特集 3.11から10年、「安全」を取り巻く環境、意識はどう変わったか
新興技術の“レスポンシブルな”社会実装のために
はじめに
新型コロナウイルス感染症への対応においても、情報技術を中心に、さまざまなテクノロジーの導入が提案されている。他方で、プライバシーや個人情報保護の問題に加えて、利用できない人への配慮も問題になる。特に、情報技術は他の新興技術に比べて社会実装までの期間が短くなりがちである。情報技術を含む新興技術を「レスポンシブルな」形で社会実装するためのプロセスは、平時に確立しておかないと、パンデミックなどの非常時にいきなり運用することはできない。災害分野でよく言われるように「平時にできないことは、非常時にもできない」のである。本稿は、新興技術の社会実装を「レスポンシブルな」形するために平時に確立しておくべき社会の仕組みについて整理したものである。
技術を社会実装する場合の障壁は何か
これまでどんなことが起こってきたかを振り返る
新興(エマージング)は、新規であること(new)とその利用が急速に増えつつあること(increasing)の両方を意味しており、新興技術(エマージングテクノロジー)とはそのような特徴を持つ技術のことを指している。自動運転、ゲノム編集、量子コンピュータなどが思い浮かびやすいが、あらゆる技術は、かつて一度は新興技術であったのである。例えば「伝える」技術はかつて、伝書鳩や飛脚が「新興技術」であった。それらが、郵便制度になり、電報、FAXが生まれ、そしてインターネットが登場すると、メール、LINE、Zoomなどに進化をとげている。同様のことは、「移動する」「食べる」「売買する」などさまざまな分野にも当てはまる。
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
ラチェット
年代未詳/真鍮、鉄、木製台座/H315, W245, D150 (mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
工科大学もしくは工学部の備品番号「工キ學ニ二一四」の木札付。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きのものを含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機構模型が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]