やさしい熱力学
第11回 エクセルギー
1. はじめに
本稿では,熱として物質から取り出されるエネルギーの価値を判断するための優れた指標であるエクセルギーについて知り,基本的な計算方法を理解する。
2. エクセルギーの考え方
熱機関は熱を仕事に変換する装置であるため,熱機関の性能を考えるとき,投入する熱量あたりの仕事が大きい,すなわち熱効率が高いものが望ましい。これまでに学んだように熱機関の熱効率は可逆サイクルが最も高いため,熱機関を設計する際にはできるだけ可逆サイクルに近づくように構造や運転条件を決めなければならない。また,熱機関の熱効率は,構造や運転条件だけでなく熱源の温度にも強く依存する。カルノーサイクルの熱効率からもわかるように,2つの熱源の間で動く熱機関(サイクル)の熱効率は2つの熱源の温度の差が大きいほど高くなる。車のエンジンで考えると,高温熱源から得る熱にあたるのは燃料の燃焼熱であり,低温熱源にあたるものは周囲の空気であるので,燃料の燃焼温度は高いほどよく,周囲温度は低いほどよいということになる。このことから,高い燃焼温度を得ることができる燃料ほど価値が高いことは自然に理解していただけると思う。
キーワード:やさしい熱力学
表紙の説明:これは、1962年にドイツのギルデマイスター社で製造されたチャック作業用6軸自動旋盤のチャック部分(左)と刃物台部分(右)である。円周上に配置され、連続割り出しする6個のチャックに工作物を取付け、刃物台がまるで6台の機械のように軸方向に動いて加工を行い、1周すると1個の部品が出来上がる。
[日本工業大学工業技術博物館]