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2021/2 Vol.124

工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)

機構模型:差動歯車

年代未詳/真鍮、鉄、ガラス、木製台座/H310, W245, D235(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵

工科大学もしくは工学部の備品番号「工キ學ニ一八五」の木札付。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きのものを含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機構模型が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]

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特集 日本のモノづくり再興Part2-日本機械学会の役割-

〈社内風土〉THKの“6×6プロジェクト”自由に好きなものを開発する!

西出 哲弘〔THK(株)〕

ものづくりが面白いと思える環境づくり

創造開発型企業の新たな人材開発の仕組み

6×6プロジェクト(通称:ろくろく)は、日頃、開発納期に追われてしまい、技術者が新しいアイディアを持っているのに手を付けられないというジレンマを払拭するための活動の一つである。プロジェクト名の名前は当初、1チーム6名で6チームあったので、6×6プロジェクトと呼んでいたことに由来する。現在は少し増え、参加人数45名、9チームある。活動は1週間のうち2時間のみ、期間は1~2年と短めに設定しており、アイディア出しから試作までを行う。過去7年間でこの活動により生み出されたアイテムは約100個に上る。

図1は6×6プロジェクトの構成を示す。メンバーは当社技術本部の5部門から入社10年未満の若手エンジニアを集め、部門関係なくメンバーをシャッフルしてチームを構成している。これによって通常業務では関わらないメンバー同士の交流が生まれ、それぞれの得意分野、スキルを理解できるため、普段の仕事でもその関係が活かせるようになった。また、各チーム2名ずつ、サポート役に中堅社員をつけて試作方法や技術的な知見について相談しやすいようにしている。これにより、この活動を通して中堅社員のコミュニケーション能力とマネジメント能力を向上させる効果が期待できる。さらにベテラン社員が事務局を担当し、プロジェクトの取り纏めや予算取り、購入品の承認、コンペ形式の報告会、表彰商品の取り決めなどを行うことで、メンバーのモチベーション向上と開発コストを意識した運営、すなわちマーケティングの勉強にもなる。まさに若手技術者が活躍し、中堅、ベテラン社員のスキルアップを図ることができる場と言える。

図1 6×6プロジェクトの構成

パイオニアでトップランナーであるために

主力製品に新しいアイディアを取入れる

当社は直動運動案内であるLiner Motion Guide(LMガイド)のパイオニアであり世界シェアNo.1を維持している。これは常に新たな直動システムを開発し続けてきた努力の賜物であると自負している。しかしながら、新しいアイディアは、寸法規格に適合した上で、既存製品を凌駕しなければならない。また、設計を大きく変更すると、素材、製造条件、工程、設備の見直しが必要になってしまう。

そこで6×6プロジェクトでは、固定概念を取り払い、制約条件なしの自由な形状でアイディアを具現化することを認可した。すると、今までの常識を覆す製品のアイディアや新たな発見が生まれることとなった。ここで活躍するのが自社で所有する3Dプリンタ(図2)である。これさえあれば、「3D-CADで図面は書けるけれど、本当に思った通りに動くのかな?」といった不安もただちに解消される。メンバーたちは次々とアイディアを出しては試し、それがとてつもなく楽しくなってくる。若手エンジニアはそこで得られた経験と実績によって自信を持ち、本業の開発でもモチベーションが上がり、積極的に意見を出すようになる。実際、このプロジェクトから出たアイディアを取り入れた開発事例や、特許を取得したものもある。

このような活動によって我々の直動システムを常に進化させ、次世代を担う製品を市場に提供し続けることができると私は信じている。

図2 3Dプリンタで製作したLMガイド

こんなものがあったら良いな―作っちゃえ!

開発者の醍醐味「好きこそ物の上手なれ」

昨シーズンのプロジェクト開始にあたり、アイテムを抽出する前にメンバーから開発業務に限らず、趣味や興味のあること、困りごとなど、さまざまな意見をヒヤリングした。

・ ドライブ、野球、ゴルフ、サイクリング、ロボット製作、家庭菜園、時計のコレクションなど趣味は十人十色。

・ 小さい子供がいて、最近は便利なベビー用品を見たり、買ったりしている。

・ 豪雪で実家のカーポートが潰れてしまった。

・ 資料提出の際、上司に怒られないかヒヤヒヤしている。

そして、このような趣味に繋がるもの、悩みを解消するもの、それぞれをテーマにしてみようということになった。結果、アイテムとして抽出されたものは以下の通りである。

・ エアロパーツ稼働装置

・コンパクト屋内練習用スイングバット(図3)

・ 変幻自在パッティング練習可変マット(図4)

・垂直踏み込み自転車ペダル(図5)

・ レーザ光による非接触給電

・ 自律農作業ロボット

・直動機構の機械式時計(図6)

・段差を軽々と乗越えられるベビーカー

・鹿威し式雪下ろし装置

・ 画像認識から上司の機嫌を数値化するソフト

どうだろうか?ネーミングだけでワクワクするようなアイテムが続々と出てきた。詳細は差し控えるが、これらアイテムのすべてに、当社の直動システムとしての部品が搭載されている。

このように興味のあることや身近な課題などは、自分たちが“やりたいこと”に直結し、開発者魂に火が付くのだと感じる。

将来の研究開発業務のありかた

「今までそうだったから」が通用しない時代

コロナ禍でリモートワークが増え、働き方が大きく変化した2020年。私たちエンジニアも業務のあり方を変化させる必要がある。今までのモノづくりは現場、現物、現実の三現主義が当たり前だったが、これからは通信環境、IoT、AI、5Gの発達とともに、バーチャルで得られる情報が増え、これらを有効利用することで、もっと合理的に、もっと早く、もっと柔軟に、皆がワクワクするような新製品を創出させる“開発の新しい仕組み”を今後も構築していく。

図3 コンパクト屋内練習用スイングバット

図4 変幻自在パッティング練習可変マット

図5 垂直踏み込み自転車ペダル

図6 直動機構の機械式時計


西出 哲弘

◎THK(株)技術開発統括部 技術開発第二部 部長

◎専門:機械工学、機械装置、自動車部品の設計開発

 

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