特集 水素・燃料電池の基礎、研究開発、展望~機械工学からのアプローチ~
固体高分子形燃料電池における物質輸送、熱輸送、相変化
はじめに
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、水素の化学エネルギーを直接電気に変換でき、高効率で水しか排出しない運転が可能である。このことから、将来のエネルギー変換機器として期待されており、すでに自動車における動力源、分散型コジェネレーションシステムなどの用途で実用化が始まっている。しかし、さらなる普及拡大のためには、よりいっそうの高性能化、低コスト化が必要である。
PEFCの空気極の断面を模式的に示したものが図1である。空気極の触媒層で酸素の還元反応(O2+4H++4e–→2H2O)が起こり、水と熱が生成される。これにより生じる濃度と温度分布のイメージも図1右に示している。この反応による不可逆損失が、水素極側の水素酸化反応の損失よりも大きく、白金系触媒が多く必要となることが高コストの一因となっている。したがって、空気極における物質・熱輸送を適切に管理し、高出力化を実現することが極めて重要となる。この問題解決のために、機械工学の貢献が必要不可欠である。
図1 固体高分子形燃料電池の空気極におけるマルチスケール物質・熱輸送と濃度・温度分布のイメージ
表紙
機構模型
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
回転斜板
年代未詳/フォイト社製/ベルリン(独)/真鍮、鉄、ガラス、木製台座/
H220, W320, D145(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
ハンドルに「GUSTAV VOIGT BERLIN. S. W.」の刻字あり。工科大学もしくは工学部の備品番号「工キ學ニ四九八」の木札付。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きのものを含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機構模型が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]