特集 画像で見る機械工学
特集にあたって
企画のねらい
2020年からのコロナ禍によって世界中の教育現場でオンライン授業を強いられ、学生が実際に実験や実習を行う機会が奪われ、動画や画像を通した疑似体験への試行錯誤がなされている。産業界でも人同士の接触や人流の抑制が求められ、テレワークやオンライン会議という言葉が当たり前になった。このようにICT技術に支えられて画像をやり取りすることが社会全体で一気に活発化したが、アフターコロナの社会でもその重要性が変わることはないだろう。そこで、本特集は、熱工学部門の出版委員会が中心となり、動画や画像を使った教育研究資料の質と量がさらに発展するきっかけの提供を目的とし、現在WEB上で公開されている機械工学分野を中心とした工学や産業界での動画や画像とともに、学校教育や企業における人材育成現場での動画活用事例について紹介する。さらに、著作権の利用に関する記事や、動画・画像をはじめとした信頼に足る情報が得られるWEBサイトを紹介している。
特集の内容
本特集は、大きく分けて三種類のテーマで構成されている。
第一は、工学および産業界における動画活用事例の紹介である。このテーマでは、まず本会熱工学部門出版委員会が運営している「熱工学ギャラリー」を紹介する。これは、WEB上で熱工学分野の教育研究動画を公開したものである。次いで産業界における動画・画像活用技術として、女川原子力発電所で取り組まれているバーチャル見学に関する技術を紹介したのち、近年著しい発展を遂げている手術シミュレータに関する研究事例を二件紹介する。
第二のテーマは教育現場における動画活用事例の紹介である。まず本会流体工学部門が運営している「楽しい流れの実験教室」の取り組みを紹介する。これは、主に高校生を対象に流れの魅力や物理を伝えるWEBコンテンツである。次に大学教育のための動画教材開発事例を二件、企業における動画活用の教育事例として発電プラントの運転シミュレータに関する技術を紹介する。
最後のテーマは信頼のある情報の提供と利用の方法についてである。近年のWEB技術の発達により、動画や画像をはじめとした情報にアクセスできる環境が整い、手軽に動画などを入手・公開できるようにもなった。そこで、動画や画像などの著作物の二次利用とその取り扱い方法に関する記事を紹介する。また、入手が困難あるいは不可能な論文や図書などの研究教育資料の電子的なアーカイブツールの利用が可能となった。反面、必ずしも信頼に足る情報ばかりではなく、利用には注意が必要である。信頼に足るアーカイブは極めて貴重であり、このようなWEBサイトの利用は広い意味での画像利用とみなせる。そこで本特集の最後に、機械工学分野における代表的なアーカイブサイト「Watt & Edison」の紹介記事を掲載して締めくくることにした。
最後に本特集の掲載にあたり、多くの執筆者、編集担当者のご協力を頂いたことをここに記して謝意を表する。
第99期 熱工学部門 出版委員会
<幹事/正員>
仮屋 圭史
◎佐賀大学 工学系研究科 准教授
◎専門:熱工学、冷凍・空調
<委員/正員>
井上 修平
◎広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授
◎専門:マイクロナノ熱工学
<委員/正員>
藏田 耕作
◎九州大学 大学院工学研究院機械工学部門 准教授
◎専門:生体工学、熱工学
<委員長/正員>
濱本 芳徳
◎九州大学 大学院工学研究院機械工学部門 准教授
◎専門:伝熱工学、熱エネルギー変換、吸着、熱駆動ヒートポンプ
キーワード:画像で見る機械工学
機構模型
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
ハートカム
明治7(1874)年/真鍮、鉄、木製台座/H400, W300, D303(mm)/
東京大学総合研究博物館所蔵
「HEART CAM」の刻記あり。工部大学校を示す「IMPERIAL COLLEGE OF ENGINEERING. TOKEI. 1874」の金属プレート付。工科大学もしくは工学部の備品番号の木札があるが判読不能。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]