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2021/10 Vol.124

表紙

機構模型

工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)

回転斜板

年代未詳/フォイト社製/ベルリン(独)/真鍮、鉄、ガラス、木製台座/

H220, W320, D145(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵

ハンドルに「GUSTAV VOIGT BERLIN. S. W.」の刻字あり。工科大学もしくは工学部の備品番号「工キ學ニ四九八」の木札付。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きのものを含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機構模型が現存する。

上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵

[東京大学総合研究博物館]

バックナンバー

特集 水素・燃料電池の基礎、研究開発、展望~機械工学からのアプローチ~

燃料電池の基礎

伊藤 衡平(九州大学)

はじめに

機械工学を後ろ盾に

本稿では機械工学のバックグランドを踏まえながら・燃料電池の基礎を概説する。燃料電池を含む水素システムはエネルギーシステムである以上関わる学理工学技術は広範囲でありここでは網羅できない。したがって水素システムの基軸となる燃料電池の構造原理効率などに絞って解説する。

燃料電池の基礎

燃料電池の効率がボトルネック

代表的な水素システムは水電解水素製造貯蔵・輸送燃料電池発電から主に構成される。水素システムの最上流である再生可能エネルギー起源電力をWRE水電解効率をηWE貯蔵(や輸送)に要する動力WC燃料電池発電効率ηFCとすると燃料電池の発電出力WE

WE=(WREηWEWCFC        (1)

となる。したがって総合効率と位置付けられる往復効率ηRTは、

ηRTWE/WRE=(ηWEWC/WREFC    (2)

となる。それぞれの技術レベルが高くとも効率動力比はηWE0.9WC/WRE0.1、ηFC0.5の程度で往復効率ηRTは0.4となる。燃料電池効率ηFC が水素システムの往復効率ηRTのボトルネックであることが分かる。このことが燃料電池を最初の題材にする理由である。

燃料電池発電効率の上限すなわち最大効率は熱力学のギブス自由エネルギーブレイクダウンして電圧などに帰着される。実際の効率は最大効率よりも低くその原因は不可逆損失にある。さらに燃料電池を含む電気化学分野では不可逆損失を電圧換算しこれを過電圧と命名して損失を解析する。効率をサラリと話題にしたが効率をよく理解するためにも構造原理そして燃料電池の種類をまず示す。次いで最大効率実際の効率をエンジンとの対比を意識しながら概説する。

燃料電池の外観と動作原理

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