特集 MaaSにより目指す社会とそれを支える次世代モビリティ技術< 電子情報通信学会 合同企画 >
自動走行バスの社会実装に向けた取り組み
はじめに
適応クルーズコントロール(ACC)、レーンキープアシスト(LKA)に代表される乗用車の自動運転技術は着実に進化している。運転支援という位置づけであるが、SAE(Society of Automotive Engineers) が定める運転の自動化レベル2(自動車の縦制御と横制御をシステムが行う) (1)が高速道路上では実現している。さらに、2019年の道路交通法および道路運送車両法の改正を経て、2020年度には、渋滞時という条件が付くが、レベル3に相当する自動運転が高速道路上で実現する。一方、一般道においては、交差点、交通信号機、歩行者、自転車などの様々な車両等の存在があり、高速道路よりも自動運転の実現が遅れていると言える。レベル3の次の段階のレベル4の自動運転においては、運行設計領域といわれる定められた条件の下で運行している間は、システムからドライバに自動から手動運転への遷移の要請を行わないため、ドライバ不在の運転が可能になる。路線バスのように、限られた範囲のみを比較的低速で走行する条件で実現するのが現実的とも考えられている。各地で、ドライバ不足および収益性の問題から、公共交通の維持が困難になっている。ドライバ不在での運行が可能になれば、より利便性のある公共交通サービスが実現でき、交通弱者問題が解決することが期待できる。その実現には社会的意義もあり、省庁主導でレベル4自動走行バスの実証実験が各地で行われている(2)。その活動を紹介することを目的に、本稿は、著者が2020年の年次大会特別企画で発表した内容(3)に加筆する形で、東京大学において実施している実証実験を中心に、自動走行バスの社会実装に向けた取り組みを紹介する。
自動運転バス
東京大学では、(株)先進モビリティおよびボードリー(株)と連携して、自動運転バスの実証実験を行ってきた。その際に利用していたバスの1つを図1に示す。同じ路線を走行することを前提としているため、自車位置の同定は、RTK-GNSS(リアルタイム動的汎地球測位航法衛星システム)を利用して行う。また、受信状態が悪い時を想定して、道路に敷設した電子タグ付きの磁気マーカー(永久磁石)の磁界とタグの情報を読み取り、自己位置同定を行う、磁気ポジショニングシステムも使うことができる。障害物検知用に、前方には、遠点および近点ライダ(光検出と測距)とミリ波レーダ、側方にもライダを設置している。それに加えて、カメラによる物体認識も行っている。
工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)
機構模型:てこクランク往復運動
年代未詳/真鍮、鉄、木製台座/H270, W365, D180(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
工科大学もしくは工学部の備品番号「工キ學ニ二一七」の木札付。台座裏面に「百四拾九」と墨書あり。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きのものを含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機構模型が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]