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2021/4 Vol.124

工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)

ラチェット

年代未詳/真鍮、鉄、木製台座/H315, W245, D150 (mm)/東京大学総合研究博物館所蔵

工科大学もしくは工学部の備品番号「工キ學ニ二一四」の木札付。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きのものを含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機構模型が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]

バックナンバー

特集 3.11から10年、「安全」を取り巻く環境、意識はどう変わったか

福島第一原発の状況と今後の展開、さらには大量廃炉時代を迎えて

山名 元(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)

教訓としての福島第一原発事故と事故後対応

日本は今後、国内外の情勢が大きく変化する中で「2050年カーボンニュートラル」を目指していくことになる。この中では、エネルギー産業や製造業の形態が変わっていくと見られるが、これらを支える工学システムにも、経済合理性や短期的視点での安全性は当然として、長期的な持続性や環境整合性がますます求められる。この際、大型の工学システムには「Begin with the End in Mind」の原則が、従来以上に求められるのではないか。これは、Stephen Coveyが提唱した原則の一つで「終わりを思い描くことから始める」という基本姿勢を意味するが(1)、1950年代から発展した工学システムや社会インフラなどには、この意識が弱いまま導入が進んだものが少なからず存在し、これらの一部が、環境影響や産業廃棄物などの産業レガシーとして存在している。

原子力発電は本来、自律性や最終状態(放射性廃棄物の最終処分)を強く意識して進められたシステムであるが、社会との合意を含む最終状態の確定が遅れて進んだことや、福島第一原発事故が生み出した結果に対する不安などから、原子力利用は、厳しい社会的不信を得る事態に至っている。

2050年カーボンニュートラルに向けて一定規模の原子力利用があり得ると仮定するなら、①過去50年の原子力利用が作り出した負荷状態(放射性廃棄物、使用を終えた施設、不適切管理状態にある残置物など:原子力レガシー)に対する処置を完遂すること、②今後の原子力システムには徹底した自律性と終状態(終わり方:Endstate)を明確に示せること、の二つがその基本的要件になるであろう。今後の原子力にこそ、「Begin with the End」の原則が求められるのである。この視点に立つと、福島第一原発事故を、原子力が持つべき持続性やEndstateを考え直す上でのスタートポイントとして捉えることが重要である。福島第一原発事故と事故後対応での経験には、多くの教訓や示唆が含まれているからである。

この事故に至った背景や問題については、数多くの事故検証(政府事故調、国会事故調、東電事故報告書など)によって詳細に分析・報告されており、ここであえて論評することはしないが、事故後に行われてきた「事故結果に対する取り組み(廃炉等)」の現状やこの過程で見られた事実や問題などを紹介し、原子力レガシーへの取り組みの実態や課題についての理解を高めて頂き、原子力システムや他の工学システムの在り方を考える参考にして頂きたいというのが、本稿の目的である。

福島第一原発のリスク状況

現在の福島第一原発におけるハザード(リスク源)の状況

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