特集 2021年度年次大会
グローバル社会の分岐点に機械工学は何をすべきか?
日本機械学会2021年度年次大会(千葉)大会委員長挨拶
グローバル社会がますます加速される中、新型コロナウイルスの蔓延に代表されますように2020年と2021年上半期は激動の時代となりました。2016年ニッセイ基礎研シンポジウムにおけるJesper Koll氏の講演で用いられた象徴的な図では、パソコンの前で進化し続けた人類がこの分岐点で、自分はロボットに進化するべきかどうかを悩んでいるのかと見受けられます。現在の私たちは、この分岐点にいるパソコンの前で進化し続けた人類のように、次の進化の方向性を決める重要な時を迎えているのではないでしょうか?「グローバル・クライシス」という言葉が用いられるようになり、感染症の蔓延、価格競争の激化、失業率の増加、産業の空洞化、技術や人材の流出、貧富の格差、他国経済状況による影響などなど、グローバル社会の負の側面に我々人類は直面しているといっても過言ではないかと思います。しかしながら、このようなグローバル社会の分岐点にいるからこそ、あらためて真剣に「機械工学は何をすべきか?」をご議論いただく場を千葉の地に催し、国内のみならず世界に向けて、「グローバル・クライシス」に打ち勝つ最新研究成果を発信できればと思っております。
このようなキャッチフレーズ「グローバル社会の分岐点に機械工学は何をすべきか?」のもと、三つの大会テーマを掲げさせていただきました。機械と情報は切っても切り離せない仲であることはご承知の通りでございますが、5G社会に突入し、次世代通信6G社会も見据えている今、「5G IoT における機械」は、鍵となる本大会テーマです。また、これからの機械は社会との融和・調和が重要なキーであると痛感し、「外見的な違い(人種や性別、年齢など)や内面的な違い(宗教、価値観、性格など)を認め合う社会における機械ってなんだろう?」を念頭に、とても斬新なテーマである「ダイバーシティ&インクルージョン」を二つ目の大会テーマにいたしました(図1)。さらに、千葉県は、工業、商業、農業、水産業、観光業といったあらゆる産業が凝縮された土地柄だと言われており、産業の枠を超えた新しいチャレンジのモデルケースとして、よく利用される地域です。「新しいチャレンジのモデルケース」として機械に何かを加えることで次のシーズを生み出すきっかけにできたらとの思いから、「新産業革命」というテーマを三つ目に設けました。別の言い方をすれば、機械に新しい何かを足したり引いたり掛けたり割ったりすると次の主役になる機械が生まれるのではという発想です(図2)。
以上のキャッチフレーズと大会テーマのもと、日本機械学会2021年度年次大会は、2021年9月5日(日)から8日(水)まで、千葉大学の西千葉キャンパスをベースとして、新型コロナウイルスの蔓延に配慮し、特別講演を除いては、オンラインによる開催となります。現在、日本機械学会関東支部千葉ブロック、千葉県、千葉市、地元企業の全面的な協力を得て開催準備を進めております。大会委員、実行委員をはじめとする関係者の総力を結集し、「コロナに負けない」「withコロナ」「afterコロナ」の印象を残す大会としたく思っております。是非とも2021年度年次大会への皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。
図1 個々の「違い」を認め合う社会における機械ってなんだろう?
図2 機械に何かを足したり掛けたりすると生まれる第4次産業革命の次の主役になる機械は?
2021年度年次大会 大会委員長
<フェロー>
武居 昌宏
◎千葉大学 副学長(研究・産学連携担当)・教授
◎専門:混相流の可視化計測とその力学
キーワード:2021年度年次大会
機構模型
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
材料試験機
年代未詳/エリオット・ブラザーズ社製/ロンドン(英)/真鍮、鉄、木製台座/
H537, W354, D282(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
本体に「PORTER'S PATENT / ELLIOTT Bros. LONDON」の刻字あり。本資料の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きの機構模型を含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機器が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]