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2021/6 Vol.124

工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)

四リンク

年代未詳/フォイト社製/ベルリン(独)/真鍮、鉄、木製台座/H270, W300, D90(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵

ハンドルに「GUSTAV VOIGT BERLIN. S. W.」の刻字あり。工科大学もしくは工学部の備品番号「工キ學ニ四八九」の木札付。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きのものを含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機構模型が現存する。

上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵

[東京大学総合研究博物館]

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特集 デジタルツインでかわるものづくりのこれから

ものづくりを取り巻く環境とデジタルツイン活用の議論

新井 覚〔日本精工(株)〕

はじめに

少子高齢化への対策、持続可能・循環型社会の実現など待ったなしの構造転換の必要性が世に叫ばれて久しい。加えて昨今は、新型コロナウイルスの蔓延が世の中のあり方をいとも簡単に覆したことを背景として、DXの浸透やリスク管理などに見られる価値観の転換も進みつつある。

上述の外的要因がものづくりの分野にも否応なく本質的な変革を迫っていることは、誰もが理解するところであろう。成長を前提とした社会が終焉を迎えつつある時代に『これからのものづくりはいかにあるべきか』を考えるとき、デジタルツインの存在は極めて大きな意味を持つ。

この度、本誌で『デジタルツインでかわるものづくりのこれから』を特集するにあたって、ものづくりにおけるデジタルツインの位置付けと関連する議論がどのような方向で進んでいるかについて、『ものづくりを科学する』ことを存在意義の根幹に据えた生産加工・工作機械部門の活動に関連付けながら紹介する。

ものづくりにおけるデジタルツイン

生産加工・工作機械部門では、ものづくりに携わるエンジニア・大学関係者・学生諸氏に最新技術や基礎知識、トレンドを学んで頂くため、年間4回の講習会を開催している。

一連の講習会は部門内の第三企画委員会で構想・運営され、携わる企画委員メンバーは産学横断的に10名に及ぶ(企業メンバーは、オークマ、三菱重工工作機械、日立製作所、三菱電機、IHI、デンソー、日本精工より参画している)。近年ではメンバーが定期的に(コロナ禍の今はオンラインで)集まり、それぞれの事業や専門とする分野の垣根を越えてものづくりの課題や方向性に対する議論をアクティブに繰り広げながら、タイムリーかつ有益な講習内容を提供すべく活動を続けている。

図1は、この3年間の講習会企画において議論されてきたものづくりに影響を与える因子の相関性を俯瞰的にまとめたものである。このうち特に『新たな方向性』のなかでも『自動化・無人化』を実践事例から学ぶ講習会を開催した際には、講演者各位や企画委員メンバーによるディスカッションから、『自動化・無人化を実現するためには、人間と機械の役割を明確に分離する必要があること』、『経営者やマネジメント層が自動化をやり切る企業文化を醸成するなかで、暗黙知をいかに形式知化すべきかが明らかになること』、『IoT化と暗黙知の形式知化が進めば、それらを前提とした新たな形態のロボットが出現する可能性があること』などの示唆に富んだ方向性が見えてきた。

図1 講習会の企画で議論されたものづくりに影響を与える因子の相関図

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