特集 機械学習×熱・流体工学の最先端
機械学習の燃焼流への応用
はじめに
燃焼流は、反応物質の拡散と混合、化学反応による急激な発熱、乱流運動による対流が相互に作用し合う複雑な強非線形非平衡系であり、多様な時空ダイナミクスの創発と自己組織化が生じる。そのため、複雑系科学は燃焼流の時空ダイナミクスの基礎的解明において重要となる。近年、複雑な非線形散逸現象を取り扱うための新しい複雑系科学の基礎理論と数理解析法がさまざまな研究分野で展開されている。離散数学のグラフ理論をもとに、脳神経細胞、電力網や通信ネットワークの相互作用の解明に関連したスモールワールド性、スケールフリー性、媒介中心性をキーワードとしたネットワーク科学の学理体系化が進展している(1)。他方、情報通信だけでなく、生物振動子や化学振動子などの集団同期現象が注目され、位相縮約に基づいた集団同期モデルと複雑ネットワークを融合させたネットワーク科学の研究領域も構築されつつある(2)。
このような背景のもと、筆者の研究グループでは、力学系理論、記号力学、同期理論、情報理論とネットワーク科学から立脚した先進的な複雑系科学の視点から、燃焼流(3)~(15)の非線形ダイナミクスの一端を明らかにしている。
本稿では、機械学習を取り入れた二つの研究内容を取り上げる。一つ目は燃焼振動の予兆検知と回避(14)を試みたものである。もう一つは浮力によって誘起された乱流拡散火炎の非線形ダイナミクスの基礎的解明(7)に関するものである。
燃焼振動の予兆検知と回避
キーワード:機械学習×熱・流体工学の最先端
機構模型
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
角度定規
年代未詳/金属/W652, Dia.137(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
製図道具は近代化の進められた機械学教育に用いられた。本資料の年代や製作場所は未詳であるが、他に「工学寮」「工部省工作所」等の刻記から国内で製作されたことがわかる製図道具類が東京大学総合研究博物館に現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]