計や運用に欠かせない。本稿では、SOFCの基本構造と特性を解説したうえで、ここ10年余りで大きな進展のあった電極構造観察とそれを利用した研究の展開について概説する。特に輸送現象と反応を介した電極の構造と性能の関係に注目する。また発電性能向上へむけた構造制御に関する研究事例を紹介する。なお、SOFCの一般的な特徴をまとめた解説記事が本誌2008年10月号(1)に掲載されているので、そちらも参照されたい。
表紙
機構模型
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
回転斜板
年代未詳/フォイト社製/ベルリン(独)/真鍮、鉄、ガラス、木製台座/
H220, W320, D145(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
ハンドルに「GUSTAV VOIGT BERLIN. S. W.」の刻字あり。工科大学もしくは工学部の備品番号「工キ學ニ四九八」の木札付。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きのものを含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機構模型が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]